緊縛(3)

 

「ぁ・ぁ・・ く・く・そぉ・・・」

(は・やく・・ あの・光から・・・ のがれ・なければ・・)

下半身から突き上げる苦しみに責められ、整った顔を苦悶に歪ませるスーパーマン。

苦痛を抑え、再び膝と手で体を支えて何とか立ち上がろうとするものの、

クリプトナイトの影響で本来の力を発揮できず床に這い蹲り、

大きく膨らんだ股間を再びナイジェルの前に晒してしまった。

 

目の前に露わになった無防備な男の陰嚢の膨らみを見つめるグレッチェン。

「まだ懲りないのね。バカな男!」

すかさず鋼鉄の男の股間を狙って蹴り上げた。

黒いブーツのつま先が、ヒーローの赤い股間の膨らみを股の間から打ちつけた。

バシィッ!!

「おあぁあっっ!!」

肉体を仰け反らせるスーパーマンの口から悲鳴にも似た呻き声が漏れた。

痛みが完全に消えていなかった陰嚢を、再び猛烈な苦痛が襲ったのだ。

股間を貫く痺れる様な痛みが、内臓を掻き回すような耐え難いほどの疼痛となり、

行き場のない痛みがジンジンと下半身を覆い尽くしていく。

「あ・・ ぁ・ぁ・・・」

襲い来る痛みを堪えるだけで精一杯のスーパーマンは、

無様に床に身を投げ出し、隆起した筋肉の鎧を纏った様な肉体を腰で折り曲げ、

局部から広がる苦痛を堪えて喘ぎながら身をくねらせていた。

そして、クリプトナイトの緑の光線に照らされて、

次第にその動きすら失われて脱力し、手足をだらしなく大の字に俯せ広げて横たわった。

(う、ぁ・ぁ・・・ ぁ・・)

鋼鉄の男は床に倒れたまま、盛り上がった筋肉をブルブルと震わせている。

 

「いいザマね、スーパーマン!

 フフフッ もう蹴らないであげる。あとの楽しみがなくなるもの」

笑みを浮かべる赤いドレスのグレッチェンが、

真っ赤なエナメルのハイヒールのつま先で、

俯せに倒れたスーパーマンの広げられた両脚の間から

微かに覗く陰嚢の膨らみをつつきながら微笑んだ。

刺激に反応してビクッと体を震わせるスーパーマン。

 

床に横たわる正義のヒーローの鼻先では、クリプトナイトが冷たい光を放っていた。

広く張り出した広背筋と高く隆起する僧坊筋が形作る厚みのある逆三角形の背中を、

真っ赤なマントが薄く覆う正義の男は、

悪の大富豪と手下の女達の前に無様に倒れていた。

 

「く、くぅっ」

(わ、私は・・ ここで・・・ やられる・わけ・には・・い、いかない・・・)

ワナワナと震える腕に上腕二頭筋・三頭筋を大きく盛り上げながら身体を支え、

ヒーローの意地で再び全身の力を奮い起こし、

スーパーマンは緑に光るクリプトナイトの痺れるような痛みを堪え、

なんとか両手で半身を起こした。

はち切れんばかりに隆起した大胸筋を包むコスチュームが

ゼェゼェと苦しそうに喘ぐのにあわせて上下している。

 

スーパーマンの正面に立ちはだかるグレッチェンは、

床を這いながら更に体を起こそうとする鋼鉄の男を見下ろしてニヤッと笑うと、

美しいプロポーションをピッタリと包んだ赤いエナメルのスーツを

窮屈そうに歪めながらしゃがみ、クリプトナイトを優雅な動作で拾い上げた。

 

緑色に輝く石を翳しながらスーパーマンに突きつけるグレッチェン。

「このネックレスあなたに似合うわ!」

ヒーローの顔が恐怖と驚愕に凍り付いた。

(や、やめ・て・・くれ・・・)

懇願するような表情を目に浮かべたスーパーマンに向かって笑顔を見せると、

グレッチェンは鉛の鎖を広げて太いヒーローの首にクリプトナイトを掛けたのだった。

スーパーマンの顔が照らされ、次第に濃い緑に彩られていく。

 

首にかけられたクリプトナイトの緑色の光源に強く照らされたスーパーマンは、

更に苦痛に顔を歪めた。

「く・・ああぁ・・ぁあ・・・」

冷たい緑の放射線が、隆起した肉体を強力に照りつけている。

力を失い、首に掛けられたクリプトナイトを外すことも出来ず、

スーパーマンはただ苦痛に呻くだけだった。

 

(あ・・あぁっ

 だっ・・だめだ・・・ち、力が・抜け・・る・・・)

