屈辱(2)

 

どのぐらい時間が経ったのだろう。

絶頂の瞬間を迎えることができなかった肉体は、未だ興奮で火照っていた。

快感の余韻は完全には消失していなかったが、

全ての刺激のない、光りすら存在しない完全な闇の中で、

スパイダーマンは一人、孤独の中に意識のみが存在していた。

強烈な快感の嵐から解放されたものの、

反対に一切の刺激が存在しない漆黒の闇の中で、意識も感覚も麻痺しつつあった。

 

「これより第二ラウンドを開始する!」

意識の彼方で、モンスター教授の声が聞こえた。

 

巨大なモニターが点灯し、そこに磔にされたスパイダーマンの映像が映し出された。

朦朧とする意識の中、ぼんやりとモニターを見つめる。

照明の落とされた部屋で唯一の光源である巨大モニターに、嫌でも注意を向けてしまう。

いや、モニターに集中せざるを得ない状況だった。

全ての注意力がモニターに注がれることを計算し、スパイダーマンの麻痺した意識に、

屈辱的な姿を植え付けるモンスター教授の巧妙な心理作戦だった。

 

アマゾネスに陵辱されるスパイダーマン。

快感に喘ぐ顔、うち震える肉体、勃起した股間。

最初は抵抗を試みるも、次第に逆らうことをやめ、

ついに自ら快感を求め腰を振り動かす姿がそこにはあった。

屈辱と羞恥の光景の中で、意識は次第にはっきりと形をとり始めた。

 

(止めてくれっ!)心の中で思わずそう絶叫した。

羞恥心に塗れながら完全に覚醒したスパイダーマンは、

あられもない自分の姿とヒーローにあるまじき行為を目の当たりにし、

鼓動は屈辱で高まり、恥辱と自らに対する嫌悪感にモニターから顔を背けた。

 

部屋に明かりが点くと、スパイダーマンの目の前には3人の女が立っていた。

黒いコスチュームのアマゾネス、黄色のビキニのベラ、ピンクのビキニのリタだった。

「ふふふっ これがお前の本当の姿なのさ!」

「自分が陵辱される姿を見て興奮しているんだろう?スパイダーマン?」

「私たちの仲間になって鉄十字団に入れば、いつでもイカせてあげるわよ!」

三人は嘲笑うように、口々に屈辱的な言葉を投げかけ、

スパイダーマンの理性は更に蹂躙された。

 

(くそっ これ以上こんな無様な姿を晒すわけにはいかない!)

「こんなものを見せても無駄だ。

 俺は正義のヒーロー、鉄十字キラー、スパイダーマンだ!」

恥辱を打ち消す様にそう叫ぶと、渾身の力を込めて左腕を引いた。

限界まで盛り上がる大胸筋と上腕二頭筋からの張力が、

手枷に繋がるケーブルに緊張を伝え、ついにケーブルがちぎれ左手が解放された。

(よしっ! これからが本当の戦いだ!)

 

「ばかな!このケーブルはお前のパワーでは破れないはず!」

動揺するアマゾネス達。

「スパイダーネット!」

自由になった左手のスパイダーブレスレットから

白く輝く蜘蛛の糸が放射状に射出された。ネットに捕らえられるアマゾネスとベラ。

 

(早く他のケーブルも外さなければ!)

左手で、固定された右手のケーブルを掴み、引きちぎろうと両腕の筋肉を震わせる。

枷とケーブルの接合部に次第に亀裂が走り、右手も自由を取り戻しつつあった。

(あともう少しだ!)

 

しかし、新たに床と天井から何本ものケーブルが伸び、

繋がれ自由にならない右手と両足を、更に何重にも固定してしまった。

(しまった! だが、左腕だけは・・・)

左腕の枷にも取り付こうとするケーブルだったが、

自由を取り戻した腕は巧みに避け続けた。

 

咄嗟にスパイダーネットを避けたリタは、

ケーブルから左腕を守ることに気を取られているスパイダーマンに背後から近付いた。

隆起した大臀筋から伸びた、広げられ固定された逞しい両脚の大腿二頭筋の間から、

まだ快感の余韻の覚めやらない股間に手を伸ばそうとする。

 

スパイダー感覚が近付く危険を感知したが、その警鐘は股間への快感となって伝わった。

(うっ、うぅぁっ!)

