ロビン(11)

 

「さて、『ロビン虐待プログラム・その2』に移ろう」

ゴキ中尉はそう言うと、ロビンのチンポに鈴を付け、

朝礼台から降りていった。

檻の中に一人取り残されたロビン。

“どうせ、腰を振って鈴を鳴らせとでも言うのだろう”と思っていたが、

ゴキ中尉は自分の席に戻り、酒を飲みながらこちらを見ているだけだ。

だが、すぐにロビンは異変に気づいた。

朝礼台の鉄製の床が、段々と熱くなってきているのだ。

熱がブーツを伝わってくるのが分かる。

朝礼台の下には、何台もの大型バーナーが火を噴いて、

朝礼台を熱していたのである。

「あ、あつ、・・、あっ」

思わず飛び跳ねるロビン。

チンポが揺れて鈴が鳴った。

だが、着地すれば、また高熱に見舞われる。

ロビンはまた飛び跳ねて鈴が鳴る。

「良い音色だぜ」

「ははは。ロビンの裸踊りだ」

中には肉を持って朝礼台に近づき、ロビンが惨めな裸踊りを演じている側で、

肉を朝礼台で焼いて食べる戦闘員もいる。

宴席は爆笑の渦となった。

 

宴会の笑い声は、ゴッサム渓谷で秘密基地建設の指揮を執る

クモ男中尉の元にも届いていた。

クモ男中尉は機嫌が悪い。

秘密基地建設が捗っていないばかりか、この日は人質が暴動を起こす寸前まで至ったのだ。

「チキショー。

 ゴキの野郎、いい気なモンだぜ。

こっちはショッカー本部から、大目玉を食ったっていうのによぉ」

酒もかなり入っている。

悪い酒であった。

「ゴリラ人間少尉。

 明日から奴隷どもの労働時間を2割増やせ。

 とにかく工事の遅れを取り戻すんだ!」

副官のゴリラ人間少尉を怒鳴りつけた。

「はいはい、分かりました。

 しかし、大丈夫なんですかねぇ?」

怒鳴られたゴリラ人間少尉も、いささかウンザリしている。

「大丈夫?。何がだ!」

「連中、かなり不満が溜まってますし、今度は本当に暴動を起こすかも」

「起こした奴は処分しろ!。

 人手が足りなくなったら、またゴキに集めさせる。

 戦闘員を働かせても良い」

「それでは、奴隷ばかりか、戦闘員まで不満を持つんじゃないですか」

「ふん、何が不満だ。

 何で俺が戦闘員のご機嫌を取らにゃならん。

 俺はゴキみたいに、部下に迎合する軟弱な指揮官ではないんだ。

 んっ?。ゴキか。

 ヨシ。良い事を思いついた。

 ゴキに無線を繋げ」

“そうそう。たしかにアンタは部下に迎合する指揮官じゃないですよ。

 上官に迎合する指揮官ですものね”

ゴリラ人間少尉は心の中でつぶやきながら、

無線に手を伸ばした。

「ゴキ中尉殿。クモ男中尉から無線連絡が入っています」

無線機を持って、ゴキ中尉の席に来た戦闘員に、

ゴキ中尉は顔をしかめた。

「クモ男中尉か。どうせ、ろくな話ではあるまい。

 無線にも留守電があれば良いものを」

仕方なく無線を取る。

「んっ。何の用だ?」 

「実はなぁ、チョット頼みがある。

 こっちの工事が遅れているのは知っているな。

 人手が足りんのだ。

 それで、そっちの戦闘員を何人か、貸してはくれないか」

「人質は、モス少佐の命令以上に確保したはずだ。

 だいたい、俺の部下を奴隷と一緒に働かせるなど、言語道断だ!!。

 人手が足りないと言うなら、司令官自らが率先垂範するんだな」

声を荒げるゴキ中尉に、宴席の笑い声は途絶え、

無線の交信に戦闘員が耳を傾ける。

「それじゃ、ロビンをこっちに渡してくれ。

 奴隷連中が作業に不満を持って困っているんだ。

 そこで、連中の前で、連中を助ける事の出来なかったヒーローを

 思い切りいたぶってやるんだ」

「奴隷が不満を持つのは、作業指揮に問題があるからじゃないのか。

 そんな事で、不満がなくなるとも思わんがな」

「日本の昔の身分制度から思いついたんだ。

 自分達より下の境遇の者がいる事で、不満はなくなるはずだ。

 『士農工商・穢多(エタ)・ロビン』というわけだ。

 ははは。どうだ、良いアイデアだろ」

「捕虜の処遇は本部が決める事になっている。

 それまでは、捕虜を捕らえた部隊で身柄を預かるのは知っているはずだ」

「いや、だからこうして頼んでいるんじゃないか」

「やかましい!。

 俺の部下に奴隷作業をさせようとする奴の言う事など、

 聞いていられるか!!」

 

「くそー、ゴキの野郎、何様のつもりだ」

ゴキ中尉に一方的に無線を切られ、クモ男中尉は怒り心頭に発した。

「ゴリラ人間少尉。今夜、ゴキの基地に忍び込む。

 ロビンの奴を逃がしてしまうんだ」

 

一方ゴキ中尉は、突然の無線連絡でシラケかけた宴会を盛り上げようとしていた。

「おっ、ロビンも裸踊りに疲れた頃だ。

 このままじゃ、ロビンが焼け焦げてしまうぞ。

 冷やす物を準備してやれ」

ゴキ中尉の命令で、戦闘員が青い液体の入ったドラム缶を

朝礼台の階段の脇に運んだ。

「いいか、ロビン。

 だいぶ、身体も暖まっただろ。

 この中に入って、少し冷やすんだな。

 あらかじめ言っておいてやるが、ドラム缶の中の液体は『スンラデア』というものだ。

 これは強力脱毛剤でな。

 これに漬かれば、全ての体毛が抜け落ちるばかりか、

 10年間は無毛地帯になる。

 まぁ、お前が漬かって肩の高さになるぐらいしか入ってないから、

 坊主頭になる心配はないぞ」

戦闘員の間から、「ほー」っという声が起きる。

「おい、ロビン。

 お前のチンポじゃ、ツルツルの方がお似合いだぜ」

揶揄の声も浴びせられた。

「今、檻の鍵を開けてやる。

 選択肢は三つだ。

 このまま、裸踊りを続けるか、ドラム缶の中に入ってツルツルになるか、

 それとも我々を敵に回して抵抗するか。

 ただ、最後の選択をした場合は、お前にもかなりの覚悟がいると思うがな」