ロビン(22)

 

戦闘員一人に手も足も出ずにやられてしまうという悪夢から

アルフレッドによって叩き起こされたロビン。

寝ぼけ眼のまま、バットマンのもとにやって来た。

「どうしたの?。随分、騒がしかったけど」

「これだよ、ロビン。君も見てくれ」

バットマンは、ロビンに今朝の新聞を差し出した。

「んっ、なに?。

 えっ、えぇっ、えーー」

ロビンの顔が見る見る青ざめていく。

『バツトマンの正体は資産家のウェイン氏!』

『ロビン、ショッカーの拷問に屈して自供か?!』

どの新聞も特大の見出しが踊っている。

冷水を浴びせられたように、一瞬にして目を覚ますロビン。

「これだよ、ロビン。

 君のバイクに取り付けられてあった」

バットマンは小型発信器を示した。

ゴキ中尉がバットマン基地を突きとめる目的で、

ロビンのバイクに仕掛けたものだ。

「今、屋敷の方にはマスコミの連中が押し掛けている。

 まぁ、そっちは適当にごまかすつもりだが、

 もう一つ問題があってね」

「えっ?」

“まだあるのかよ”

「実は、ゴッサム警察に戦闘員の一人が自首してきたんだ。

 そいつが言うには、S17地区で君を拉致し、リンチにかけたという事なんだ」

「そ、そんなの嘘っぱちだよ。

 あいつら、僕の事を恨んでそんな事を言ってるだけなんだ!」

「私もそう思いたい。いや、そう思うよ、ロビン。

 でも、君がS17地区から消息を絶って一週間だ。

 その間・・」

「多くの人が人質にされていたんだ。

 僕は救出のチャンスを待っていたんだよ」

「連絡ぐらい出来ただろ」

「そ、それは・・、えぇっとミノフスキー粒子で」

「いいか、ロビン。よく聞いてくれ。

 戦闘員は、君をリンチした事だけしか自供していない。

 君がリンチを受けたと証言するか、何か証拠がないと

 彼の自供だけで起訴する事は出来ないんだ。

 つまり、彼をまたショッカーに戻す事になる」

「で、でも」

「彼は証拠があると言っている」

「えっ?。証拠?。あるんだったら見せて欲しいよ」

「証拠は君自身なんだ。

 彼が言うには、君を捕まえてスンラデアという強力脱毛液に漬けたから、

 君の首から下には体毛がないはずだと・・」

「うっ」

ロビンは言葉に詰まった。

事実、スンラデアに漬けられたロビンには、首から下の体毛がなかったのだ。

「そ、それは・・」

返答に窮するロビン。

 

だが、その時、警報がバットマン基地に鳴り響いた。

「んっ、またS17地区だ。

 人々が夢遊病者のように歩いているらしい。

 またニンゲンホイホイかも知れんぞ」

「ヨシ、分かった。僕が行く」

そう言うや、ロビンはバイクに跨って、エンジンをスタートさせた。

「待て、ロビン。一人じゃ危ない」

バットマンの声を背に受けながら、ロビンは猛スピードで基地を出た。

  

“チキショー、どいつもこいつも。バットマンもだ!。

 何が一人じゃ危ないだ。子供じゃないんだぞ。

 ショッカーの野郎、殺してやる。ぶっ殺してやる!!”

ロビンの目から涙が流れていた。

  

一方、こちらはゴキ中尉が使っていた町工場である。

今はここで、忍者仮面少尉がロビンを待ち受けている。

「少尉殿。バットマン基地を警戒していた戦闘員から報告が入りました。

 ロビンが一人でこちらに向かったそうです」

「そうか、一人でか。

 ふふふ、若い奴は扱いやすいわ」

「全くです、少尉殿。

 ゴキ中尉の墓前で、あの小僧を嬲り殺してやりましょう」

「いや、すぐに殺したのでは腹の虫が治まらん。

 あいつには長い時間をかけて、生き地獄を味わわせるつもりだ。

 そして、我々が手を下すまでもなく、自ら命を絶つようにしてやる。

 とにかく、簡単には殺しはしない」

  

そんな事は知らぬロビンは、バイクを駆けてS17地区に入っていった。