内なる地獄

(3)

 

 メビウスを助けるために地球に降り立ったウルトラマンA。

しかし、敵に成されるがままにカプセルに閉じ込められてしまった。

自分のせいで捕まった兄に謝るメビウス、助けるどころか同じように捕まったことを詫びるA。

そんなAのエネルギーも抵抗することも出来ずにカプセルの天井に吸い込まれていった。

全てはヒッポリト星人の計画通りにことが運んでいたのだった。

 

ヒッポリト星人:すいませんねぇ、我らの城の入り口に飾られるだけのあなた達には

        必要のないエネルギーですから、私が有効活用してあげます。

 

A:・・・うっ・・・・・・・ち、ちか・・・ら・・・が・・・・・抜けて・・・・いく・・・・・

 

ヒッポリト星人:安心してください、あなた達にはこの世を支配するわれ等の繁栄を

        見届けてもらうために死なない様にしてあげますから

 

 その言葉のあとでカプセルの床から紫色に輝く光の玉が立ち上り、

Aのカラータイマーに吸収されていった。

 

ヒッポリト星人:このエネルギーがあれば、あなたは戦えないまでも死ぬことはない。

        しかも、あなた達には消費できないエネルギーなので減ることがないんです。

 

A:・・・何を・・・・するつ・・もりだ・・・・・

 

ヒッポリト星人:われ等に逆らうとどうなるのか!

        それをこの世の全ての生き物に知らしめる、その礎になっていただきます!

        動かない体で一生ともって後悔しなさい。

 

 ヒッポリト星人の言葉が終わるや否や、カプセルの天井に吸い込まれる光の玉の数が増え、

Aの上半身が見えないほどにまで急激なエネルギーの吸引がなされた。

 苦しみもがき、のた打ち回るほどの痛みを伴うだろうことは誰の目にも明らかであった。

しかし、全身を隙間なく包み込む粘液で体は動かすことが出来ないため、

エネルギーの吸引の最中もヒッポリト星人に強いられたポーズをずっと維持していた。

 そうこうしているうちにAのカラータイマーからは数えるほどの光の玉しか

漏れ出なくなっていた。

カプセルの機能で光エネルギーが残らず吸い出され、Aの体には言葉の通り、

エネルギーは微塵も残っていなかった。

 代わりに、ヒッポリト星人に注がれた邪悪なエネルギーだけが残り、

澄んだ青色のカラータイマーは、主のピンチに際して赤ではなく紫色に染まっていた。

 

A:・・・・・・・・・・・・・

 

ヒッポリト星人:どうしました?死んではいないはずですが?

 

A:くっ・・・そ・・・・・・殺すなら・・・・殺せ・・・・・

 

ヒッポリト星人:あなたにはまだ仕事が2つ残っています。

        一つは兄弟たちをおびき出す。

        もう一つは未来永劫、メビウスと共にオブジェになるのです。

 

A:・・・・兄さん・・・達は・・・負け・・ない・・・・・

 

ヒッポリト星人:メビウスも同じことを言っていましたよ。

        くくくく・・・・

        そろそろ、仕上げの時間ですね。

 

 エネルギー吸引の終わったカプセルは天井から忌々しいヒッポリトタールを放出し始めた。

 壁についた両手、肩などに天井から流れ落ちるタール。

深緑色のその液体は動くことのない巨人の体を銀色と赤から汚い色へと変えていく。

巨人を捕らえる檻の天井裏で待ち構えていた液体は、出番が来ると待ち構えていた様に

我先に下りてきた。

 この液体も過去に戦った時と比べると若干粘性があり、ゆっくりと体を汚していった。

まるで、ヒッポリト星人が汚れていく様を楽しむために改良されたのではないかとさえ思うほどだった。

 

A:(まずいっ・・・・・また、あの時と同じだ・・・

  いや、兄さん達もこれでは・・・・・・)

 

ヒッポリト星人:良い色ですよ、A。

        素敵なオブジェになりそうですね。

 

 どのくらいの時間宿敵の目を楽しませただろうか・・・・

ヒッポリト星人の目の前でAの体は顔以外の全てが深緑色に包まれた。

 しかし、どうしたことか、以前のままならばブロンズにコーティングされるのは一瞬、

一気に全身がブロンズになったが、今回は顔には一切ヒッポリトタールがかかっていないのだ。

 

ヒッポリト星人:気がつきましたか?

        わざと一気には固めてないんです

 

A:・・・何が・・・したい?

 

ヒッポリト星人:私も先輩の失敗を教訓に、学んだことがあるんです。

        A、あなたはウルトラの父にブロンズを解除してもらいましたね・・・・

 

A:・・・・・それが・・・な・・んだ・・・・?

 

ヒッポリト星人:今回、完璧だと思われていたタールの欠点を直したんです

 

A:・・・・?!

 ・・・・ま、まさ・・か・・・・・・

 

 カプセルの床と天井から白いガスが勢いよく噴出しAに襲い掛かった。

 カプセルの中のガスが晴れた時には、一体何が起きたのかわからなかった。

そこにいたのは、顔以外を全てブロンズにされ、哀れな姿でカプセルの壁に両手をついたAがいる。

ガスが噴射される前と後で何も変わらなかった。

そう、何一つ。

 

ヒッポリト星人:このガス、何だかわかりますか?

 

A:・・・・これ・・・は・・・・・・・?

 

ヒッポリト星人:ウルトラの父があなたを浄化するのに使った技と同様なガスです。

        この意味がわかりますか?

 

A:・・・・そ、そういう・・こと・・・・か・・・・・・

 

 過去の悪夢を終わらせたウルトラの父。

父がAの体を元に戻した技、それをもってしても顔以外に施されたブロンズが解除されなかった。

この事実は光の国の誰が助けに来ても体は元に戻らない、

自分とメビウスは元に戻らないということを物語っていた。