特撮小説「リュー・ナイト」(第二部・第1話)

 

そこには、全身があざだらけの勇士が、集中治療室に置かれていた。ほとんど、助かる見込み

はないだろうと、医師団は言った。

地球防衛隊隊長、武田強は、そんな戦士をガラス越しに見ていた。そして、隣にいる三人の若

者に声をかけた。

「竜には、本当に悪いことをした。あいつは、よく一人で戦い抜いた。しかし、こんな結果に

なろうとは・・・。」

若い三人の男は、拳を握り締め、涙を浮かべていた。そして、そのなかの一人がつぶやいた。

「竜の分まで、俺はやりたい。ぜってぇ、地球を守りてぇ。」

そう言ったのは、井ノ原快彦だった。

そう、武田隊長は、竜の後、三人の若者に戦士として地球防衛隊から送り出そうとしていた。

しかし、当然はじめは、三人とも拒否した。しかし、この竜の姿を見て、まず井ノ原が戦う決

意を固めたのだった。

そして、残りの二人も同じだった。

「隊長」「隊長」

残りの二人が同時に言った。三宅健と智之だった。

智之が、三宅と目を合わせて、うなずき、言った。

「俺たちも戦いたい。」

武田隊長は、内心嬉しかったが、彼らが第二の竜になりうることも考えると心底から喜ぶこと

はできなかった。しかし、事は急を要する。竜のいない今、侵略軍はミサを先頭に、攻勢を強

めていた。

「よし、君たちには、すぐにでも戦ってもおう。ただし、我々の開発したスーツの情報は竜の

状態を見てわかるように、既に敵の手の内だ。無理をしないで戦ってくれ。君たちが時間をか

せいでいる間に我々は、新しいスーツを開発する。いいな。」

そういうと、武田は、三人に変身ブレスレッドを渡した。井ノ原は竜と全く同じレッド、三宅

はブルー、智之はネイビー。

「君たちの名称は、地球防衛隊ガード・レンジャーだ。変身したらわかると思うが、君たちの

スーツは竜のものと素材は同じだが、身体との密着、運動性がアップしている。これは、ラ

イフ・ガードの競泳パンツを参考にしている。さぁ、変身して、地球のために戦ってくれ。」

三人は、ポーズをとった。

「いくぜ!ガード・レンジャーっ!!」

閃光のあと、そこには、三人の雄姿があった。

全身にしっかりと密着したスーツ、おそらく、引っ張ることもできないくらいにる密着している。

加えて、美しい光沢、レッド、ブルー、ネイビー、その光沢は、鍛えられた肉体の筋肉の

隆起に沿って、逞しさを表現していた。

井ノ原がペニスのあたりの隆起を恥ずかしがっている。

「もっこりがはっきり、わかっちゃうなぁ。」

三宅に話し掛けた。

確かに、井ノ原のレッドという色は、人を興奮させる力をもっている。井ノ原は、自分の隆起

を見て、恥ずかしくなるのもわかる。

三宅は、そんなふざけた井ノ原を無視して、武田に敵の現在位置を尋ねた。

「いま、敵はどこにいるんですか。」

「敵は、新宿を攻撃しようとしている。ビルを破壊すれば、我々は動揺する。急行して、敵を

壊滅してくれ。」

智之は、気合いを入れ、三宅と井ノ原に言った。

「いこうぜ。」

三宅と井ノ原に言った。井ノ原も、もうふざけてはいなかった。目の前の破壊行為と竜の姿に

三人のヒーローとしての自覚が、芽生え始めていた。

ここに、新たな三人のドラマが始まろうとしていた。

新宿のビル街は、ミサの手下の戦闘員による破壊工作によって、所々で火災と爆発が起こって

いた。それに加えて、ミサ自ら、小型戦闘機に搭乗し、爆撃を加えていた。自衛隊の反撃は、

無効で、全滅の憂き目にあっていた。ガード・レンジャーは、ミサの攻撃を抑えるべく出動した。