忘れかけていた快楽の波にスパイダーマンは一瞬怯んだ。

その瞬間、左腕の動きが鈍った隙をついてケーブルが枷に結合した。

一本のケーブルが取り付くと、続いて更に何本ものケーブルが結合し、

左腕も完全に固定されてしまった。

(くそっ だめか・・)

スパイダーマンは再び四肢の自由を奪われ、快楽責めに再度さらされることとなった。

 

「ふふふっ、本当はこうなるのを望んでいたんじゃないの?」

スパイダーマンの耳元で屈辱的にそうささやくリタは背後から股間に手を回した。

「はぁっ ああぁっ」

たちまち膨らみ始める青い股間。

リタが僅かに指先を触れただけで、直ちに反応してしまうスパイダーマンの肉棒。

アマゾネスによって加えられた快楽責めによって、今もなお敏感になっていたのだ。

「くっ、うぁぁ〜〜!」

股間への繊細な刺激からの情欲の疼きが全身を駆け巡り、

脊椎を這い上がってくる快感のさざ波にスパイダーマンは身悶えた。

 

リタはスパイダーマンの逞しい逆三角形の背中を舐める様に見つめ、

次の責めに対する期待で淫らに微笑んだ。

背中に絡み付くようなリタの視線を感知したスパイダー感覚が、

新たな快感の振動を広背筋や僧坊筋へと伝えた。

(あぁっ な、何だ? この感覚は?)

 

リタは、スパイダーマンの広く逞しい広背筋から、

上腕三頭筋との隙間に見える筋肉が浮き出た前鋸筋の溝をなぞり、

隆起した大胸筋の描く曲線に沿って手を滑らせた。

目的地に到達した長い指は乳首をくるりとなぞり、撫で、つまみ、弄び始めた。

そして首から肩にかけての力強く広がる僧坊筋へ口付けし、

快感に悶える首筋へと舌を這わせた。

肩から首へと、唇で優しく挟み、吸い付きながら舌で舐め伝い、

身をくねらせるスパイダーマンを優しく愛撫した。

「あはぁっ あ、あぁぁ・・・」

官能の疼きが、吐息となってスパイダーマンの口から漏れた。

 

スパイダーネットを破ったアマゾネスとベラも責めに加わる為に近付いてきた。

二つの新たな危機に警鐘を鳴らすはずのスパイダー感覚によって告げられたのは、

またもや全身に波紋の様に広がる快感であり、

それは、これから行われる新たな快楽責めの幕開けを告げていた。

 

近付く危険を素早く察知し、幾多の危機の回避に貢献してきたスパイダー感覚だったが、

今では逆に、敵から刺激が与えられる前に快感を感知することで

スパイダーマンへの快楽責めの道具と化していた。

(ど、どうしたんだ! スパイダー感覚が・・・・?)

何が起こったのかを確認するように自分の身体に目をやるが、

X字に磔にされてはいるが、赤と青に分けられたコスチュームの下、

力強く隆起する筋肉はこれまでと変わらない正義のヒーローの肉体であった。

 

その身体に秘められたスパイダーパワーの要の一つであるスパイダー感覚が、

敵の責めを感知して快感を増幅し、自らを窮地に追い込んでいるのだった。

自分の肉体の変調に戸惑いを隠せないスパイダーマン。

 

モニターには、アマゾネスに陵辱される自分の屈辱的な姿が繰り返し再生されている。

この、最初のアマゾネスの快楽責めは、危険を敏感に察知するスパイダー感覚を、

性感帯へと変換するためのものだったのだ。

 

ベラは、スパイダーマンの正面から近付き、広く厚い背中に両手を這わせながら、

コスチュームを突き破りそうに固く突き出た乳首に歯を立て、吸い、噛み、

味わう様に舌で転がした。

 

