セイバーレンジャー

第2話【レッド 死す!?】


セイジは,ヘルデンエナジーの強制放出を何度したのか,もはやわからなくなっていた。
8回? いや15回を越えたような気もする。

セイジの精神力は,その肉体と同様,鋼のように鍛え抜かれている。
あらゆる苦痛・苦難に耐えられる身体と意志を備えているのだ。
だからこそメーア帝国との戦いで何度窮地に立っても,勝ち抜いてこれたのである。
強力なメーア怪人たちとの激闘,罠にはまって受けた拷問や虐待,何度きりぬけたことか。
どんな絶望的な状況にも耐え抜くだけの力をセイジはもっているはずだった。
しかし!・・・

和弥博士に化けていたのは,メーア三大天使の一人・帝国最高の頭脳を誇るミカエルであっ
た。ミカエルは,本物の和弥博士が作ったヘルデンエナジー抽出装置を,おもちゃで遊ぶ
子どものように嬉々として操作し,セイジに様々なパターンの刺激パルスを送り込んでい
た。

 両乳首を貫く針のようなパルスによってヘルデンエナジーを放出させたあと,休む間を与
えることなく,下腹部をうねりながら揉みしだくパルスと,脇腹を数ミリ間隔のピンポイン
トで刺激するパルスが,零コンマ数秒の微妙なズレを伴ってセイジの身体に送り込まれた。
意外な刺激に思わず身体をねじらせるセイジ。しかし手足は金属の拘束具で台にがっちり固
定されている。わずかしか身体は動かない。

「く・・・・ぐ・・・・ぐぐっ・・・・ぐわっ・・・・・あうっ・・・・・」

固く結んだ唇から息がもれる。
拘束具の先の指がもがく。
それぞれのパルスは通常の人間ならば,あっという間に射精してしまうほど強烈なものだっ
たが,セイジはそれに耐えうる肉体を造りあげていた。
が,2つのパルスの微細なズレが生み出す波長のねじれが,少しずつセイジの性感神経組織
に揺さぶりをかけていく。
鍛え上げられた鋼鉄の筋肉も,内部から押し寄せてくる官能には 立ち向かうすべがなかっ
た。
セイジはじわじわと責めあげられていった。

「くっ・・・・あああっ・・・・・ぬをっ・・・・・おおおお・・・・」

わずかに動かせる範囲の中で,セイジの裸体がのたうちまわる。
そして,身体の奥底から沸き上がってくる衝動に耐えられなくなった時,ついに大量のヘル
デンエナジーが放出されてしまった。
たちまち抜けていくセイジのパワー。強烈な脱力感がセイジを襲う。

それでもセイジは,今のパルス攻撃に対する防御体勢を,自分の肉体と精神に瞬間的にセッ
トした。積み重ねた訓練による本能的行動だ。
しかし,次のパルス攻撃はまたしても思いがけない方向から来た。今度ねらわれたのは
肛門だった。肛門近辺にはなんのコードも装着されていないのに,ミカエルの悪魔のような
手さばきが,セイジの肛門を侵す凶暴な「指」のイリュージョンを作り出した。

「うがあっ!!」不覚にも大声をあげてしまう。首を激しく振る。唾液が飛び散る。
「ぐっ!・・・あうっ!・・・ああっ!・・・・んあああああああっ!」

「どうだい,レッドセイバー。いくら耐えようとしても無駄だよ。
 僕は同じパターンの刺激は2度とつくらないもの。
 君の忍耐力はすばらしい数値だったよ。とても無能な地上人とは思えない。
 でもそれは『一度受けた攻撃・苦痛に対して』なんだよね。
 すべて未知の刺激だったら?
 これだけのファクターがあれば,僕は100万通りのエナジー放出刺激パルスを作り出
 せる。そしてその中からもっとも君に向いた刺激を厳選してプレゼントしてあげられるん
 だよ。
 君が僕を博士だと信じてた最初の放出作業の間に,君の身体の神経系はすっかり調べつく
 したからね。
 僕の刺激は,くくっ,百発百中だ。
 ここまで,パルス注入からエナジー放出までの時間はすべて予測値どおりだったよ。
 すごいだろ?
 今度の刺激は少し長いよ。ふふ。23分18秒,悶えてもらう。
 最後の3分が特別にすごいんだ。
 期待してね」

ミカエルは赤く薄い唇に笑みを浮かべてつまみを操作していく。
そのたびにセイジは身をよじらせ,絶叫し,息をつまらせ,そしてエネルギーを放出して果
てていった。

手足を広げ,大の字に固定されている競パン姿のセイジ。
その身体からは滝のように汗が流れ出し,無駄のない見事な筋肉がその汗にまみれて,天井
のライトに照らし出されていた。豊かな黒髪もぐっしょりと濡れて乱れていた。
基盤からのびるチューブ類はいつの間にか数を増し,今や20本以上の様々な形態をした管
やコードが,あるものはシェイプアップされた脇腹に,あるものは深いカットが走る腹筋
に,またあるものはたくましい肩に食いこんで,怪しく光りつつ刺激パルスを送り込んでい
た。
そしてまたいま,黒いコードが基盤から頭をもたげて,よく発達した太ももにぷすっと差し
込まれた。何十回めかの激痛が走った。

