洗脳(2)

 

「くぁおぉぁぁああぁああぉぉぉぉあああぁあぁぁぁっ!!」

スパイダーマンの絶叫が部屋中に響き渡った。

赤と青のコスチュームにつつまれた肉体を、白く光る稲妻が襲ったのだ。

鉄十字団のアジトを急襲したスパイダーマンは、

人々を洗脳し犯罪に走らせるマシンベムとの闘いで脚に電線を巻き付けられ、

黒光りするケーブルからの猛烈な電撃で体中の筋肉を硬直させていた。

 

ジジッ ジ・ジリジリッ ジ・ジジッ ジジジ・・・

強烈な痛みを伴う感覚を超えた電流が全身を包み込み、

体中の神経を外部から刺し貫いた。

両脚に巻き付いた電線から数万ボルトの電撃を受けたスパイダーマンは、

逞しい四肢を大の字に広げて硬直し、

隆起する全身の筋肉は制御を失ってビクビクと痙攣していた。

クモのマークが描かれた赤いコスチュームの下では

大きく盛り上がる二つの大胸筋がブルブルと揺れ、

ボコボコに溝を作る腹直筋、その両脇の腹斜筋や前鋸筋までもが張りつめた。

 

ジリジリッ ジジジ・ジジッ ジ・ジジ・・

(おぁあぁ・ぁ・うあ・あぅっあああ・あぁあぁっ・・・)

脚に絡み付いた電線から直撃された高圧電流で、あらゆる筋肉が硬直して制御を失い、

立ったまま痺れる四肢を大の字に広げるしかないスパイダーマン。

マシンベムが放った電撃が、稲光を走らせながらヒーローの四肢へ広がると、

蜘蛛の巣の柄が浮かんだ赤と青のコスチュームの下で、

鍛えられ盛り上がった筋肉が、ヒクヒクと無意味に収縮と拡張を繰り返すのだった。

 

(く・・ あぁ・・ぁ・・・)

ドサッ

電撃が止んだとたんに硬直していた筋肉が一気に弛緩し、

力を失った肉体は音を立てて無様に床に倒れた。

「電流攻撃はどうだ? スパイダーマン」

マシンベム洗脳獣が、ケーブルをたぐるように

力無く横たわるスパイダーマンににじり寄ってくる。

電撃が止んだ後もビクビクと小刻みに震える筋肉は、

神経系に加えられた過負荷の電気信号により未だに制御がままならず、

指先すら動かすことは出来なかった。

床に倒れたスパイダーマンは、立ち上がろうとするものの、

高圧電流で麻痺した肉体は言うことを聞かなかった。

(だ、ダメだ・・ かっ 体が・・痺れ・て・・動かな・い・・・)

なんとか四肢を動かそうとするが肉体の制御を取り戻すことは出来ず、

両手を着いて体を起こそうという試みも空しく再び倒れ伏し、

ただワナワナと身体を震わせることしかできなかった。

 

床に倒れたスパイダーマンの真横にまで迫ったマシンベムは、

腹部から何本ものケーブルを伸ばし、ヒーローの肉体に絡めていく。

シュルシュルと音を立てながら、一本、また一本と黒光りする銀色の電線が、

極限まで鍛え抜かれたヒーローの身体に巻き付くのだった。

(くっそぉ・・ はやく、立ち上がらなくては・・・)

床に倒れたスパイダーマンには為す術もなく、

両脚だけでなく、両手、両腕、腰、胸にまでケーブルが絡められてしまった。

「今度はもっと強い電撃だ! キェェァァェアアッ!!」

ジジジッ・ジジジジジッ

マシンベムの放った電流が再度ヒーローを襲った。

「ぅああぁぁっ あぁおおおぁぁぁあああぁあ!!」

体中に絡みついた電線からの電気ショックが青白く発光し、

強烈な苦痛となってスパイダーマンを覆い尽くした。

再び食らった電撃に全身の筋肉が硬直して限界まで隆起し、

悲鳴を上げながら、ケーブルが絡まったまま逞しい身体を仰け反らせるスパイダーマン。

マシンベムの頭と背中、両肩に付き出した何本もの電極が

ジリジリと音を上げて青白い稲妻の様な電流がスパークを繰り返した後、

攻撃が停止した。

 

「はぁっ はあ はあ・・・」

全身が痺れ身動きが取れないスパイダーマンは、

電撃が止んだものの、仰向けに横たわったまま荒く息をつくしかなかった。

(今のうちに・・なんとか・しなくては・・・)

 

マシンベムは新たな攻撃準備のために充電をしているのだった。

「ワッハッハッハ どうだ、苦しいか、スパイダーマン。

 痺れて動けまい?

