特撮小説「リュー・ナイト」(第二部・第2話)

 

ミサの傷は、重症だった。弟のジャッカルは、ミサの変わりに地球攻撃の臨時隊長に就任した

。まだ子供だという意見もあり、ジャッカルは、どうしても三人の戦士に復習をしなくては部

下たちへの示しがつかなかった。しかし、ジャッカルの能力は、ミサとは比べ物にはならなか

った。それは、彼の作戦の内容にも現れていた。

「今回の敗因は、ミサ姉の油断もあったけど、なにより、あのプロテクターだよ。つまり、あ

れをあいつらに装着させなければいいんだ、わかるかな、博士さん。」

ジャッカルは、部下の研究者に尋ねた。研究者は、黙っている

「君は、彼ら三人の体の凹凸に合わせた、ロボットを作るんだ。彼らの体の凹凸は、僕が調べる。

 そして、どこからか瞬間移動してくるプロテクターをそのロボットに装着させちゃうんだ。

 強力な磁力が必要だよ。できる?」

正直、この研究者は、こんな子供にこんな発想ができるのかと、驚いた後、その頼もしさに威

勢よく言った。

「必ずや、完成させまする。」

「よろしくねー。」

ジャッカルは子供のように言って、立ち去ってしまった。

ジャッカルの作戦は、攻撃隊を送り、三人をおびき寄せ、立体構成カメラにより、彼らの体を

立体的に捉えようというものだった。あとは、彼らのデータをもとにしたロボットにプロテク

ターを略奪させてしまうというものだった。

ジャッカルの思惑通り、ガード・レンジャーの身体データは簡単に採取された。

ロボットが完成するのに、いくらも時間はかからなかった。ジャッカル対ガード・レンジャー

の対決が始まろうとしていた。

「ジャッカル様、我々の三体のロボットの名前は、どのようにいたしましょう。」

「ガード・ハンターでいいよ。」

ジャッカルは、簡単に名前を付けて、手下に次の準備を急がせた。ジャッカルは、ガード・レ

ンジャーを苦しめるのにミサ以上の筋書きを用意していた。

「じゃあ、ガード・レンジャー反撃作戦始動―――!!」

その日、新宿は、再び侵略軍らよって空爆されていた。その日の攻撃は、小規模であったが、

今までと違うのは、ミサの指令ではなく、ジャッカルが陣頭指揮を執っていたことだった。

早速、ガード・レンジャーは、発進し、現場へと到着した。

井ノ原は、今日の攻撃の小規模さに、ミサがいなくなって、たいした攻撃もできなくなったんだろうと、

三宅と智之に話していた。

しかし、敏感な智之は、なんかしっくりこなかった。とにかく、ミサの変わりに指揮をと

っている、あの少年は誰なのか。彼ら三人はまだ知らなかった。

いつもの通り、井ノ原が敵に叫んだ。

「てめぇら!まだ懲りねぇのかよ。俺らが、来たからには、もう勝手はさせねぇからな!」

ジャッカルは、井ノ原のセリフを楽しそうに聞きながら、手下に彼らを攻撃させた。戦闘機か

ら砲火が彼らに浴びせられた。それは、意外にも前回のものより協力となっていて、三人は避

けるのに必死になった。

「よし、装着だ。装着!ガード・プロテクター!!!」

井ノ原は、いまやリーダー的な存在だった。彼の叫びで、三人にプロテクターが閃光のなか、

装着されようとしていた。

ここで、ジャッカルが叫んだ。

「いまだ!ガード・ハンター始動―――!」

ジャッカルの叫びの方が、井ノ原よりもしっかりと皆の耳に聞こえた。

すると、閃光のなかで、装着を待つガード・レンジャーの視界に三体の影が出現した。驚く三

人の前に来た、その三体の影は、途中まで装着されかけていた、プロテクターを引き寄せ、逆

に装着してしまった。

「なんだー、こいつらーっ!」

井ノ原が叫んだ。

ガード・レンジャーは、装着行為を妨げられ、バトルスーツが、誤作動を起こし、爆発し、そ

の場に倒れてしまった。三人は、あまりの衝撃に意識を失っていた。

「さあて、だれから血祭りにあげようかな。よし、まずはあの赤いのからだ。」

ジャッカルの命令で、プロテクターを装着した、ロボットは、井ノ原に向かって、突進した。

「ガ・ー・ド・マ・ッ・ハ・パ・ン・チ・」

ロボットは、ぎこちない発音でそう言った。

この技は、智之のプロテクター装着時の必殺技で、どんなに硬いものでも貫く、パンチで、智

之は、自分のプロテクターに記憶させておいたのだった。

時速500kmものスピードで、意識の無い井ノ原に向かうロボット。

と、智之が三人の中で、唯一はじめに意識を回復し、井ノ原に向かう、ロボットが自分の必殺

技であることに気がついた。考える暇も無く、智之は、井ノ原にむかってジャンプした。井ノ

原も殺気に気が付き、意識をとりもどした。しかし、あまりの恐怖にただ、その場に座り込ん

でいた。

「やめろーっ!俺の技で、仲間を殺すんじゃねぇーーーー!」

と、智之は、井ノ原の前に立ち塞がった。

「ガヴッッッッッッッーーーーーーーーードゥア゛―――――!!!!」

時速500kmのその刺客のパンチは、智之の腹にしっかりときまった。

智之は、ふっとび、都庁の展望台のところに叩き付けられ、落下し、地面に叩き付けられた。

「と、智之―!」

井ノ原と、意識を取り戻した三宅が、智之のほうに走った。

智之のマスクは、衝撃で飛び散り、顔が露出し、口からは吐血していた。バトルスーツがある

ものの、その衝撃は、ほとんど直接、智之に及んでいた。智之を井ノ原は、抱きかかえ、言った。

「あんな無茶するなよー。お前が死んだらどうすんだよ。」

「ゴホッ・・・オ・オマエをオ・レの技で・・殺したくなかった・・・・グツ・・。」

智之の言葉に、井ノ原は、涙を浮かべた。しかし、そんな涙をけなすように、ジャッカルが智

之に言った。

「自分の技で死ぬなんて、かっこわりー。まあ、簡単には、死なないんだろうけど。」

この言葉には、井ノ原も三宅も怒りをあらわにして、ジャッカルに叫んだ。

「てめぇっ、ぜってぇゆるさねぇぞ。」

怒りすぎて、それ以上の言葉が出ない。ただ、あの餓鬼をぶん殴りたい、という気持ちだった。

井ノ原が、怒りの眼差しでジャッカルを睨んでいると、なにかが、ジャッカルに向かって飛

でいった。

それは、三宅だった。