ロビン(21)

 

 ドンドンドン。ドンドンドン。

「ディック様、起きてください!」

ロビンはドアを叩く音とアルフレッドの叫び声で目を覚ました。

「ふ〜ん、むにゃむにゃ。ごめんなさい、虎仮面さん。

 んっ?。どうしたの?。アルフレッド」

ロビンが寝ぼけ眼をこすりながら起きあがる。

「大変です。ゴッサム銀行がショッカー一味に襲われました」

「えぇっ!」

ロビンの胃がきりりと痛む。

「そ、それで、バットマンは?」

「ご主人様はタコデビルが現れたとかで、そちらの方に行っております。

 ショッカーは人質を取って銀行に立て籠もっているそうで、

 こういう難事件は警察の手に負えないそうです」

「そ、それが難事件って、いったい警察は・・」

「敵は戦闘員だけですが、何せ人質を取られておりますもので」

「えっ」

ロビンはドアを開けた。

「敵は戦闘員だけなの?。本当に?」

「はい、左様でございます」

“小さな成功を積み上げる事が自信に繋がる。

 その自信が大きな成功に繋がるもんなんや”

アルフレッドの言葉に、虎仮面の言葉が脳裏に甦る。

「ヨシ、行って来る。

 ショッカーの連中、叩きのめしてやる。

 人を散々コケにしやがって・・。

 あっ、いや、何でもない。

 とにかく任せてくれ」

俄然、勢いづいたロビンは、バイクに跨るとゴッサム銀行へと向かった。

 

ゴッサム銀行の周りは、警官隊によって幾重にも包囲されている。

だが、ロビンのバイクが近づくと、警官達はロビンに道を譲った。

「頼みます、ロビンさん」

警官から声がかかる。

“ったく、何が『頼みます』だ。

 これぐらい、自分達で何とかしてくれよな”

そう思いながらも、ロビンの頭の中では、

『ロビン、銀行強盗を撃退』という新聞の見出しが踊っている。

 

ロビンはバイクのスピードをさらに上げると、

銀行の入り口に突っ込んだ。 

「動くな、ショッカーども!」

ロビンはレーザーを構えながら、銀行の中を見渡した。

人質は金庫の前に集められ、周りを3人の戦闘員が囲んでいる。

他に、カウンターの外に2人の戦闘員がいた。

“楽勝、楽勝”

「武器を捨てて、両手を上げろ!」

だが、5人の戦闘員は全く動じない。

中には、笑みを浮かべている者もいる。

“嫌な予感・・”

「武器を捨てないと撃つぞ!。最初に殺されたい奴は誰だ!」

「それじゃ、俺から撃ってもらおうか」

カウンターの外にいた戦闘員の一人が、歩み寄ってくる。

戦闘員とは思えぬ、自信に満ちた態度だ。

「う、撃つぞ。本当に撃つぞ」

「だから、撃ってみろと言っているんだよ、パイパン坊や」

「うっ」

ロビンの顔が紅潮する。

「えっ、パイパン?」

人質になっている銀行員の間でざわめきが起きた。

「う、うるさい。バカ野郎」

ロビンはレーザーの引き金を引いた。

だが、戦闘員はレーザーをアッサリ避けると、手にしたナイフをロビンめがけて

投げつけてきた。

「うわっ」

ロビンは手で身体をガードしたが、ナイフはロビンのレーザーを弾き飛ばしてしまう。

「手を上げて降参するのは、お前の方だな、ロビン」

戦闘員はなおも近づいてくる。

手には新しいナイフが握られていた。

「そうはいくか!」

ロビンは身を翻し、レーザーに飛びつこうとした・・が、

「そうはいかないんだよ」

一瞬早く、戦闘員の新しいナイフはレーザーをさらに遠くへ弾き飛ばした。

「ひぇっ」

レーザーに飛びつこうとしたロビンの目の前に、戦闘員のナイフが突き刺さる。

「もう一度だけ言う。

 両手を頭の上に組むんだ。

 次はお前の脳天を狙うからな」

また新しいナイフを手に、戦闘員が詰めてくる。

ロビンがナイフの前から立ち上がった時、戦闘員は1メートルの距離まで近づいていた。

「チキショー、なめやがって」

パンチを浴びせるロビン。

しかし、戦闘員はロビンのパンチを軽く受け止めると、そのままロビンの腕をねじ上げ、

ロビンの背後に回った。

さらに、ロビンの首筋にナイフを突きつける。

「殺されたくないんだろ、パイパン坊や」

「うぅっ、くそー」

「さぁ、どうするね、パイパン坊や。

 このまま殺されるか、降伏するか」

“うぅっ、どうしよう。このままじゃ、面目丸つぶれだよ。

 あっ、そうだ!。こういう時のヒーローの言葉があった!”

「わ、分かった。だから人質を解放しろ」

「ダメだね。殺されるか、降伏するかだ」

戦闘員は冷たく言い放つと、ナイフでロビンの首をスッと撫でた。

「ひぇっ。わ、分かった。降伏する」

「言葉遣いが悪い!。

 『降参します。だからお許し下さい』だろ」

ロビンの腕をさらにきつくねじ上げる。

「うっ。は、はい。

 降参します。だからお許し下さい」

蚊の鳴くような声だ。

「ヨシ」

戦闘員はロビンの腕を放すと、ロビンの前に回った。

「だが、声が小さいな。

 みんなに聞こえるよう、もっと大きな声で言うんだ」

「うぅっ」

「それとも・・」

再び、ロビンにナイフを向ける戦闘員。

「うわっ。降参します!。だからお許し下さい!」

「ヨシ。それでこそ男の子だ」

戦闘員はそう言いながら、ロビンの股間を鷲掴みにした。

他の戦闘員から笑い声が漏れる。

人質にされた銀行員の前で、笑いものにされるロビン。

ため息も聞こえた。

しかし、すっかり自信を失ったロビンは抵抗すらできず、

股間をいたぶられている。

しかも不幸な事に、ロビンは朝アルフレッドに起こされて、

すぐに出動している。

寝ている間に体内に蓄積した物が、そのまま残っていたのだ。

「あっ、あのぅ・・、トイレに・・」

「はぁっ?!。お前、銀行強盗から人質を助けに来たんだろうが。

 それとも、銀行にトイレを借りに来ただけか」

そう言われても、どうにもならない。

「トイレに・・」

ロビンは半泣きになって訴えた。

「ダメだ。ここで漏らせ」

「えっ。そんな・・」

「嫌だと言うんじゃないよな」

またもナイフが突きつけられる。

「ひぇっ」

その瞬間、ロビンの股間に暖かい物が流れた。

漏らしてしまったのだ。

「ぎゃはははは」

戦闘員の笑いの渦が起きる。

ロビンはその中で、為す術なく立ち尽くしていた。

 

ドンドンドン。ドンドンドン。

「ディック様、起きてください!」

ロビンはドアを叩く音とアルフレッドの叫び声で目を覚ました。

「ふ〜ん、むにゃむにゃ。ごめんなさい、虎仮面さん。

 んっ?。どうしたの?。アルフレッド」

ロビンが寝ぼけ眼をこすりながら起きあがる。

“ふう。夢・・だったのか。

 それにしても、何という夢だったんだ。

 ヒーローの僕が、戦闘員一人にやられるなんて・・”

我に返って安心するロビン。

が、次の瞬間、ロビンは悲しい現実にさらされる。