(8c)
ヒッポリト星人は再び、手元のボードを操作し始めた。
セブンのブロンズ人形のカプセルは消え去り、本物はカプセルの中、
偽者は外にいるという構図が出来上がった。
執行者の操作による変化はそれだけではなかった。
トロッ・・・・トロトロ
カプセルの天井から、かなり粘度の高い液体が壁伝いに降りてきた。
セブンの背後でゆっくりゆっくりと床に向かって降りていった。
その液体の動きは暗殺者が獲物に気づかれないように動くのと似ていた。
慎重に慎重に背後をとり、床目掛けて液体は降りていった。
当の獲物は目の前の自らを模倣したブロンズに注意をもっていかれ、
背後には意識は回っていなかった。
セブン:出せっ!ここから出せっ!こ・・・・・
ヒッポリト星人:あなた達は本当に学習能力も注意力もない・・・・
あなたは出されるわけがない。
そして何もされないわけがない。
カプセルの壁を叩き、暴れていたセブンだった。
しかし、紅きモルモットは壁を叩き抵抗することすらも許されなかった。
セブン:・・・う、うわぁぁぁぁぁ・・・な、なんだ・・・・これ・・・・・
ヒッポリト星人:固めるだけが私達の特技ではないですよ
ヒッポリト星人の地球での戦闘、過去での戦いでは見せたことのない、
その攻撃、いや拷問、どれも当てはまらない、その実験処理は勇敢な戦士であるセブンを
一瞬で恐怖に陥れた。
壁を叩き叫ぶセブンの背後を静かに床に向けて下りる液体が、
セブンの足元に忍び寄り襲い掛かったのだ。
攻撃するわけでも、猛毒を含むわけでもなかった。
その液体はセブンの足に触れるとセブンの体と融合し、分解、再構成を始めたのだ。
つまり、体をどろどろの液体に変えられたのだ。
セブン:・・あぁ・・・・くそっ・・・・こ、こんな最期・・・・・
ヒッポリト星人:最期?何を見当違いなことを・・・・これから始まるのですよ?
その液体はセブンの両足に襲い掛かり、膝下までを溶かしていた。
透明だった液体はセブンを溶かしたことで紅く染まり、尚もセブンの体を取り込み、
液体に変えていった。
液体から逃れるため、カプセルの壁にすがるように捕まるところを探すが、
突起も突っかかりもないカプセルは無常にも必死に助けを求めるセブンの手を
とることはなかった。
壁をこする手はむなしく空振りし、すがるものがなかった。
その液体は無情にも腰元を越え、隆起した二枚の盾の様な胸板さえも餌食にしてしまった。
ヒッポリト星人:無様ですねぇ
セブン:くっ・・・・・無念だ・・・・・
壁につかまって逃げる、最後の抵抗も諦め、両手を壁に投げかけ俯いた。
変わりゆく自らの体を眺めるしかなかった。
胸板もその頃には完全に液体に変わり、ヒッポリト星人から見ると紅い沼から両腕を出し、
沈みかけているセブンがいるように見えるほどにまで体を変えられてしまった。
セブン:・・・・・・・・・・
最期の瞬間を悟り、無言のままセブンがセブンであることを認識出る部分である、
顔が赤い液体に沈んでいった。
両腕を残しセブンがいた証拠はなくなってしまったのだ。
残された両腕も例外なく液体に沈みゆき、セブンは完全に液体になってしまった。