野球戦士・真樹(プロローグ2)

 

真樹が身につけている純白のユニフォームとエースナンバー。

それは、真樹にとって力の源であった。

純白のユニフォームに袖を通した瞬間から、真樹には力と自信が沸いてくるのだ。

だが、それだけではない。

一種の予知能力と、人の心に作用する力が備わるのである。

相手がヒッティングに来るのか、或いはウエイトするのか、

どんなボールを待っているのか、相手の心を読む事もできるし、 

一心に念じれば、相手にボール球を振らせる事もできる。

 

今も、ユニフォームの力が真樹に危険を感じさせた。

試合に負けたQL学園の選手が、真樹を帰宅途中に襲おうとしているのだ。

 

QL学園の選手達は、真樹が帰宅途中に通る公園の林に隠れて、

真樹を待ち伏せしていた。

彼らには野球しかない。

甲子園の道が断たれた事は、彼らの将来に大きく影響を及ぼすのだ。

「あのガキ、痛い目に遭わさな気が済まんで」

「おぅ、プロのスカウトの前で恥かかしよったんや。

 少々の事で気が済むかいな」

「俺なんか、全国大会出場が推薦入試の条件やったんや。

 大学、パァやで」

「そな、あいつの野球人生もパァにしてもたろうや」

QL学園の選手達は、口々に悪態を付きながら、

真樹が公園を通るのを待っていた。

 

「誰かを待っているのか」

突然、真樹に背後から声をかけられ、QL学園の選手達は一斉に振り向いた。

「おぅ、お前を待っとったんや」

「今日は舐めたマネしてくれたのぅ」

「再試合の申し込みなら、監督の方にしてくれないか」

すごんで見せるが、真樹は動じない。

「やっかましい!!

 今すぐここで再試合したろうやないか」

一人がバットを手にするや、真樹の剛速球が相手の手首を直撃する。

「うわっ」

バットを落とし、手首を押さえる選手を尻目に、他の選手達が殴りかかってくる。

「やめた方が良い。俺は野球戦士・真樹。

 お前達のかなう相手じゃない」

ここでもユニフォームの持つ不思議な力で、真樹は繰り出されるパンチを

すべて紙一重でかわしていく。

「おいおい、空振りばかりだな。もう三振だろ」

そう言いながら放たれる真樹のパンチは百発百中、相手に命中していく。

「く、くそー。覚えとけ」

QL学園の選手が捨て台詞を残して逃走するまでに、そう時間はかからなかった。

 

逃げ去っていくQL学園の選手を見ながら、真樹またはつぶやいた。

「違うんだよ、何かが。俺が求めている物とは・・・」