宇宙刑事ディルバン(14A)

 

「とんだ邪魔が入ってしまったねぇ。これから大事な生体サンプル採取作業に取り掛

かるつもりだったのにさ。さて、どうしたものか……」

「私が出向いて処理しましょうか?」

 腕を組み考え込む王子にライラが進言すると、アルスは美しい顔を左右に振った。

「いや、できれば穏便にすませたいな。彼女は大切な賓客でもあるからね。とりあえ

ず僕とお前とで出迎えに行くとしよう」

 アルスはベロニカの名前を聞いて明らかに動揺しているシンに向き直るとゆっくり

と歩み寄り、口に取り付けられた猿ぐつわを外す。やっと呼吸の自由を取り戻したシ

ンの口から「ハァハァ」と激しい吐息が漏れる。

 強力な媚薬と快楽地獄によって意識は朦朧とし、まるで頭の中にピンク色の靄がか

かっているように、ただただ射精以外のことは思考する余裕もなかったエリート宇宙

刑事だったが、今の彼の目には明らかに動揺と恐怖を感じ取ることができた。

 かつてのシン、つまりアルスによって本部が占領される前のエルデバンならば宇宙

海賊ベロニカの名前を聞けば、正義感と闘志に燃えた瞳で自ら進んで彼女の前に馳せ

参じたであろう。

 何故ならベロニカは宇宙指名手配犯としては最高ランクのS級犯罪者であり、そし

てシンが過去に対決した犯罪者の中で唯一逃亡をゆるした相手でもあったのだ。

 

 

 

 初めての実務経験となった宇宙海賊殲滅作戦のおり、黒蝎団の本拠地に潜入捜査を

行っていたエルデバンは、海賊団の組織図や秘密基地の場所等の極秘情報を盗み出す

ことに成功した。

 宇宙警察機構によって支部をことごとく破壊された黒蝎団は壊滅寸前まで追い込まれた。

 激怒したベロニカは一矢を報いるべく商業用航路を巡回中の宇宙警察パトロール艇

を強襲するが、実はそれこそが団長ベロニカを捕らえる為に宇宙警察が仕組んだ罠で

あった。本拠地潜入中にシンが仕掛けた盗聴器によってベロニカの行動は事前に読ま

れていたのである。

 海賊船が囮のパトロール艇を攻撃しようとした正にその時、宇宙空間を漂う小惑星

に擬態していた宇宙警察の戦闘艇がベロニカの乗る旗艦に特攻をしかけた。

 旗艦に取り付くことに成功した戦闘艇からエルデバンを含む重武装の宇宙刑事たち

が一気に海賊船内に乗船する。

 完全に不意を突かれ抵抗もままならぬ海賊たちは宇宙刑事によって一方的に倒され

ていった。

 中でもエルデバンの活躍は見事なものであった。新人ながらも卓越した反射神経と

類い稀なる戦闘センスを持つシンは、次々と凶暴な海賊たちを撃破していく。優美な

剣さばきと針の穴を射抜く程の射撃テクニック……白銀のバトルスーツが華麗に舞う

度に銀河最凶と呼ばれた海賊たちの死体の山が築かれていった。

「あ、あれが噂の白銀の鷹か・・・」

 エルデバンの鬼神のごとき強さを目の当たりにし、海賊たちの口から漏れる驚愕の言葉。

 既に数多の活躍で他の宇宙海賊殲滅に貢献してきたエルデバンの武勇は、闇の世界

の住民たちにも広く知れ渡るようになっていたのである。

「あんな奴に勝てる訳がねぇ〜」

 戦意を消失した一人の海賊が武器を捨て降参すると、他の海賊達も命惜しさに次々

と宇宙刑事に投降していった。

「どうやら体勢は決したようだな」

 小隊長の宇宙刑事がエルデバンに声をかける。

「ええ!あとは団長のベロニカだけです。奴さえ捕らえれば黒蝎団は消滅です」

 多少意識は高揚しているものの息一つ切らしていないエルデバンが応える。

「そうだな。だが油断は禁物だぞ!あの女はかなり危険だ。なにしろS級犯罪者だか

らな。今まで返り打ちにあった宇宙刑事が沢山いることを忘れるなよ」

 小隊長の言葉にシンの全身が熱く燃え上がった。いつもクールなシンには珍しく、

怒りで拳がワナワナと震えている。シンはベロニカの手にかかり散っていった同胞た

ちのことを思い出しているのだ。

 

 宇宙航路を我が物顔で徘徊し、略奪と虐殺を繰り返す黒蝎団を殲滅させるのは宇宙

警察機構にとって長年の命題であった。今回の殲滅作戦が行われる以前にも何名かの

宇宙刑事がその任に就いたが、未だかつて成功した者はいなかった……いや、生還し

た者はいなかった、と言った方が正しいだろう。

 幾多の危険をかいくぐって海賊団の本拠地に潜入し、ベロニカとの直接対決に持ち

込むことに成功した宇宙刑事も、彼女の圧倒的な戦闘力の前にことごとく敗れたのだった。

 彼等の最後はどれも想像を絶する程に悲惨なものだった。

 生け捕りにされた宇宙刑事はベロニカの手で徹底的に嬲られ、一滴残らず精を絞り

取られる。だが陵辱はそれでは終わらない。女海賊は正義の戦士の性器を執拗にいた

ぶり更なる射精を強要する。睾丸は空でもう出す物はないのに出さなければならない

苦痛・・・

 カラ射ち責め……男にとってこれ程辛く苦しい責めはないであろう。快楽を伴うの

はせいぜい最初の五発くらいまで。十発もカラ射ちを強要されれば、どんなに屈強な

男でも泣叫ばずにはいられない。それは苦痛に耐える訓練を受けてきた宇宙刑事たち

にとっても同じであった。

 鍛え抜かれた身体を痙攣させ、ただ絶叫することしかできない宇宙刑事。

 このカラ射ち地獄は尿道口から真っ赤な血が吹き出すまで続けられた。

 そして、激痛とともに股間から鮮血を吹いた宇宙刑事にはいよいよトドメがさされ

るのだが、これはベロニカのその日の気分によって様々な形で行われた。

 力任せに睾丸を握り潰される者、股間に強力な酸をかけられる者、麻酔なしで性器

を解剖される者・・・

 どの宇宙刑事も口から泡を吹き、泣叫びながら絶命していった。

 そして凶悪な女海賊は宇宙刑事を捕らえる度に、彼等を性的に陵辱する様と残酷な

処刑の一部始終を撮影し、全銀河に向けて放送したのだった。

『黒蝎団に手を出すとこうなるぞ!』という意味をこめた、それは宇宙警察機構に対

する警告だった。

 

 銀河中に映像を送るカメラの前で陵辱され、男として最も辛いであろう苦痛を与え

られて死んでいった同胞の無念を思うと、シンの心に激しい怒りと熱い闘志がみなぎっ

てくる。

「あの女だけは絶対に許さねぇ!必ず俺の手で仕留めてやる!」

 シンはベロニカがいるメインブリッジに向かって一気に駆け出した・・・