セイジは遠ざかる意識を必死で呼び戻しながら,苦痛と快感に耐えていた。しかし,それも
もはや限界だった。仲間の顔が浮かぶ。
グリーン・・・・ イエロー・・・・ ブラック・・・・
そして,セイバーレンジャーにセレクトされる前からの親友でありライバルであった ブ
ルー・・・シュンスケ・・・・どれほど頑張ってもあいつの泳ぎには追いつけなかった・・
ふっ,勝てないまま,別れるのか・・・・

パルスが変わったのだろうか,窮地に陥った時の記憶がよみがえってきた。
苦しい戦いの連続だった。死を覚悟したことも1度や2度ではなかった。
怪人ホンダワラーとの戦いでは1度は敗れ,メーア皇帝のもとに拉致されたこともあった。
しかしヘルデンの神秘のパワーは,メーアの,いやセイジの想像をも越えるもので,
何度もセイバーレンジャーたちは救われたのだった。
だが,セイジは今度こそ敗北を悟っていた。エナジー放出のたびに戦意が失せていく。
もはや,なすすべがなかった・・・・

ふいに 目の前に海が広がった。大海原。誰もいない海。遙か彼方からうち寄せる波。
これまで見たこともない美しい海・・・・オレのふるさと・・・・
ここに帰るんだな・・・・
うっすらとあいたセイジの目には,研究室の天井のライトではなく 遥かかなたの海が見え
ていた。

ミカエルは専用の特殊な小型計算機を片手で操作していた。
「ふむ・・・・理論値では もはやレッドセイバーのヘルデンエナジーは尽きている・・・
 あの瞳孔の開き具合といい,大胸筋・腹筋の微細な痙攣といい,それを示している。
 だけど・・・
 くくくっ ここで手をゆるめたのが今までの失敗の原因さ。
 尽きたように見えても,ヘルデンの最後のパワーがレッドの肉体の最深部に隠されている
 んだよね。それをこれから絞り取るからね」
ミカエルの白い指が流れるようにいくつかのつまみに触れた。

セイジの目がかっと開いた。しかしその目は焦点があっていない。ただ見開かれた目。
あたまががくがくとふるえる。
股間がぴくぴく動きだし,ぐっしょり濡れた特殊競パンの中央部が今までになく膨張し始め
た。
ももがぐっとしまり太い筋肉が浮き出る。
息がどんどん荒くなり,分厚い胸は激しく上下に動いて少しでも多くの酸素を求める。

「お・・・お・・・お・・・お・・・あッ あッ あッ あッ あ,あ,あ,あ,あ」

もはや音がもれるだけの口。そのわきからはよだれが流れだす。
176センチ70キロの均整のとれたセイジの肉体のすべてが痙攣し始めた。
痙攣は次第に激烈になり,拘束具もちぎれるかと思われるほどになった。
やがてセイジの背がそり返りだし,競パンに覆われた幅広い腰が天井に向けて徐々に突き上
げられていく。
身体から抜け落ちるチューブが何本もある。そしてそり返りが頂点に達した時・・・

「うぐッ!」

低いうめき声が研究室内に響いた。
セイジの身体は一気に硬直が解け,台に崩れ落ちた。

「がはっ」

特殊競パンの隙間から意外なほど大量の液体がだらだらと流れ出していった。
見開いたまま輝きを失ったセイジの目からも,一筋流れるものがあった。
腕や足はしばらくこまかく震えていたが やがてそれも止まった・・・・

「やれやれ。意外とあっけないものだ。ま,予定通りですかね。
 では,最後にレッド・・・いや,もう ただのセイジ君か。
 セイジ君自身の生命の火を吹き消しましょう」
ミカエルの指が つまみにのびた・・・・

轟音!! 振動!! そして土煙!
一瞬 ミカエルは何がおこったのか理解できなかった。
正面の壁が崩れ,そこに立つ長身の男の姿が。

「ブルーセイバー!!
 なぜここに!
 そうか・・・ラファエルめ 失敗したのですね。だぁから全ての指揮を私が・・・・
 それにしても よく 5分でこの部屋までたどり着けましたね。
 ? ああなるほど セイバーメットを装着せずに戦っていたわけですか。
 それなら 倍の10分は身体が持ちますからね。」

185センチはあるブルーセイバーのスリムな身体は,いつものようにセイバースーツに覆
われていたが,セイバーメットはなく,切れ長の強い目が印象的なシュンスケの浅黒い顔が
そこにあった。

「きさま! セイジに何をした!」

日頃クールなシュンスケからは想像できない激しい言葉が響いた。

「ふん 見ての通りですよ。あなたには別のやりかたを用意しておきますからね。
 きょうはこれにて失礼しますが・・・」

ミカエルは左手を腰の瞬間移動装置に持っていき

「これだけは最後に やっておきませんとね」
右手で,操作盤のスイッチをぐいっと押した。

セイジの身体が3度激しくがくんがくんと動き・・・・止まった。
姿を消すミカエル。

「セイジ!!」

駆け寄るブルーセイバー。すッと蒸着がタイムオーバーで解け,
ブルーセイバーは紺地にライトブルーと白のラインが入った競パン1枚の姿にもどった。
拘束具を引きちぎり,セイジの身体に食い込んでいるチューブを引き抜いて,シュンスケは
セイジを激しく抱いた。

「セイジ! 目をさませよ! 何か言ってくれよ!」

 セイジには何の反応も見られない・・・・・
                                    <つづく>