薔薇十字団(3)

 

 

「どこだ!隠れていないで出て来い!!」

スパイダーマンの声だけが岬に響く、、、。

すると、十字架に取り付けられていたスピーカーからアマゾネスの声が響いてきた。

「ホホホホホ、そんなに私に会いたいのかい、スパイダーマン?ふふ可愛いねぇ。」

 

「ぐっ、ふ、ふざけるな!アマゾネス!!」

怒鳴り返すスパイダーマン。

「でも、残念ながらすぐには会えないのさ。せっかく薔薇十字団のアジトまで招待したん

だ、それなりに御もてなしをしないとねぇ。」

「なにぃ!」

 

「ホホ、そういきり立つんじゃないよ。これから3人のクノイチに貴様の相手をしてもら

うよ。制限時間は30分。30分だけ彼女達に付き合ってもらおうか。」

「相手?どういうことだ!?」

30分間はなにをしてもいいって事だよ。もちろん何もしなくてもいいんだよ?クノイチ

が恐ろしければね、アハハハハ!」

スパイダーマンの体が屈辱に震えた。

 

「バカにするな、アマゾネス!!」

「そのかわり、制限時間内にクノイチを倒す事が出来たら、貴様にプレゼントをやろう」

「プレゼントだと?」

「そうさ、貴様を悩ませているその毒の解毒剤さ。」

「毒!な、なんの事だ!」

「アジトに戻る前に、ある男に、アマゾンの秘薬をたっぷり塗ったムチでオシオキをして

きたんだけど、貴様とは関係が無いのかねぇ、、、」

  

(やはり、この痺れはあの時の、、、しかし、シラを切り通さねば、自分の正体がばれて

しまう。それに体の痺れも、だんだん、、、)

マスクの下で、小さく舌打ちをするスパイダーマン。

「訳のわからない事を言ってないで、今すぐオレと闘え!アマゾネスっ!!そんなにオレが

怖いのか!!」

焦りを隠しながら、必死にアマゾネスを挑発する。

 

「せっかちだねぇ、ホホ、クノイチ達の後にたっぷり相手をしてやるよ。今までの恨みを

晴らさないとねぇ、、、貴様にトドメを刺すのはこの私だよ!」 

アマゾネスは激情に駆られながらも、スパイダーマンの挑発には乗らなかった。

(くそう、あくまでも時間稼ぎのつもりか、、、)

すると、スパイダーマンの背後から聞きなれない声がした。

「まだぁ?早く遊ぼうよぉ」

「!」

驚き振り返るスパイダーマン。

いつの間にか、黄色いレオタードに、白のオーバーニーのタイツ、髪の毛をツインテールに

結んだ、小柄な少女が立っていた。

「あたしはクノイチ黄色のグループのリーダー、ダリア。さ、スパイダーマン。一緒に

遊びましょ!」

 

ダリアと名のったクノイチは、幼さの残る笑顔をスパイダーマンに向け、無防備に立っている。

(こんな子供に、、、なめるなっ!)

背後を取られた事に、驚きを覚えるものの、短期決戦を仕掛けるべくスパイダーマンは

一気に間合いを詰め、鋭い右ストレートを放つ!

「いやん!」

悲鳴を上げながらも、目だけは笑いながら、ダリアは余裕を持ってスパイダーマンの

攻撃をかわす。

「くそう!ならば!!」

スパイダーマンは痺れる体で渾身のコンビネーションを放つ!

「ウフフ、、、」

ダリアはスパイダーマンの右ジャブと左のローキックを軽くスウェーでかわす。

「ほっい!」

続いた右フックを身をかがめてかわすと、返しの左のミドルキックもジャンプして、

楽々かわしてしまう。

ダリアは、渾身のコンビネーションをかわされてバランスを崩したスパイダーマンの

眼前に軽やかに着地すると、すっと右手を突き出す。

『ぺチン!』

微笑みながら、スパイダーマンの鼻っ面にデコピンを入れた、、、。

(ぐっ、、、くそう!)

思わず鼻を押えながら、屈辱に身を震わせるスパイダーマン。

明らかに、身に纏う雰囲気が変わった。体内をアドレナリンが駆け巡る。

「手加減はナシだ!」

怒りにまかせたフックを振るうスパイダーマン!

「いや〜ん」

ダリアは身をかがませて、フックをかわすと、反動を利用して飛び上がる。

そして、あまりのスピードに反応の出来ないスパイダーマンの頭を踏み台にして、

さらにジャンプすると、ひとみの張り付けられた十字架の頂点に軽やかに着地した。

「あんた、弱い、つまーんない!」

 

「!?」

スパイダーマンは頭の中が一瞬真っ白になり、地面に片方の膝をつく。そして背後から

聞こえる声に慌てて後ろを振り返った。

「…あんた、わかってないでしょう、、、。ヤダなぁ、、、あたし飛んだの!」

何が起こったのか理解できなかった、、、。目の前からすっと姿が消えたかと思うと、

頭に衝撃を受けた。

「…!!」

スパイダーマンに驚きが走った。

「あはっ、やっとわかってくれたぁ?そう、ダリアちゃんはアナタの鈍い頭を踏み台にして、

ジャンプしたんでーす!キャハハハ!!」

 

スパイダーマンの発するオーラは、憎っくきこの少女を焼き尽くさんばかりで、さらなる

挑発に新たなアドレナリンが体内に溢れる。

「くそう!真面目に闘え!!」

十字架に駆け寄り、叫んだ。

「よいしょっとぉ!」

ダリアはスパイダーマンの存在をまるっきり無視し、まるで子供が公園の鉄棒から飛び

降りるかのように、あまりに無防備に十字架から飛び降りる。

 

ダリアはスパイダーマンを飛び越すと、後ろを振り返る事無く歩き出す。

予想外の出来事にスパイダーマンも戸惑いを隠せない。

「お、おい、キサマ何所へ行くんだ!?」

ダリアはさも、面倒くさそうに振り返る。

「あんた弱いからつまんないのぉぉ!!」

 

「ぐっっ!なにおぉぉ!」

絶句するスパイダーマンを尻目に、適当な岩の一つに足を組んで腰をかけると、パチンと

指を鳴らす。

「アナタの相手は恋人がしてくれるってさ」

すると、スパイダーマンの背後で『ジャラリ』と鎖の外れる音が鳴り響くと、突然スパイ

ダーマンの首に女の腕が巻きつく。