ロビン(12)

 

檻の鍵が開けられると、ロビンは弾かれるように外に出た。

今まで熱さに耐えて、屈辱的な裸踊りをさせられてきたのである。

朝礼台の階段に立って、しばらく呼吸を整える。

階段の脇には、スンラデアの入ったドラム缶が置かれていた。

「おい。どうするんだよ、坊や。

 また、頭から放り込んでやろうか」

「さっさとしろよ、こら!」

下から戦闘員の罵声が飛んでくる。

ロビンは覚悟を決めて、ドラム缶の中に入ろうとした。

「おい。チョット待て」

ゴキ中尉だ。

「そのままスンラデアに漬かったんじゃ、服がびしょ濡れになってしまう。

 お前の着替えなんて、用意していないんだからな。

 戦闘員、こいつの服を脱がせてやれ」

「分かりました」

戦闘員が二人、階段を上がってくる。

一人がロビンを後ろ手に縛ったロープを解いた。

これでロビンは、下半身を丸出しにされているとはいえ、

何ら拘束されていない事になる。

ちらりとゴキ中尉の様子をうかがう。

ゴキ中尉と視線が合った。

“抵抗するならやって見ろ”

威嚇するような視線に、ロビンは思わず目を伏せてしまう。

「さぁ、ロビン君。お風呂に入りましょうね」

戦闘員が、ロビンの服を脱がそうとした。

「じ、自分で脱ぐ!」

ロビンのささやかな抵抗だ。

「勝手な事を言うな。

 中尉殿は我々に脱がせろと命令されたんだ」

「うっ」

ささやかな抵抗すら許されず、ロビンは戦闘員によって、

服を脱がされ、ブーツを奪われる。

生まれたままの姿を曝したロビンは、戦闘員の視線を浴びながらドラム缶の中に入った。

冷たい液体が、ロビンの心まで凍らせてしまうようであった。

 

しばらくして、ロビンは再び朝礼台の階段に戻された。

「身体がビショビショだ。

 タオルで拭いてやれ」

ゴキ中尉の命令で、今度は別の戦闘員が上がってくる。

無論、ロビンの裸体を触りまくるのが目的だ。

かつて、ロビンと戦う事に怖じ気づいていた戦闘員も、

今では、戦意喪失のロビンにすっかり安心しきっている。

階段の下では、我先にタオルを持って上がっていこうとする戦闘員で

混雑する始末だ。

実際、ロビンは戦闘員に間近で素っ裸の恥ずかしい姿を見られ、

タオルで身体を拭かれても、抵抗する様子も見せない。

「ここはよく拭いておかないとな」

戦闘員の一人が、ロビンのチンポを拭き始めても、

ロビンは顔を赤らめたまま、じっと耐えるだけだ。

戦闘員は、ロビンを再び後ろ手に縛ると、階段を下りていく。

戦闘員が降りると、ロビンは恐る恐る自分の股間に視線を送った。

そこには、戦闘員に切り取られ、わずかに残っていたチン毛も

きれいに抜け落ちていた。

「パイパン、一丁あがり〜」

「よく似合ってるぜ、ロビン」

戦闘員の揶揄の言葉がロビンに浴びせられる。

「お〜い。モノが小さいんだ。

 そんな上からだと、よく見えないだろ。

 こっちに連れてきて、みんなによく見せてやれ」

「は〜い。了解しました、中尉殿」

ゴキ中尉の提案で、ロビンは朝礼台を降ろされ、

戦闘員のテーブルを引き回される羽目になった。

戦闘員に連れられ、一つ一つのテーブルを回って、

無毛のチンポを曝すロビン。

「おっ、小さなソーセージだなぁ」

中にはそう言いながら、ロビンのチンポを箸で摘んで笑いを誘う

東洋系の戦闘員もいる。

 

散々な笑い者になったロビンが階段の上に戻った時、

一人の戦闘員がゴキ中尉の元に走ってきた。

「中尉殿。ショッカー本部からの通信であります」

「んっ?。ショッカー本部から」

通信文を手にしたゴキ中尉は、それを読んで舌打ちした。

「どうかしましたか?」

「ショッカー本部からの命令書だ。

 読むぞ。

 『ロビンを即刻、絞首刑にせよ』

 以上だ」

「えーー」

「お楽しみはこれからじゃないですか」

戦闘員からどよめきが起きる。

「みんなには済まない。

 勘弁してくれ。

 本部の命令とあっては仕方ない」

ゴキ中尉にそう言われては、反発する戦闘員もいない。

「ロビン。お前にも申し訳ない事になった。

 殺しはしないという約束だったからな」

だが、“ゴメンナサイ”と言われても、“はい、そうですか”と

死刑になるわけにはいかない。

“逃げなくては”

そう思うロビンだが、階段の下は戦闘員が固めている。

逃げ場は檻の中だが、ブーツまで脱がされた今、

高温に熱せられた鉄板の上に戻る事も出来ない。

ロビンが迷っている間に、戦闘員が階段を上がって、

ロビンの両脇を固めた。

首にはロープが巻かれ、その一方が階段の斜め前の檻の天井部分に結ばれた。

さらに別の戦闘員が、ロビンの足を持って抱え上げる。

このまま、階段の外に突き落とされれば、ロビンは一巻の終わりである。

「や、やめろー。やめてくれー」

必死に抵抗するロビンだが、多勢に無勢だ。

しばらく抵抗を試みたものの、ついに観念した。

“こんな恥ずかしい姿で死んでいくのか”

そう思うと、悔しさと情けなさが込み上げる。

ロビンの頬を一筋の涙が伝った。

「ヨシ。人間、いつかは死ぬんだ。

 せめて、散り際は美しくないとな。

 最後に言い残す事はないか」

「こんな、こんな惨めな姿では死にたくない。

 せめて・・」

「おぉ、そうか。

 まぁ、生まれたままの姿で死ぬのも一興だが、

 ヒーローと言われた男が素っ裸で縛り首にされるのも可哀相だ。

 しかし・・、下はあの通りのボロ布になってしまっている。

 服を着せてやりたいが、お前に暴れられたら面倒だしな。

 うん。まっ、ブーツだけで良いだろ」

「うぅっ」

もはや、抵抗する気力もなくなったロビンに、

戦闘員がブーツを履かせる。

戦闘員がロビンの首に巻いたロープを絞めた。

“これで終わるんだ。

 こんな仕打ちから解放される”

ロビンの目から涙があふれた。