屈辱(3)

 

再び訪れた暗闇の中、スパイダーマンは憔悴しきっていた。

二度の快楽責めと、その責めへの懸命の抵抗により、

逞しい肉体に漲っていた体力のほとんどを消耗してしまった。

さらに、ほんの一瞬とはいえ快感の虜となって理性を失ったことにより、

ヒーローとしての屈辱的な事実に、精神もまた次第に蝕まれていた。

 

スパイダーマンの赤と青のコスチュームは、

鍛えられ大きく隆起する全身の筋肉を今でも包んでいた。

しかし、かつては正義の象徴として美しかったそのコスチュームも、

敵の女達の唾液と自らの先走りによって、

今では淫らな濃淡を伴ったみじめなものと成り下がっていた。

(いつまで続くんだ・・・ くそっ!)

力任せに両腕を引くが、幾重にも頑丈に絡まるケーブルはびくともしない。

荒い息づかいだけが空しく部屋に響いた。

 

突然、部屋に明かりが灯った。

磔にされたスパイダーマンの前方には玉座があり、中央にモンスター教授、

両隣りにはアマゾネスとベラ・リタの姿があった。

モンスター教授が口を開く。

「ワハハハハッ! スパイダーマン、

 鉄十字団の歓迎を気に入ってもらえたかな?」

「これしきのことで、俺が根をあげるとでも思ったのか?」

果敢にそう答えるスパイダーマンだったが、心の内は異なっていた。

(もう限界だ・・・ このままあの責めをもう一回食らったら、俺は・・・)

屈辱に塗れ、解放を求める欲望とそれを堪えなくてはならない理性の狭間で、

なんとか正気を保つヒーローの心にあるものは絶望と焦燥だけだった。

 

そんなスパイダーマンの心の中を見透かしたように

モンスター教授が屈辱的かつ甘美な誘惑の言葉で追い打ちをかける。

「『イカせて下さい』と言えば、早く楽になれるのだよ」

「ふざけるな!」

「これを見ろスパイダーマン。

 快感に身を任せて自ら腰を振っておるではないか!

 イカせてもらいたくて仕方ないんだろう?

 素直にそう言えばよいのだよ!

 ハハハッ」

そう言いながら指し示したモニターには、

敵の3人の女幹部達にされるがままに身を任せ、

アマゾネスの舌使いに合わせて腰を振り、

自ら快感を貪り喘ぐスパイダーマンの映像が流れていた。

その屈辱的な光景を見せつけられ、マスクの下の端正な素顔が羞恥に歪む。

 

『イカせてくれ』の一言で快感責めから解放されることは明白だった。

今だ興奮の冷めやらない肉体は、絶頂からの解放を求めていたが、

己の欲望に従いその言葉を口にすることは、宿敵に屈服し、

ヒーローとしての自尊心を失い、敵の軍門に下ることを意味していた。

モニターに映し出された自らの行為を否定し、

押し寄せる屈辱をはね除けるように、スパイダーマンは言い放った。

「そんな言葉を誰が言うものか!」

「言うとも! きっとな!

 第3ラウンド開始! これが最終ラウンドだ。

 ワッハッハ」

 

磔にされ四肢の自由を奪われたスパイダーマンの前にアマゾネスが近付いてきた。

けたたましく鳴り響くスパイダー感覚が新たな快感の到来を告げた。

近付くアマゾネスの手には、透明な液体の入ったガラス瓶が握られている。

「ふふっ もっと楽しませてあげるわ!」

嘲りの表情を浮かべながら、瓶の中の少し粘性のある液体を手に取り、

おもむろにスパイダーマンの股間にドロリと塗り付けた。

その冷たさは心地良いとすら感じられ、今なお火照る局部を鎮める様であった。

 

アマゾネスは、青く膨らんだ股間から均等に6つに割れた赤い腹直筋へ、

腹直筋から締まった脇腹を形成する青い腹斜筋へと、

液体をどんどん塗り広げてゆく。

最初に塗り付けられた股間は、初めの冷たい鎮静感が去ると次第に熱を帯び、

以前にも増して火照り、今までに無いぐらいに敏感になっていた。

(こっ これは・・・)

 

スパイダーマンの青く逞しい大腿部に液体を塗り付けながらアマゾネスが口を開く。

「ふふふっ

 この液体には、アマゾンの薬草のエキスがたっぷり含まれているのよ。

 これが塗られた部分は感覚が敏感になり、欲望は一層膨れ上がる。

 でもその一方で、薬草のエキスが併せ持つ覚醒作用によって、

 理性は、快感を求める本能と分離されるのだ。

 理性と本能の戦いに、どこまで耐えられるかしら?」

 

「くっそ〜・・・」

手足の自由を奪われ、この上精神の自由まで奪われようとするスパイダーマンを、

絶望と言う名の戦慄が襲う。

(一体どうすればいいんだ・・・ これでは奴らの・・)

だが、全身の自由を奪われたスパイダーマンにはなす術がなかった。

 

ベラとリタもアマゾネスと同じ様にガラス瓶を片手に、

スパイダーマンの広背筋が形成する逆三角形の広い背中から固く締まった臀部へと、

大胸筋が隆起する厚い胸板から逞しい三角筋が盛り上がる肩を経て上腕部へと、

次々に液体を塗りたくった。

 