しかし、彼らのバトル・スーツの分析はミサの手により終了しているため、その彼らの出

撃は自殺行為と言うものも多かった。

武田隊長は、地球防衛隊の秘密兵器として、ガード・レンジャーの変身時に装着するプロテク

ターを開発、彼らの出撃の際に、合図とともに装着させることを告げた。このプロテクターなら、

分析はされておらず、かつ数々の兵器がついているため、ガード・レンジャーの強い味方

になることは間違えなかった。

「いよいよだせ、新宿が燃えてる。ちきしょー、都庁まだのぼってねぇーのに。」

井ノ原の明るい言葉が、彼らの緊張を和らげていた。そんな井ノ原に、まじめな三宅が言った

「井ノ原、俺らがまもるんだぜ、ぜってぇー。」

智之は、彼らの言葉を聞いているだけで何も言わない。

「どうした、智之―。緊張するなって、俺がいざとなったら、お前をまもってやるからさー。」

井ノ原の陽気さは、緊張気味の智之には、嬉しかった。智之は、サッカーが得意で、チームで

も信頼されている。その俊敏な動きと、脚力の強さを買われて、今回のガード・レンジャーに

抜擢されたのだ。

彼ら三人は、新宿の上空に飛んでいた。バトル・スーツには、飛ぶ機能もあった。

彼ら、レッド、ブルー、ネイビーのヒーローは、すぐに目立った。ミサの目にも入らないわけがなかった

「なんだ、あいつらは!竜は死んだはずなのに・・・。」

一瞬の動揺の後、ミサは全てを理解したのか、彼らに攻撃のターゲットを変えた。

「全戦闘機、あの三人のものどもを攻撃せよ。」

ミサの一声に全機の砲火が、三人に集中した。

ドッ・カーーーーン!!!!!!!バーーーーン!!!

猛烈な砲火の後、煙硝の中から、三人は無傷で反撃を開始した。

一機、また一機と墜落してゆく。三人は、それがミサの戦闘機とわかると、フォーメーション

を組んで、ミサの戦闘機を攻撃した。ミサは逃げたが、ついに、墜落した。

ミサは、すぐに脱出し、地面に着地した。ミサの前に、三人の戦士が立ち、向かい合った。

「よくやってくれたわね。竜の後釜?竜と同じようになりたいみたいね。」

そういうと、ミサは、竜のバトル・スーツを切り裂いたナイフを井ノ原に投げた。

ズサッッッ!

井ノ原の腕に切り傷ができ、血が流れた。

「つっ!いってぇ。このやろう、・・・。」

井ノ原は怒りの目でミサをにらんだ。

「なんだ、竜のと同じスーツなんだ、じゃあ、死んでもらおうかな。」

ミサは、愉快にかつ余裕の顔で、三人に迫った。

そのとき、冷静な智之は、武田隊長へ合図を送った。

「装着!ガード・プロテクターーーーーー!!!!」

一瞬の閃光に包まれた後、彼ら三人の体を、白いプロテクターが包んだ。

ミサは、少しひよったが、すぐに三人に向かった。

そして、ミサが井ノ原に切りかかった瞬間、脇から、三宅がプロテクターからライブ・ガンを

取り出し、ミサの腹部に射撃した。

「ぐをーーーーーっっっ!」

ミサの体からは、大量の緑の体液が飛び散った。ミサのナイフは、井ノ原のプロテクターを貫

くことはできず、ミサは、その場に倒れた。

「竜の恨みだ、俺らは、てめぇなんかに負けねぇー。」

井ノ原が言った。

ミサは、何事か三人に言いながら、睨んだ。そして、三人の前から消えてしまった。

「ワープされたな。」

三宅が言った。三宅は、ミサたちの戦闘能力に明るかった。

ミサの退却に、全軍が撤退した。地球防衛隊の久しぶりの勝利に、地球は盛り上がった。

そして、新しい三人の戦士に、期待と夢を膨らませていた。