スパイダーマンの前に跪いたアマゾネスは、赤と青の腹部に吸い付き、

コリコリとした腹筋に舌を這わせた。

アマゾネスのだ液で筋肉に貼り付いたコスチュームは、

6つに割れた腹直筋を強調するかのようだった。

両手をスパイダーマンの腰の後ろに回し、

固く締まった青い尻の感触を確かめるように撫で、愛撫するアマゾネス。

 

押し寄せる快感から逃れようと身をよじるスパイダーマンの肉体の動きに合わせ、

腹筋から股間へと、アマゾネスはヌメヌメと光るだ液の筋を残しながら、

青くはち切れんばかりに膨らんだ股間に襲いかかった。

スパイダーマンの完全に勃起した竿の根元から裏スジを舐め伝うと、

続けてカリに沿ってヌラヌラと舌で舐め回した。

 

「うぅ・・・はぁあっ、ああぁ〜!」

首筋を、乳首を、肉棒を、同時に責める3つの唇と舌、

自由を奪われた肉体を撫でる6本の手から極上の刺激が、

全身の性感帯に同時に作用する。これらの刺激の相乗作用により、

数倍の快感がもたらされた。性感帯の感度も極限まで敏感になっていく。

瞬く間に肉体の限界へと追いつめられていくスパイダーマン。

 

ベラ、リタ、アマゾネスの3人の敵の女達に

いいように弄ばれる屈辱に耐えるヒーローの精神と、

全身に加えられる快感を悦び絶頂へ向けて昇り続ける肉体との乖離を必死で繋ぎ止め、

正気を保とうとするスパイダーマンの理性もまた限界に近付いていた。

(だ、だめだ・・ この ままでは・・・)

 

幾度も襲いくる快楽の波から少しでも遠ざかろうとするが、

感覚の全てが快感の渦に飲み込まれ、全身の筋肉は痺れて力が入らない。

今のスパイダーマンにできることは、ただ身体を震わせ、

鍛えられ見事に隆起した全身の筋肉を僅かに動かすことだけだった。

 

甘美な熱い痺れが波紋のように肉体に広がっていった。

たまらず大きな喘ぎ声をあげてしまうスパイダーマン。

「ああっ!・・うぁぁ〜〜〜〜!!」

 

今やスパイダーマンの勃起は限界まで張りつめ、

コスチュームを破りそうな勢いで膨張していた。

その肉棒と亀頭にねっとりと絡み付き、舐められ擦り上げられる

甘くとろけるような刺激で、次から次へと繰り返し押し寄せる快感の波に、

肉体だけでなく精神もまた飲み込まれ、

ついにスパイダーマンの理性は抵抗を止め、欲望に澱んでしまった。

「あぁ・・・はぁっ、あああ、はあぁぁ・・・・」

再び快楽の虜となり、ベラとリタによる乳首と首筋への愛撫に従い喘ぎ声を上げ、

アマゾネスの舌の動きに呼応するように腰を動かして

自ら肉体の絶頂へと向かうスパイダーマン。

 

(ああぁ・・・ もう、た、堪えられない!・・・)

押し寄せる快楽の中で己を見失ったスパイダーマンは、

更に快感を高めるために感覚と肉体を理性から解き放ち、

3人の女達から与えられる全てを本能のまま受け入れ、貪り、

悪との戦いの為に鍛え上げられた全身の筋肉を、ただ悦びの為だけに震わせ、

自らも腰を動かして甘美な刺激に応えていた。

 

だが、またもやスパイダーマンが絶頂に達し精を放つ直前に、

3人の女達はあらゆる行為を中断し、全ての快感が消え失せた。

 

「第二ラウンド終了!」

快楽の虜となり、全身の感覚が快楽に飲み込まれ、

理性すら肉欲の奴隷となっていたスパイダーマンが、

モンスター教授のその言葉の意味を理解したのは、

部屋の照明が落ちた暗黒の闇の中、快感の嵐が完全に過ぎ去ってからであった。