ジンジンとした熱感は、股間から全身へと徐々に広がり始めた。

今のスパイダーマンに出来ることは、火照りに堪え、

全身の筋肉を隆起させながら荒々しく呼吸をすることだけだった。

しかし、その間も3人の女達は手を休めることなく、液体を全身くまなく塗り付け、

ついに最後に残ったマスクにまで液体を塗布されてしまった。

 

抵抗する術が無いスパイダーマンの身体は3人の女達によって例の液体を塗り込められ、

赤と青のコスチュームは、液体が染み込んだことで全身が一段と濃い色に染まった。

ヌルヌルと光を映すその姿には、

かつての強く美しかったスパイダーマンの面影は既に無く、

その変わり果てた姿は淫らですらあった。

 

全身を覆う淫乱なコスチュームの下で、全ての筋肉は膨張し、

血管は拡張し、脈打ち、新たな刺激を待ちわびていた。

 

(か、体が 熱い・・・)

何とか四肢の自由を取り戻そうと身体を動かすが、僅かに動かしただけで、

全身の筋肉に吸い付くように貼り付くコスチュームが、

パンパンに膨らんだ筋肉を擦り、刺激し、

快感が激流となってスパイダーマンの脳髄を直撃した。

「あ、あぅっ!!うぁぁ〜〜〜〜!」

たまらず喘いでしまうスパイダーマン。

声をあげるため口を開いたことで、さらにマスクとの摩擦により、

顔面を愛撫されるようなゾクゾクする快感が襲う。

「はあぁぁ〜〜!」

 

スパイダー感覚につづき、

コスチュームまでもが淫猥な責めの道具と化してしまったのだ。

(くそっ、コスチュームまで・・・)

 

強力なジャンプ力、パンチ力やキック力、敏捷性や垂直な壁を登る能力、

こうしたスパイダーパワーの源として、そしてスパイダーマンの正体を隠し、

幾多の戦いで山城拓也の肉体を包み守ってきたコスチュームだったが、

今や反対にスパイダーマンの火照る肉体を窮屈に押し込め、吸い付き、拘束し、

全身に牙を剥き責め立てていた。

最早、スパイダーマンの肉体を守るものは何一つ残されていないのだ。

 

囚われたスパイダーマンは、

最初の責めでアマゾネスによりスパイダー感覚を性感帯へと変換され、

女幹部3人による二番目の責めにより全身の性感帯を敏感にされ、

今度は全身に塗りたくられた液体の作用により、

肉体のあらゆる箇所が性感帯に拡張されてしまったのだ。

完全に鉄十字団の快楽地獄の罠に落ちてしまったスパイダーマン。

 

「どうだ、『イカせて下さい』と言う気になっただろう?」

椅子から立ち上がったモンスター教授が笑いながら近付いてくる。

「だ・・・ 誰が・・言うものかっ!」

言葉を発する度に襲い来る疼きに必死で耐えながら、

モンスター教授を必死で睨み付けるスパイダーマン。

 

「何もせずとも既にこんなに勃っておるわ! ハッハッハ!」

笑いながらスパイダーマンの股間を指し示すモンスター教授。

それを見て声を立てて笑い嘲る3人の女幹部達。

 

危機を告げるはずのスパイダー感覚から伝わる快楽の振動に、

反射的に身構えようと身体を動かす度、

コスチュームにより撫でられ擦り上げられる快感に、

スパイダーマンの股間は既に勃起し、一目でそれと分かる形状を主張していたのだ。

 

(くそっ、どうすればいいんだ!?

 ・・・・

 俺はスパイダーマンだ。

 敵の前でこんな姿を晒すなど・・・)

度重なる快楽責めのため、スパイダーマンは大概の羞恥には慣れてしまっていたが、

敵から指一本すら触れられる前に既に興奮し勃起している己の肉体と、

それを他ならぬ敵の首領に指摘されたことで、

理性は、これまでに無い程の屈辱に塗れた。

 

突然、屈辱に沈むスパイダーマンの理性は強烈な快感を知覚した。

「あぁぁ〜〜!! くっ・・・ うっ!うあぁ〜〜〜〜!!!」 

モンスター教授が、くっきりと盛り上がるスパイダーマンの肉棒を

裏スジを伝って人差し指だけで擦り上げたのだ。

 

激烈な疼きと熱い悦びが、股間から全身へとゆっくりと広がる。

コスチュームの外から与えられた初めての刺激に、

逞しいヒーローの肉体を形成する筋肉それぞれが、待ちわびていた歓喜にうち震え、

肉欲への悦びの波紋が全身のあらゆる細部にまで行き渡った。

(な、なんだ・・・・・

 たった、一本の・・・指で、触れられた・・・・だけで・・・

 こ、こんな・・・・)

 

モンスター教授の指で微かに触れられた唯それだけで、

肉体全てが本能のもたらす悦楽を貪っていた。

その事実が、快感の只中のスパイダーマンの理性を更に恥辱で打ちのめした。

スパイダーマンは、屈辱の苦痛と快感の悦びの両方が混濁した感覚の洪水だった。

 

理解を超えた感覚に悶え苦しむスパイダーマンを、

淫乱な笑みを浮かべるアマゾネス、ベラ、リタの3人が虎視眈々と狙っていた。