内なる地獄

(5)

 

 罠であることを告げたくても告げられない、

逃げるようにサインを出したくても出すことも出来ない・・・

今の二人に出来ることはされるがままに張られた罠の餌になることしか出来なかった。

そんな二人の考えも伝わることなく代々ウルトラ戦士たちが守り続けている惑星、

地球に降り立ったウルトラ兄弟達。

 そこで、彼が目にしたのは予想もしていないものだった。

 

ゾフィー:こ、これは・・・・・

 

セブン:A・・・・メビウス・・・・・

 

ウルトラマン:あいつか!ヒッポリト星人が・・・・

 

ジャック:しかし、何故、あいつが今頃・・・・

 

謎の声:今頃?敵を研究しない侵略など無意味じゃないですか?

 

セブン:?!姿を現せ!

 

ゾフィー:どこだ!どこにいる!!

 

 地球に降り立った4人のウルトラ戦士達は姿の見えない侵略者の声に、

どこから発せられたのか、敵の所在を探るため二つのブロンズ像と距離をおき、

あたりを探っていた。

 

謎の声:A同様に、あなた達も学習能力がないですね。助かりますよ、全く

 

ジャック:何っ?

 

ウルトラマン:どういうことだ!

 

 サァァァァァァァァ・・・・・・

 

セブン:しっしまった・・・・

 

ゾフィー:くっ・・罠か・・・・・

 

ヒッポリト星人:私達がAだけを倒して身をひくと思ったんですか?

 

 あたりをさぐるウルトラ戦士達の足元から地面を割るでもなく

カプセルが光速でせり上がった。

光の国の戦士といえども、光速で現れたカプセルを確認し、

空中に逃げ出すことなど出来なかった。

驚いた姿のまま、無情にも天井が閉まり4人とも檻の中にしまわれてしまった。

 

ウルトラマン:出せっ!ここから出せっ!

 

ヒッポリト星人:愚かな・・・・

        獲物が4匹もまんまと捕まったものを、どうして逃がすんです?

 

ジャック:こんなに狭いとブレスレットも・・・・使えない・・・・・

 

ヒッポリト星人:安心してください。

        前の様にただただブロンズにするようなことはしませんから・・・・・

 

ウルトラマン:どういうことだ!

       Aもメビウスもブロンズにしたではないか!

 

ヒッポリト星人:彼らは最初から我らが城の門に飾るオブジェになるのが

        決まっていましたから

 

セブン:では我らはどうするというのだ?

    力を奪い、なぶり殺してみるか?

 

ヒッポリト星人:力など奪わずとも、あなた達はいつでも倒せます。

        もっと有効に使って見せますよ

 

ゾフィー:貴様ぁぁぁ・・・・

 

ヒッポリト星人:お互いの生きた姿を見るのは最後になるでしょうから、

        じっくりと互いの姿を見ておくといいですよ

 

セブン:何をっ!

 

ウルトラマン:私達がそう簡単に負けるものか!

 

ヒッポリト星人:檻の中のモルモットが何を言う

 

謎の声:サクシウム光線!

 

ヒッポリト星人:何っ?!

 

 咄嗟に空から聞こえた声と共にヒッポリト星人に降り注いだ光線を間一髪よけた。

 そこに現れたのはウルトラマン80とウルトラマンレオだった。

 

ヒッポリト星人:おやおや、呼んでいない方まで現れましたか・・・・

 

80:先輩達を解放しろ!

 

レオ:もう、お前のカプセルの戦術は効かないぞ!

 

ヒッポリト星人:あなた達の使い道は考えてないので、早々に退場願いますかね

 

80:なめるな!

 

 ヒッポリト星人にめがけて再度光線を放ったがあっさりとよけられてしまい、

そこに続けてレオが得意の飛び蹴りを放つも、そのキックの先にはヒッポリト星人の姿はなく、

二人の不意をついた攻撃は空振りに終わってしまった。

 

80:?!ど、どこだ・・・どこにいる!