僅かに残った力も失われて脱力し、後方に崩れるように仰向けに倒れてしまった。

クリプトナイトが高く隆起した左右の大胸筋の間の溝に落ち、

スーパーマンの胸の赤い「S」のマークの中心で冷たく光を放っている。

強烈な光線が逞しい肉体を至近距離から照らし、盛り上がった筋肉と光線が作る陰が、

全身で隆起する筋肉をクッキリと浮かび上がらせた。

「ああぁ・・・ ぁあっ・・あぁぁぁっ!」

(くっそぉ・・・ からだが・・ し・痺れ・・る・・・)

体の上に載せられた緑の鉱石を取り除くため腕を動かそうとするが、

苦痛に塗れ痺れた身体を動かすことは出来ず、逞しい肉体をくねらせるだけだった。

胸に触れたクリプトナイトが、

鎧のような肉体でのたうち回るスーパーマンを一層苦しめていた。

 

電磁波は距離の二乗に反比例して弱くなる。

逆に、線源が近ければ近い程、その強度は飛躍的に高まる。

今、クリプトナイトは横たわるスーパーマンの胸の上で強烈に光線を発しており、

ごく僅かな薄さのコスチュームのみを通して至近距離から直接照射される放射線によって

鋼鉄の男は猛烈な苦痛の渦に飲み込まれていた。

胸の上のクリプトナイトを取り払おうとするが、

疼痛のような痛みと痺れに襲われて、腕を上げることすら出来ない。

(くっそぉ・・ だ、だめだ・・・)

 

「はぁはぁっ はぁっ はあぁっ」

激痛を伴った麻痺が、床に大の字に身を横たえるスーパーマンを襲い、

胸の「S」マークの下で隆起する大胸筋と、6個に割れて盛り上がる腹直筋が、

不規則な呼吸で上下している。

筋肉の隆起した肉体は、時折痙攣するようにビクビクと震えるだけだった。

 

「情けない姿ね? え? スーパーマン!?」

「うふふっ その逞しい肉体で、何も出来ないの?」

鍛え上げられた筋肉が浮かぶ肉体を正義のコスチュームに包んだスーパーマンが

無様に横たわるのを満足そうに見下ろす二人の美女。

ナイジェルは、ぴかぴかに磨かれた黒い革の靴で、

スーパーマンの赤く盛り上がった股間を踏みつけた。

「くはぁあっ!!」

ただ叫び声を上げて、腰を捻りながら悶えることしかできないスーパーマン。

(う・うぅ・・

 か、体を・・動かす・こと・・が・・・できな・い・・・)

全身の筋肉は、筋と筋の溝が見えるにまで隆起し、

一見したところ力強く盛り上がっているにもかかわらず、

クリプトナイトの影響で力を失った今、

スーパーマンはその肉体を無抵抗に横たえるしかなかった。

股間を踏まれた衝撃が、全身に広がる痛みに相乗的な苦痛をもたらした。

 

マシンガンの銃弾すら弾き返す鋼の肉体を持つスーパーマンだったが、

クリプトナイトの光を浴びた今では、唯の人間の女性であるグレッチェンに蹴られ、

ナイジェルに踏みつけられた股間からの痛みに耐えられないほどに弱体化していた。

逞しい肉体は既に形骸と化し、全身の力を込めても指一本すら動かせなかった。

「ぅ・ぁ・・ あ・ぁ・・・」

鋼鉄の男の意識は朦朧とし、苦痛が全身を覆い尽くしていた。

 

全身を襲う苦痛に耐えるため、目を固く閉じ、

必死の形相で歯を食いしばるスーパーマンだったが、

痛みの中で薄れていく意識を奮い起こすことは出来なかった。

呼吸すら次第に弱くなっていく。

最低限の生命活動を維持する力すら、

クリプトナイトの緑色の光が徐々に奪い取っていた。

(ぁぁ・・・ こ、このままでは・・し、死んで・・・しまう・・・)

目を開くことすら出来ないスーパーマンは、薄れていく意識の中で死を覚悟した。

 

最早、レックスと二人の女達の前に身を横たえるのは正義の超人ではなく、

逞しい姿を呈しているが人間程度の力すら持たない唯の肉の人形に過ぎなかった。

苦痛を堪え、荒々しく息をしていた筈のスーパーマンは、

今や浅い呼吸を繰り返すのみで、意識すら失いかけていた。

 

意識の途切れたスーパーマンが無様に逞しい肉体を晒す前で

三人の男女は邪悪な笑みで顔を歪ませて笑っていた。

椅子から立ち上がったレックスは、だらしなく横たわるライバルの側に屈むと、

スーパーマンの首からクリプトナイトのペンダントを外して鉛の箱に戻し蓋を閉めた。

「そう簡単に死ねると思ったら大間違いだ。

 正義のヒーローに相応しい屈辱を味あわせてやる」

足下に倒れた鋼鉄の男を見下ろしながら、笑みを浮かべるレックスが呟いた。