ロビン(23)

 

S17地区に入ったロビンは、目指す町工場に向かって突進した。

“あいつら、ぶっ殺してやる!”

自分の失敗からバットマンの正体や基地の所在を暴かれ、

さらには自分が捕虜になって辱めを受けた事まで知れてしまったのである。

今のロビンは、正義の為に戦うよりも、自分を貶めたショッカーに対する復讐心に

心を支配されていた。

いや、或いは屈辱感から逃れたいだけの為に、戦いを挑んでいたのかも知れない。

 

「ショッカーの連中、出て来い!!」

工場に入ったロビンは、大声で怒鳴りつける。

「来たか、坊主。出てきてやったぞ」

忍者仮面少尉が余裕綽々で現れた。

「現れたな、ショッカー。人質をどこへやった!」

「人質か。ほら、そこだよ」

忍者仮面少尉の指さす先には、檻に閉じ込められた10人ほどの人質の姿がある。

「人質を解放しろ」

「嫌だと言えばどうなるのかな?」

「お前もゴキ中尉のようになるだけだ」

「なにぃ」

ロビンを前にしても、落ち着き払っていた忍者仮面少尉の態度が、

ゴキ中尉の名前を出された事で、殺気を帯びてくる。

「ははは、間違えたよ。

 もう、くたばってしまったんだから、2階級特進して

 ゴキ少佐殿かな?」

調子づいたロビンが、なおも忍者仮面少尉を挑発する。

「き、貴様、中尉殿を愚弄するつもりか!。

 小僧、思い知らせてやる!!。

 忍法影分身」

忍者仮面少尉が呪文を唱えると、忍者仮面少尉は何十人にも分身し、

ロビンを取り囲んだ。

「うっ」

慌ててレーザーを構えるロビン。

だが、どれが本物の忍者仮面少尉かは全く見当もつかない。

“く、くそー。どうすれば良い。

 そうだ!。ヒーローには、こういう時の勝利の方程式があった”

ロビンは静かに目を閉じた。

“心の目で敵を見るんだ”

しかし、目を閉じても何も変わらない。

ただ何も見えなくなっただけだ。

バシッ。

腹を殴られた。

「うぅっ」

うずくまるロビンの背後から、背中に蹴りが入る。

前のめりに倒れるロビン。

さらに両手両足を押さえつけられる。

“えぇっ!。チョット待てよ。

 あいつはイカかタコか。何で両手両足を一人で・・?!”

ロビンが目を開けると、そこには何十本もの忍者仮面少尉の足があった。

が、よく見ると、それぞれ少しずつ大きさが違う。

“まさか・・”

「バカめ。やっと気づいたのか。

 すべてが本物なんだよ。

 私が忍者仮面本人で、他は私に化けた戦闘員なんだ」

戦闘員が仮面を取って姿を現す。

「ふふふ、今頃気づいても遅いわ。

 さぁ、人質の諸君。よく見るが良い。

 君たちを助けに来た正義のヒーロー・ロビンの大活躍を」

忍者仮面少尉の合図で、戦闘員が一斉にロビンに躍りかかる。

うつ伏せに押さえつけられ、抵抗らしい抵抗も出来ないロビンの衣服を

戦闘員達が無慈悲にも引き裂いていく。

「さてさて準備が出来たようだ。

 人質諸君、とくとご覧あれ。

 正義のヒーロー・ロビン少年の姿を」

忍者仮面少尉の言葉を受け、戦闘員に両手両足を持たれた、

素っ裸のロビンが人質の前に引き立てられる。

顔を赤らめ、唇を噛み締めるロビン。

「ははは。良い格好だぞ、ロビン。

 お前、中尉殿と『今度は頭からパンティを被って現れる』と約束したそうだな。

 約束は守ってもらうぞ」

ロビンの頭にパンティが被せられる。

「わはは。ますます良い格好だ。

 ゴキ中尉を愚弄した罪の重さ、これから思い知らせてやる」

 

ロビンが人質の前で辱められた1時間後である。

ゴッサム球場で開かれたゴッサム・マイナーズとニューヨーク・メッツの試合に

突如、虎仮面が乱入。

新庄を追い回すというハプニングが起きた。

「待たんかい、こら!!」

警官も制止に入ったが、簡単に制止される虎仮面ではない。

「ポリに用はないわい。

 新庄、大リーグで4番を打てる奴が、

 何で阪神やったら、あのザマなんじゃい!。

 1億阪神ファンに代わって、ぶっ殺したる」

叫びながら新庄を追いかける虎仮面の映像は、

ちょうど試合を実況していた地元テレビ局を通じて

アメリカ全土に放映された。

他の番組を放映していたテレビ局も、番組を切り替えて

このハプニングを報じたのは言うまでもない。

しかし、そこに第二のハプニングが起きる。

球場の上空に、一機のヘリコプターが現れた。

何かX字状の物体を吊り下げている。

そして、ヘリコプターはその物体を切り離して去っていった。

謎のX字状物体にはパラシュートが付けられており、

ゆっくりとグランドに降下してくる。

当初、グランドのドタバタに目を奪われ、ほとんど気にする者もなかったが、

やがて、それが地面に近づくにつれ、人々の目はそちらに注がれた。

なんと、その物体にはパンティを頭から被っただけの

素っ裸の少年が大の字に縛り付けられていたのである。