薔薇十字団(7)

 

モニターの中のスパイダーマンは2人目のクノイチのアキレアの凄まじいパワーに苦戦し

ていた。

プロレスで使用されているようなリングの上で戦っているが、身体の痺れに最大の武器で

あるスピードを奪われ得意の空中殺法に切れは無く、逆にアキレアのパワーを生かした絞

め技にスタミナを奪われ、ボム系の技にダメージを蓄積されていく。やがてスパイダーマ

ンは反撃もままならないまでに追いつめらていった。

 

「そら、そら!!」

アキレアはスパイダーマンをコーナーに追いつめ、膝蹴りの連打をボディめがけて叩き込

んでいく。

このラテン系のクノイチは、ツンと上を向いたバストもヒップも凄いボリュームで、気の

強そうな派手なつくりの顔もぽってり唇が厚く煽情的である。

男性ならむしゃぶりつきたくなるような女だが、男をいたぶる事を楽しむサディスティッ

クな笑みの浮かんだその表情からは、鬼気迫る恐ろしさを感じさせた。

 

(くぅぅ!何てパワーだ!?)

スパイダーマンは焦る気持ちとはうらはらに身体は言う事を聞かず、どうする事も出来ず

にいた。

ガードの上からでも身体の芯に響く重い膝蹴りの連打に腕が痺れてきて徐々にガードが甘

くなっていく。

「ぐはぁっ!!」

とうとう重い膝蹴りがガードを弾き飛ばし、スパイダーマンの鳩尾を抉った。

「ほらほら、まだだよ!」

恍惚とした笑みを浮かべ楽しそうにアキレアが叫ぶ。

息がつまり硬直するスパイダーマンを、身体が宙に浮いてしまう程のパワーを持った膝蹴

りの連打が襲った。

今までに受けたこともない衝撃に耐えきれず、ついにリングの上に崩れ落ちるスパイダーマン。

彼が立ち上がることができないのを確認すると、アキレアはリングに大の字になる彼を背

にコーナーマットを登り始めた。

 

「そら、トドメだよ!」

メタリックブルーのレオタードを着たアキレアの巨体が宙を舞い、スパイダーマンの後頭

部に強烈なギロチンドロップを叩き込んだ!

「ムグっ!」

叩き付けられた太ももの下でうめき声を一つあげ、ピクリと身体を痙攣させると、スパイ

ダーマンはついに意識を失ってしまった。

と、同時にこれまでの戦いの様子を映していたカメラも機能を停止した。

 

「フン…つまらない相手だったね。。。」

無様にリングに平伏したスパイダーマンを見下ろすアキレアの巨体。。。

身長はスパイダーマンを頭一つ上回り、体重も大きく上回っている。かといって太ってい

るわけではなく、ウエストも太めではあるがしっかりとクビレている。

全てのパーツが大きすぎるのである。身長はゆうに2mを超え、バストもヒップも120cmは

くだらず、ウエストもクビレてはいるが、80cmはあるだろう。

そう、このクノイチは常識では考えられないほどの巨体とパワーの持ち主であったのだ。

アキレアはその超グラマーバディをチューブトップのメタリックブルーのレオタードに窮

屈そうに押し込み、その圧倒的なパワーで、スパイダーマンを翻弄した。

毒に犯されているとはいえ、スパイダーマンを完膚無きままに叩き潰す戦闘力は恐るべき

ものであった。

 

一人目のダリアに続き、二人目のアキレアにも完敗を喫したスパイダーマン。

ダリアには快感責めで一瞬とはいえ心を奪われ、アキレアには1対1の正々堂々たる勝負

で完敗を喫し、どんな強敵や卑劣な罠にも屈しなかった正義の使者としての自信と誇りを

徹底的に破壊されてしまったスパイダーマン。その胸中たるや、失われた意識の今、察す

る事も出来ない。

さらに、この無様な戦いの様子を恋人である佐久間ひとみが見ていたことを知れば、スパ

イダーマンのプライドはどれだけ傷つくのだろうか。。。

 

「おい!こいつをサッサとダチュラの所へ運んじまいな!」

スパイダーマンとの戦いが不完全燃焼だったのか、不機嫌そうに部下のクノイチに命令す

ると、アキレアは一瞥をくれる事も無く、完全にKOされたスパイダーマンに背を向ける

と、さっさとリングを後にしてしまった。

そして、アキレアの部下に担がれて部屋を後にするスパイダーマン。

 

 

かつてない程の強敵に、正義の使者としての誇りと自信を深く傷つけられ、決してトドメ

を刺される事無く、嬲り者にされたスパイダーマン。

だが、彼への責め苦はまだ終わりではない。あと一人、このクノイチ軍団を束ねる最強の

クノイチであるダチュラが待ち構えている。

果たして最強のクノイチはどんな手でスパイダーマンを攻め立てるのか。

さらにはその後に最強の敵であるアマゾネスも控えている。スパイダーマンはこの張り巡

らされた罠から人質を助け出し、無事に脱出できるのであろうか。

スパイダーマン包囲網はいよいよ終盤を迎える。

 

 

 

「じゃあ、このベッドに寝かせてちょうだい」

医療用のような簡素なベッドを指差しながら、スパイダーマンを運んできたアキレアの部

下に指示を出すクノイチマスターのダチュラ。

指示通りスパイダーマンをベッドまで運んだアキレアの部下が部屋を出るのを確認すると、

未だ意識の戻らないスパイダーマンの腹筋を細い指の先で下から上へと撫で上げながら

妖しく微笑む。

「ウフフ、随分とやられたようね。ボロボロじゃない...フフ、いいわ私が癒してあげる...」

ベッドの横に置かれたサイドボードの上から注射器を手にとると、スパイダーマンの右腕

に打ち込んだ。そして新たにたっぷりと液体の入った容器を手にし、中の液体を手に取る

とスパイダーマンのたくましい身体に塗り込んでいく。

ビンの中身は何かのオイルのようでヌルヌルとつやめき、ダチュラの手の動きに合わせて

スパイダースーツを一段色濃く染めていく。

 

意外なことにダチュラの手の動きはマッサージのそれで、ダメージの蓄積したスパイダー

マンの身体を優しく揉み解していく。

腕から始まり、肩、胸、両足と揉み解し、足の裏のツボを優しく揉み始めると、くすぐっ

たいのかスパイダーマンの身体が微かに身をよじった。

それにも構う事なくダチュラは足の裏を揉みつづける。

「う、うぅ〜ん…」

くすぐったさに身をよじりつつ、スパイダーマンの意識が覚醒していく。まだ、ボンヤリ

としているようで、力無く辺りをキョロキョロと見回した。

「ウフフ、やっとお目覚めね」

声を掛けられて、慌てて声の方に視線を向けると、敵であるはずの女が自分の足の裏を優

しくマッサージしている様子が目に飛び込んできた。

「安心して、何もしないわ。じっとしていなさい」

 

身構えるよりも先にダチュラに優しく微笑みかけられ、激しく狼狽するスパイダーマン。

スパイダーマンは、先手を取られた格好となり何もできずにいた。

ダチュラには攻撃をするでもなく、慈愛に満ちた微笑を浮かべながら優しくマッサージを

続けていた。