ロビン(10)

 

ロビンを連れたゴキ中尉の一行が基地に着くまでに、さらに1時間が過ぎた。

その間、ロビンはゴキ中尉のジープに首輪を引かれ、山道を歩かされる。

足枷を外され、歩行は確かに楽にはなったものの、

疲れた身体に山道はきつかった。

「着いたぞ」  

ゴキ中尉の声に、ロビンはまたも膝を着いてしまう。

その周りに、ジープから降りた戦闘員達が次々に集まってきた。

「おいおい、こんな事でバテたのか」

「まったくひ弱な小僧だぜ」

口々に罵声を浴びせられる。

だが、身も心も疲れ切ったロビンには、言い返す気力もない。

「お〜い。お前達だけで、何やってるんだ。

 宴会の準備だ。お前達も手伝え」

上級戦闘員の言葉で、ロビンに群がっていた戦闘員達も離れていく。

ようやく一人になると、ロビンにも周囲の様子を確認する余裕が生まれた。

“これが基地なのか・・”

それは“基地”と呼ぶには、あまりにお粗末な代物であった。

山の中腹を切り開いたわずかな土地に、工事現場で見かけるプレハブの建物と

朝礼台のような物があるだけなのだ。

ただ、ゴッサム渓谷を見下ろす崖の側にはいくつかの塹壕が掘られてあり、

ともかく“ゴッサム渓谷警備”の役目を果たしているらしい。

今、戦闘員達は、朝礼台を囲む形に、テーブルやイスを凹字状に並べている。

別の戦闘員は、朝礼台の上部を檻で囲っていた。

やがて、香ばしい香りが漂ってくる。

料理が運ばれてきたのだ。

ロビンは改めて、自分が3日間、何も食べていない事に気づいた。

「ははは。腹が減ったのか、ロビン」

ロビンの心を見透かしたように、ゴキ中尉が歩み寄ってくる。

「まぁ、お前にも何か食わしてやる。

 前にも言ったが、お前を殺したりはしないから安心しろ。

 だが、今日の宴会の酒の肴はお前だからな。

 じっくり楽しませてもらうぞ」

ゴキ中尉はロビンの首輪に結んだロープを引くと、

ロビンを朝礼台の檻の中へと引き立てた。

「ロビン、ロビン」

戦闘員から、嘲笑を込めたロビンコールが起きる。

 

「諸君」

ゴキ中尉の言葉で、戦闘員は一斉に静かになった。

「この3日間、ご苦労だった。

 無事に作戦も終了し、ロビンまで捕獲する事が出来た。

 礼を言う。

 まぁ、俺は長話をする柄じゃない。

 今日はロビンを肴に、大いに楽しもうじゃないか」

今度は拍手が起きる。

「えー。中尉殿のご挨拶が短かったので、

 私から一言、付け加えさせていただきます」

ロビンの連行途中で、通信文を届けに来た戦闘員だ。

「今回の報奨金は中尉殿に下されたものですが、

 中尉殿のご厚意により、この宴会の費用とさせていただきました」

「おい、何を言う。報奨金はゴキ中隊に・・」

「いえ。『ゴキ中尉に』とはっきり書いてありました」

「ったく、通信文を読むとは規律違反だぞ。

 まぁいい。正直に話そう。

 俺はこの小僧にレーザーを突きつけられて、震えておったのだ。

 だが、まさかそんな事を報告できまい。

 だから、戦闘員の名前を使わせてもらった。

 この宴会は、その罪滅ぼしだ」

「いえ、しかし・・」

「えぇぃ、細かい事を言うな。

 酒がまずくなるぞ。

 さぁ、もうその話は良いだろう。

 今日は大いに飲んで騒ごうじゃないか」

ゴキ中尉の言葉が終わると、より盛大な拍手が起こる。

アットホームな宴席の中、ロビン一人が浮いた存在になっていった。

 

「ヨシヨシ。それではまず、開会のテープカットといこう」

拍手の中、ロビンをドラム缶に詰め込んだ3人の戦闘員が、

それぞれハサミを持って朝礼台の檻の中に入ってきた。

3人のうち2人がロビンの両脇に立ち、ロビンのパンティに手を掛ける。

“うぅっ、ゴキ中尉の奴。

 僕に下着を穿かせたのは、みんなの前で脱がして、笑い者にする為だったのか。

 それもパンティを”

ようやくロビンはゴキ中尉の企てに気づいたが、

だからといってどうする事も出来ない。

「ヨーシ、カウントダウンだ。

 10・9・8・・」

「7・6・5・4」

ゴキ中尉に続いて、場内からもカウントダウンが起きる。

「3・2・1・0」

戦闘員がロビンのパンティにハサミを入れた。

「あぁっ」

ただの布きれとなったパンティがロビンの足下に落ちる。

露わになった股間に、戦闘員の視線が集中した。

「ははは。まだ子供じゃねぇか」

「顔も可愛いが、オチンチンはそれ以上だぜ」

戦闘員の嘲笑を浴び、顔を赤らめるロビン。

「さぁて、テープカット第2弾だ」

出番を待っていた残りの戦闘員が、今度はロビンの股間にハサミを当てる。

「や、やめろ!」

「おいおい、心配するな。

 チンポを切り落とそうというんじゃない。

 チン毛だよ、チン毛。

 チン毛なんて、また生えてくるだろうが」

ロビンは身を引いて何とか逃れようとしたが、

先ほどの2人に身体を押さえられてしまう。

「あぁ・・」

身動きの出来ないロビン。

哀れにもチン毛を短く切られてしまった。

「お前のチンポにゃ、その方がお似合いだぜ」

「うんうん、まさに俺たちのヒーローだ」

嘲笑と罵声がロビンを襲う。

「ヨシ。テープカットも無事に終わった事だし、

 我らがヒーロー・ロビン君に乾杯だ」

「乾杯」

「乾杯」

ゴキ中尉の音頭で乾杯が交わされ、グラスを重ねる音が響く。