ロビン(3)

 

山小屋での惨劇は続いていた。

テーブルの上に仰向けに寝かされ、下半身を丸出しにされたロビンに

5人の戦闘員の陰湿ないたぶりが続いている。

緩くなった足首のロープ。

足の自由が戻れば、或いは5人ぐらいの戦闘員なら倒せるかも知れない。

窮地に立ったロビンにとって、それが唯一の反撃の可能性を示している。

 

「おい、こいつに自分が今、どんな格好をしているか見せてやろうや」

ロビンの乳首を弄んでいた戦闘員が、ロビンの髪を掴んで、

ロビンの上体を起こした。

「ほらほら、よーく見てみろ。

 正義のヒーロー・ロビンのかっこいい姿を。

 こんな恥ずかしい格好をさせられながら、

 オチンチンだけはピーンと勃してるじゃないか」

他の戦闘員から笑い声が起きる。

戦闘員に引き起こされたロビンが見たものは、

哀れにも戦闘員によって剥き出しにされた自分の股間であった。

だが、ロビンの視線はさらにその先の、足首を縛ったロープにも注がれる。

“ロープは切れている”

ロビンの心に光った一筋の光は、さらに輝きを増した。

しかし、戦闘員に蹴りを見舞うには、戦闘員が足に近い位置にいなければならない。

まだ、攻撃の出来る状態ではなかった。

「おい、自分の格好を見てどう思うんだ。

 感想を聞かせてくれよ、感想を」

ロビンの髪を掴んだ戦闘員が、ロビンの頭を揺すりながら

ロビンをからかった。

「は、恥ずかしいです」

「えっ?」

「も、もうやめてください。

 謝ります。これまでの事は謝ります。

 だから、もう苛めるのはやめて下さい。

 どうか許して下さい」

戦闘員を油断させる為の屈辱の言葉だ。

意外なロビンの言葉に、一瞬の戸惑いを見せた戦闘員達だが、

自分達が現実にロビンをいたぶっているという事実と

酒の力が彼らを安心させた。

「しかしなぁ、『ゴメンで済むなら警察は要らない』って言うだろ。

 どうやって謝るつもりなんだ」

「そ、それは・・」

何かチャンスを作れる話をしなければならないと思うロビンだが、

咄嗟には思いつかない。

だが、チャンスは戦闘員の方からもたらされた。

「う〜ん。じゃぁ、お前のケツを貸せ。

 俺達5人の性処理道具になるんだ。

 そうしたら許してやる」 

「おっ。良いねぇ。

 正義の味方・ロビン少年を犯すのか」

「こりゃぁ、いいわ」

他の4人が口々に賛同した。

「ロビンもそれで良いな」

「それで許してくれるんですね」

ロビンはあくまでも従順を装う。

「あぁ、勘弁してやる。

 だが、二度と正義の味方なんかするんじゃないぞ」

「ヨシ、決まりだ。

 まずは足を持ち上げて、こいつのケツの穴も覗いてやろうぜ」

2人の戦闘員が、ロビンの足に近づいた。

“チャンスだ”

そして、このチャンスを逃せば、戦闘員は足のロープが切れているのに気づいてしまう。

ロビンはためらう事なく、2人の戦闘員を蹴り飛ばした。

今までされるがままにいたぶらり抜かれていたロビンである。

その突然の反撃に、残る3人の動きが一瞬停止する。

そのわずかなチャンスもロビンは見逃さない。

身体を回転させてテーブルから降りると、さらにもう1人を蹴り上げた。

残るは2人。

ロビンは少しずつ出口に躙り寄る。

「貴様、逃げられると思うのか。

 ぶっ殺してやる」

2人はロビンの動きを見て取ると、出口の前に位置を変えてロビンの逃げ道をふさいだ。

「う〜ん。ちきしょー」

ロビンの背後では、最初に蹴り飛ばされた戦闘員が、頭を抱えて起きあがってくる。

とっさにロビンは向きを変えると、起きあがった戦闘員の頭に回し蹴りを見舞う。

だがその時、出口を固めた戦闘員が、ロビンを背後から抱きかかえた。

「うっ。放せ」

ロビンは身体を壁にぶつけ、背後の戦闘員を振り払おうとする。

それを見て、最後の1人が襲いかかったが、ロビンに蹴り飛ばされた。

ロビンを背後から押さえていた戦闘員も、二度三度と壁に叩きつけられるうちに、

ぐったりと崩れ落ちる。

ロビンは出口の前に立ち、縛られた手でドアのノブを回した。

幸いな事に、鍵は掛けられておらず、ドアは抵抗もなく開いた。

「ど、どうするつもりなんだ、ロビン。

 フリチンのまま、町まで逃げて帰るつもりなのか」

蹴り倒された戦闘員の1人が、倒れたままロビンを揶揄した。

「この借りは必ず返させてもらうからな」

ロビンは捨てぜりふを残すと、外に出た。

 

しかし、そこで見たものは、ロビンにとっては絶望的な光景だった。

モス少佐とクモ男中尉、それに10人以上の戦闘員がジープに乗って

戻ってきたところだったのだ。

「おやっ?。何かスゴイ格好だな。

 その格好で、どこかにお出掛けか?」とモス少佐。

戦闘員もロビンを取り囲む。

ロビンは足で戦闘員を威嚇し、戦闘員を近づけないようにしたが、

戦闘員の囲みを割って、クモ男中尉が進み出てきた。

クモ男中尉に回し蹴りを試みるロビン。

だが、足以外に攻撃の術のないロビンである。

クモ男中尉はロビンの攻撃を予想し、軽々とロビンの蹴りを受け止める。

さらにもう一方の足を払われ、ロビンは仰向けに倒れ込んだ。

クモ男中尉はロビンの片足を持って、ロビンを引きずりながら、

ロビンをモス少佐の前に引き立てた。

「いかがいたしましょう、少佐殿。

 抵抗したとあれば仕方ありません。

 このまま縛り上げ、山の中にでも放置して、

 熊かオオカミの餌にするのも一興かと」

クモ男中尉がモス少佐にお伺いを立てた。

「ふん。つまらん。

 坊やが家に帰りたがっているのだ。

 帰してやるよ。

 ただし、その格好でな。

 ゴッサムの連中が、下半身丸出しのロビンを見たらどう思うか、

 その方がずっと面白い。

 見張りをしていた連中に、ロビンを連行させるんだ。

 おそらく、バツトマンが助けに来るだろうが、

 連中にも逃げられそうになった責任はとってもらわねばいかんからな」

「ははは。さすが少佐殿」

 

10分後、ロビンは後ろ手に縛られた上に、上体を別のロープでさらに縛られていた。

ロープの先端は、見張りを務めていた5人の戦闘員の乗るジープの後に結ばれている。

これから、ロビンはロープを引かれ、ゴッサムシティを引き回されるのだ。

「ヨシ、出発だ」

モス少佐の命令でジープがゆっくりと動き出す。