 今度はお前の身体の中心を攻撃してやる。

 とどめだ!」

無防備に横たわるスパイダーマンの膨らんだ股間へと片手を伸ばすマシンベム。

そして鋭い鋲の付いた5本の太い指を開くと、

光沢のある青いコスチュームが包む竿と陰嚢を鷲掴みにした。

「うわあぁあぁぁっ」

マシンベムの指から突き出た尖った鋲が、

ヒーローの股間の膨らみに突き刺さるように食い込んだ。

凶器の様な手が、青い股間の膨らみを圧迫しながら揉みしだく。

 

「うぐぅっ」

そして、マシンベムのもう一方の手がスパイダーマンの顔面に押しつけられた。

マシンベム洗脳獣は、ヒーローの手足という身体の末端だけではなく、

体幹部から直に高圧電流で攻撃しようというのだ。

股間と顔を押さえつけられたまま、手も足も出ないスパイダーマン。

(くっ・・ このまま、あの電撃を全身に食らったら・・・

 俺は・・やられ・て・しまう・・)

股間と顔面からの苦痛に喘ぎながら体を動かそうと奮闘するが、

未だに痺れる四肢の自由は利かず、

マシンベムに急所を握られたスパイダーマンには抵抗の術はなかった。

 

(くそっ ダメだ・・)

全身が麻痺し、顔と股間を押さえ込まれ手も足も出ないスパイダーマン。

「キシィエエェアァァァァ!!」

充電を終え、マシンベムの電極の間にジリジリと稲妻を走らせ、

電流攻撃でトドメを刺そうと叫び声を上げたその時だった。

「待て!」

アマゾネスの声が響いた。

 

「洗脳獣、スパイダーマンを殺すな。

 殺さずに洗脳するのだ!」

敵の女幹部から発せられた言葉に驚愕するスパイダーマン。

(なっ なんだと!)

鉄十字団の計画をことごとく妨害してきた宿敵スパイダーマンを

追い詰めているというチャンスを、アマゾネスは逃さなかった。

 

女幹部の命令により、マシンベムは新たな行動を開始した。

「アマゾネス様の命令ならば仕方ない。

 命拾いしたな、スパイダーマン」

マシンベム洗脳獣の頭部から、

数本の電極と金具で構成されたヘルメット状のパーツが外れ、

ゆっくりと空中を浮かびながらスパイダーマンの頭部めがけて移動していく。

「お前を洗脳してやる!」

 

洗脳用のヘッドセットが迫り来るのを見上げるしかなかった。

(あ・あれが嵌められたら・・・

 俺は、洗脳される訳にはいかない!!)

自由を取り戻そうと、全身の筋肉に渾身の力を込めるスパイダーマン。

逞しく太い腕では、上腕二頭筋・三頭筋がクッキリと盛り上がり、

腹部では6個に割れた腹直筋が隆起しながら深い溝を刻んた。

だが、電気ショックの影響で未だに痺れる肉体は力を取り戻すことは出来ず、

四肢を拘束するケーブルの下で、筋肉は無意味に隆起しながら震えるだけだった。

 

必死に頭を揺り動かしてもがくスパイダーマンだったが、抵抗も空しく、

赤いマスクに包まれた頭部に黒く光る金属製のヘッドパーツが取り付けられてしまった。

(あぁっ し、しまった・・・)

金具からは、何本もの電極とそれに繋がるケーブルが伸びている。

スパイダーマンの鮮やかな赤と青の逞しい肉体は、

今や体中に黒いケーブルが何重にも絡み付き完全に拘束され、

頭部には鋲と電極が剥き出しの鈍い銀色をしたヘッドギアを嵌められていた。

(くそっ このままでは洗脳されてしまうっ!!)

焦燥感にかられ、必死で抵抗しようとするスパイダーマンだったが、

四肢の自由を奪われ、未だに痺れる体を僅かに揺らす事しかできなかった。