宇宙刑事ディルバン(2)

 

 敵の卑劣な罠に落ちたディルバン。

 アルスの苛烈な攻撃により失神した彼は、異次元城ダークパレス内に拉致されてし

まった。

 実験台の上に磔にされているディルバンを見下ろすと、アルスは満足気に微笑んだ。

 

「他愛も無いねディルバン、あの程度の攻撃で失神しちゃうなんて。そんなんじゃこ

れからの責めに耐えられるか心配だよ」

 

 怪し気な機械に囲まれた研究室らしき室内には、アルスと磔にされたディルバン以

外に誰もいない。ディルバンへの尋問は、アルスの意志により彼一人で行うことになっ

たのだ。

 

「さぁ、そろそろ目を醒ましてもらおうか」

 

 アルスは実験台の横に、複数あるスイッチの一つを押した。

 ディルバンの四肢を大の字に固定している拘束具から、強力な電流が流される。

 

「ぐあぁ〜〜〜〜!!」

 

 青白い火花が体中を駆け巡り、堪え難い苦痛により覚醒するディルバン。しかし、

四肢をしっかり固定されているために、全身を細かく痙攣させ悲鳴をあげることしか

できない。

 しばらくの間、苦痛にもがくディルバンを鑑賞すると、アルスは電流を止めた。

 

「ハァハァハァ・・・いったい俺をどうする気だ」

 

 全身から白煙を上げ、荒く息をつきながらもアルスを睨み付ける。美しかったメタ

ルブルーのバトルスーツも、四天王とアルスの攻撃によりあちこちが破損し、今は見

る影も無い。

 

「さあ、どうしようかなぁ・・・、君の処分は僕に一任されてるんだよね。つまり生

かすも殺すも僕次第って訳さ」

 

 天使のように美しい顔に、冷笑を浮かべアルスは言う。

 

「そうだなぁ、まずは宇宙警察機構本部の、秘密基地の場所を話してもらおうかな」

 

「貴様等に話すものか!無駄なことは止めて早く殺すんだな」

 

 敵の手中に落ち、満身創痍でありながら、強靱な精神力は未だ健在のディルバンで

あった。

 

「無駄なことだって?ふふふっ、君の方こそ無駄な抵抗は止めた方が身の為だと思う

よ」

 

 言うなり実験台横のスイッチを入れるアルス。再び強力な電流がディルバンの全身

を襲う。

 

「くっ、ぐ、あああぁぁ〜!」

 

 バトルスーツの耐電機能を大幅に上回る電流により、全身を引き裂かんばかりの苦

痛に襲われる。鍛えぬかれた肉体と精神力をもってしても、その激痛に耐えられず、

ふたたび全身を痙攣させ、唯一自由に動かせる首を左右に激しく振り、苦痛の悲鳴を

上げる。

 

「さぁ、早く白状しちゃいなよ、さもないと全身が黒焦げになっちゃうよ」

 

 スイッチを操作し、電流量を徐々に上げながらアルスが言う。

 凄まじい苦痛の嵐に意識が白濁しかけるが、歯をくいしばり、なんとか苦痛と自分

の意識とを切り離そうと試みる。

 

「だ、誰が言うものか・・・早く殺せ〜〜っ!!」

 

「そう、じゃ遠慮無く」

 

 楽しそうに微笑むと、アルスは電流コントロールスイッチを最大にセットする。

 

「ぐぉ!、あ、が、がががががが・・・」

 

 もはや喋ることもできない、意識も徐々に失われ「死」を覚悟したその時、ディル

バンの身体に変化がおこった。全身を包むバトルスーツが青く輝き始めたのだ。

 その変化を見たアルスは、速やかに電流をストップさせる。

 全身を包む光はどんどん強くなり、薄暗かった実験室を真昼のように照らす。そし

て、その光が消えるとディルバンのバトルスーツは、跡形もなく消え去っていた。

 許容量を超えるダメージを受けたため、バトルスーツの「瞬着」が解けてしまった

のだ。

 今、実験台の上には変身前のディルバン、結城タケルが普段着のまま磔にされてい

る。

 一瞬の出来事にあっけにとられていたアルスだったが、すぐに冷静さを取り戻し、

実験台の上の青年を観察する。

 再び失神してしまったディルバン、いや結城タケルはぴっちりとした黒のレザーパ

ンツとロングブーツを履き、上半身は青いブルゾンの下に白いTシャツ、手にはヒー

ロー物お約束の、指の第一関節までを覆う革製のグローブといういでたちだった。

 アルスは全身を嘗めまわすよに観察すると、その視線をタケルの顔に向ける。モデ

ルのように整った顔には、まだ少年のあどけなさが残っていた。

 しばらく美しい寝顔を眺めていたアルスの表情が変わる。天使のような微笑みから、

口元を邪悪に歪めた悪魔の微笑みに・・・・

 タケルの頬に強烈な平手打ちをかますアルス。

 

「う、うぅ・・・」

 

 再び覚醒させられたタケルは、顔をしかめながらも、頭を左右に振り正気を取り戻

す。

 

「たいした精神力じゃないかディルバン」

 

 呼び掛けに気付いたタケルは、変身が解けてしまっていることに、多少動揺しつつ

もアルスを睨みつける。

 

「これで判ったろう、俺達宇宙刑事は苦痛に耐える為の訓練も受けている、拷問など

時間の無駄だ、さっさと俺を殺せ」

 

 凛々しい眉の下の切れ長の目で睨みつけられ、アルスはディルバンがまだ抵抗する

心を失っていないことを確認し、心底喜んでいた。

 

「ふ〜ん、苦痛に耐える訓練ねぇ・・・。あの時は気絶しちゃったくせに、ここを鞭

で打たれてね」

 

 そう言いながら右手をタケルの股間にのばす。大の字に身体を固定されているため、

ぴったりとしたレザーパンツはタケルの股間の膨らみを誇張してしまっている。アル

スはその膨らみに、躊躇することなく右手を乗せた。

 

「な、なんの真似だ!?」

 

 明らかに狼狽するタケル、腰を左右に振りその右手から逃れようと暴れる。

 

「それじゃあ快楽に耐える訓練も受けたのかな?まぁ、試してみれば判ることだけど

ね」

 

 そう言うとアルスは電流とは別のスイッチを入れた・・・・・