 

レオ:卑怯だぞ!ヒッポリト星人

 

ジャック:!!後ろだ、80

 

80:?!・・・・な、何っ!

 

ヒッポリト星人:残念でしたね。あなたはここまでです。

 

 ジャックに知らされて背後に注意を払ったが、時すでに遅く、

ヒッポリト星人の特徴的な口が80の背中に向けられていた。

口が背中に着くや否や、80は金縛りにあった様に動きを止めてしまった。

誰が見ても、特徴的な細身の口も、今の80には未知の威力を秘めた武器を

突きつけられている様なものだった。

 

レオ:・・・80?逃げろっ!

 

80:あ・・・あぐっ・・・・ぐっ・・・・・・

 

ヒッポリト星人:あなたの魂は私が消化してあげます、時間をかけてね・・

        くくくくく・・・・・

 

 苦しむ80が地面に崩れ落ちると、青かったカラータイマーが点滅もせず、

赤くなることもなく光が消えていた。

瞳も光を失い、完全に沈黙していた。

 間近で見ていたレオも、カプセルの中の兄弟達にも80の身に何が起きたのか

理解できなかった。

命の危険を示すカラータイマーが青からいきなり光を失うなど、

誰一人として見たことも聞いたこともなかったのだ・・・・

いや、そんな現象、今までにはなかったことなのかもしれない・・・・。

そして、誰も知らない現象の後、地面にはこと切れた80が横たわっていた。

 

レオ:・・・・いっ、いったい・・・・何をしたぁぁぁぁ!

 

ヒッポリト星人:そうですねぇ、言うならお食事ですかね?

 

80:・・・・・・・・

 

セブン:に、逃げろっ!レオ

 

ジャック:体勢を立て直せっ!

 

レオ:そ、そんなこと・・・・・・

 

ゾフィー:こいつは我々の知るヒッポリト星人ではない!

 

ウルトラマン:80や我々の犠牲を無駄にするな!

 

レオ:・・・・くっ・・・・・

 

 敗北はしていないと、そう言ったウルトラ兄弟だったが、

無意識に自らの敗北を認めたのか、「我々の犠牲」という言葉が自然と出てきてしまった。

 そんな緊迫した兄弟達のやりとりに興味がないのか、地面で動かない80の頭上に

仁王立つヒッポリト星人。

 80はうつ伏せに倒れ、右手が前に伸び、左手は曲がり地面の土を握り締め、

身動き一つしていないのだ。そこにヒッポリト星人が口から深緑色のガスを浴びせかけた。

 

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・

 

レオ:・・・・?!・・・・

   なんてことを・・・・

 

ヒッポリト星人:安心なさい、あなたも食べてあげますから・・・・

 

 レオが、そしてカプセルの中の兄弟達が見たのは地面に倒れ伏した80が一瞬にして

ブロンズ像に変わっている驚愕の光景だった。

 口からヒッポリトタールをガス状で噴出し、一瞬でブロンズ像に変える・・・・

以前のヒッポリト星人にはそんな技はなかった、

そうカプセルに捕まった兄弟達や報告でレオが知る過去のヒッポリト星人にはない技だった。

 

ジャック:・・・何をしている!

 

セブン:早くしろっ!

 

レオ:・・・・か、必ず助けに来ます!・・・・

   くっ・・・・・

 

ヒッポリト星人:逃げられると思っているんですか?

 

 カプセルを背後に悔しさに震えながら飛び立つレオに余裕を見せるヒッポリト星人。

首輪、鎖のついた犬が遠くに行こうとしているのを眺める様に、その態度は依然として

余裕に満ち満ちていた。

急がずとも逃がさない、そんな余裕が・・・・。

 どんどん兄弟達から離れていくレオに向けヒッポリト星人が手をかざした瞬間、

誰も予想しなかったことが起きた。