タイガーマスク(3)

 

チン(顎の先端)に蹴りを入れられた俺は一瞬にして全身から力が抜けて、

次第に意識が薄れ始めた。

こんな相手に秒殺されてしまうのかと思った矢先だった。

俺の意識を再び現実に引き戻したのは俺の股間に響く激痛だった。

イエローデビルは失神しかけた俺の両足を掴むとリング下に降りて行き、

無抵抗の俺の足をコーナーポストに跨がせ一気に引っ張りやがった。

「んーーーーーーーー」と1発目では俺は目覚めず、次の2発目を決めた

時に俺は「あがあぁぁぁ・・・・・・・・・」と俺は人とは思えないような

絶叫を挙げ、完全に覚醒させられた。

 

 俺は震える手で奴のマスクを掴むと「お返しだー。これでも食らえー」と言い

素早く奴のマスクを180度回転させて、逆にリングの方向へ奴の顔面を

引き寄せた。

奴はマスク越しに「ぶふうぅぅぅぅぅぅぅぅ」と唸り、マスクの額の部分に出血

の染みが出来てきた。

俺は怯まず「まだまだー」と叫び2発、3発と続けざまに攻撃を続けた。

奴は堪らず掴んでいた俺の両足を放し、自分の顔を押さえてリング下に蹲った。

俺はリング下の奴に近付き「あの虎の穴で鍛えられたんだ。このぐらいで

おネンネしないよなぁー?」と言いながら場外の薄いマットの上で奴に

パイルドライバーをし掛けた。

奴は「ぐっ・・・・」と短く声を挙げた。

客席からは「タイガーいいゾー。もう一発食らわせロー」と野次まで飛んでくる。

俺も試合早々このイエローデビルには3発も股間攻めをされたので、何時もの

冷静さを無くしていた。

俺も「さぁー、続けていくゾー」と叫びパイルドライバーを続けざまに

2発落とした。

奴は失神でもしたのか呻きもしない。

そして、ぐったりとした、イエローデビルを担いで、リングの中に放り入れた。

 

 ロープ越しにマットに叩きつけられたイエローデビルは、まだ覚醒出来て

無い様で、受身すらとらず頭からマットに突き刺さり「コ」の字の様に

固まって動かない。

俺はさっきの様に簡単には奴に近づく事はせず、

「イエローデビル、俺が目を覚まさせてやるぜー」と言いながら

奴の腰の辺りにローキックを続けざまに2発決めた・・・・・

奴の体位は崩れてそのままマットに横たわった。

レフリーが居たのならば別にフォールしなくても10カウントを入れて

試合は方がつく。

しかし、肝心のレフリーは試合開始早々にコイツの暴行を受け、

いまだにリングの下で気絶していた。

俺は、警戒しながらイエローデビルに近づき再び、奴のマスクを180度回し

正常な位置に直した。

 

イエローデビルは白目を向き、血泡を吹き完全に失神しているかに見えた。

俺はイエローデビルにビンタをして、「何時まで寝てる気だ。起きろ−」と

言いながら奴を強引にマットから引き起こした。

 

 マットから引き起こされても、イエローデビルの目は虚ろで

視点が合ってない様だし、奴の口からは「うぅぅぅ・・・・」と

小さな呻き声が漏れるだけだ。

俺はイエローデビルの頭部をヘッドロックしてコイツをぶつける

コーナーポストら向かって走りだし後1、2歩でコーナーに辿り着くと思った時だ。

俺の股間に不快感が走った。

俺は「うっ、わあぁテェメ−。どこを触りやがるー。てっ、手を離せ−」と叫んだ。

それは、それまで「だらり」と下がっていたイエローデビルの右手が

俺の股間を激しく鷲掴みにし、「いい加減にしろよ−。タイガーここからが

俺の本当の反撃ダー」とイエローデビルは叫びながら俺にバックドロップを決めてきた。

俺は股間を鷲掴みにされたまま、頭からマットにめり込んみ

「ぐふうぅぅぅぅ・・・・・・・・・・・・・・・・」と呻き声を挙げた。

 

今度は、俺自身が「コ」の字になり大股を開いてマットに固まっていた。

奴は「さぁータイガー。さっき言った返礼の倍返しだぜ−」と言いながら大股に

開いたままの俺の股間に立て続けにエルボーを3発かましてきた。

「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー」と悲鳴を上げて、上がったままの

両足をマットに着けようとしたが奴は俺の体位をそのままに保ちながら

「タイガーまだまだこんなもんじゃねぇぞー。虎の穴の丸秘反則その1玉噛」

と言いながら俺の虎柄のビキニ越しに俺の睾丸の片方に噛みつきながら頭を

左右に振りながら俺の股間を責める。

「ぎやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー」と

先ほどの悲鳴を上回る絶叫を上げた。

 先ほどまで、タイガーマスクを応援する声は一瞬にして止み、今は会場で

聞こえるのはリングの上で股間を噛みつかれて呻き喘ぐタイガーマスクの

絶叫だけだ。