野球戦士・真樹(2

 

真樹のもう一つの顔、それは正義の為に戦う野球戦士の顔である。

彼の前に、今まで幾多の暴走族や不良グループが打ち倒されていた。

 

「ほほぅ。さすがに元気が良いね、真樹君。

 この歳になるとね、君のような男が羨ましくなるよ。

 その若さというものがね」

だが、さすがは百戦錬磨の老将・ゾル大佐である。

真樹に対しても動じるところがない。

「真樹君。もう一度、言うよ。

 この金を受け取って、バラ色の将来を買うつもりはないのかね」

「やかましい!!」

真樹は足下に投げられた封筒を、櫻井に向かって蹴り返した。

「櫻井君。本当に大切な物は、金では買えないはずだ。

 明日、堂々と勝負しようじゃないか」

封筒を拾う櫻井に、真樹が叫んだ。

しかし、封筒を拾った櫻井は、逆に真樹に軽蔑の視線を送る。

「バカだよ、君は。

 ゾル大佐。この世間知らずを少々痛めつけてくれ」

 

ゾル大佐の合図で、ショッカーのにわか戦闘員になったQL学園の野球部員が

真樹を取り囲む。

「また昨日のようにやられたいのか」

ファイティングポーズを取る真樹。

「ざけんじゃねぇ〜。

 昨日のようにはいかへんのや。

 今日はお前がやられる番なんじゃ!」

後ろにゾル大佐がいるのを頼りに、戦闘員は果敢に襲いかかる。

しかし、そのパンチは空を切り、次々に真樹に打ち倒されていく。

 

「ははは。さすがは野球戦士だ。

 ならば、こちらも君にふさわしい相手を用意しないとな。

 出てこい、野球仮面」

ゾル大佐の合図で、怪人が現れた。

黒十字軍でゴレンジャーと戦った事もある野球仮面だ。

頭部が巨大なボールになっている。

「こい、野球仮面!」

真樹はバットを手に身構える。

「いくぞ!」

野球仮面の頭部が左右に割れ、ピッチングマシーンが現れた。

「くらえ!」

ボールが発射される。

カキーン!

真樹のバットが、野球仮面のボールを跳ね返す。

ジャストミートしたボールは、戦闘員めがけて襲いかかる。

「うわっ」

「ぎゃー」

野球仮面の発射したボールは、すべ真樹に打ち返され、

戦闘員が次々に倒れていく。

「さすがだな、真樹。

 しかし、これはどうだ!」

野球仮面が新しいボールを発射した。

今までのボールと何ら変わるところもなさそうだ。

だが、真樹の予知能力は、とっさに危険を予知した。

“このボールには仕掛けがある。

 見送るべきだ”

野球仮面の罠に気づいた真樹だが、バットは止まらなかった。

いや、敢えて止めなかったのかも知れない。

 

ボーン。

真樹のバットがボールをとらえるや、ボールは爆発を起こし、

真樹の周りが黒煙に包まれた。

「うぅっ。目が・・」

目を押さえる真樹。

 

「今だ、戦闘員。真樹を捕まえろ!」

ゾル大佐に命令され、戦闘員が真樹に襲いかかる。

「うわぁ、ちくしょー」

バットを振り回して、戦闘員を追い払おうとする真樹。

何人かの戦闘員は、真樹のバットに打ち倒されたが、

視力を奪われ、多勢に無勢の真樹に勝ち目はなかった。

バットを振り回す真樹の背後から、一人が足をかけて真樹を倒すと、

寄って集って、起きあがろうとする真樹を地面に押さえつけた。

 

仰向けで地面に大の字に押さえつけられた真樹に、櫻井が歩み寄る。

「ははは。野球戦士も、こうなってしまっては形無しだね。

 どうだい、真樹君。

 僕の提案を受ける気になったかな」

「だ、誰が・・!」

「強がるのも程々にした方が良いと思うよ。

 今の君の状況は、圧倒的に不利なんだし」

「俺をどうするつもりだ!」

「少々痛い思いをしてもらう。

 僕の提案を拒否した罰を受けるんだ」