(2)
初めてウルトラマンが地球の守護の任についてから長い年月が経ち、
ウルトラマンタロウの弟子であるメビウスが守っているはずの地球。
そこから上がったSOSのウルトラサイン。
偶然、地球の側にいたウルトラマンAがかけつけると、
そこにいたのは光の国のルーキーではなく、過去に自らが施されたのと同じ
ブロンズで包まれた哀れな新人戦士だった。
何の前触れもなく現れた知った顔・・・
ヒッポリト星人と対峙するも、成す術なく攻撃を受けるしかなかった。
ズズ・・・・ズズズズ・・・・・・
スゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・ガシャン
A:し、しまった・・・・
ヒッポリト星人:おや?A、どうしたのです?
前回と同じ眺めではないですか?
A:くっ・・・出せっ!!卑怯だぞ!
ヒッポリト星人:何を言うんです?
風に追い込まれて勝手にそうなっただけではないですか・・・
それに二回も同じ手にかかるのはどうなんでしょう?
おちょくったように話すヒッポリト星人。
あざ笑う彼に抗議でもするようにカプセルの内側をたたき続けるA。
しかし、一向にカプセルは壊れる気配もなく、無駄な抵抗を続けるだけであった。
初めてヒッポリト星人と戦った時となんら変わらない光景だった。
ただ、一つだけ違うことがあるとすれば、今のAにはわかっていることがあった・・・・
ここから脱出出来ないと哀れなブロンズ像に変えられてしまうという逃げられない事実である。
トロッ・・・・トロトロッ・・・・
A:・・・・くそっ・・・・このままじゃ・・・・
ヒッポリト星人:おやおや、今度もウルトラ兄弟を道連れにしますか?
くくく・・・・
以前に地球でブロンズ像にされた時と同じく、
カプセルの天井から透明な液体が降ってきたのだった。
しかし、前回の時とは違い、粘度が高く体に付着するとなかなか流れ落ちない、
まるでスライムの様なものが降ってきた。
ヒッポリト星人:あなたも前と全く同じブロンズ像ではつまらないでしょうから、
工夫を凝らしました。
A:・・・ば、馬鹿にするなっ!
まだ、負けたわけではない!!
ヒッポリト星人:私に目をつけられた段階で、すでに負けは決まっていたんですよ、
早いか遅いかの違いです。
そうこうしてる間にも天井から降り注ぐ液体は着実にAの体を汚していく。
頭や肩に降り注いだ液体は、ゆっくりゆっくりと体を這う様に下に向かい、
顔や胸板、腕などを汚していった。
そんな体の汚され具合などは全く気にせず、カプセルにヒビがないか、
歪みがないかを最後まであきらめずに念入りに壁面を触り調べていた。
もちろん、壁にも液体は伝っているので、脱出の糸口を探す両手は粘液にまみれていた。
粘液にまみれながらも突破口を探そうとカプセルを両手で触っているAを眺め、
ヒッポリト星人は獲物が計画通りに汚れていくのを無言でただただ眺め楽しんでいた。
そうこうしているうちに、Aの体は言葉の通り、全身くまなく粘液に包まれてしまった。
ヒッポリト星人:どうです?破壊出来る場所は見つかりましたか?
A:・・ちくしょう・・・・・?!・・・・
ど、どうした・・・ことだ・・・・・・
ヒッポリト星人:ようやく気がつきましたか?
悔しさに拳を握り締めようとしたが、指が曲がらないのだ。
いや、それ以前に壁を両手で調べていたままに腕の関節も曲がらないのだ。
そう、体を余すところなく綺麗に粘液で包まれた段階で初めて自らの体に
付着する液体の正体を知ったのだった。
ヒッポリト星人:そうです、それは接着剤の様なものですね。
どうです?動けますか?
A:・・・う、・・・うご・・・け・・・・ない・・・・・・
ヒッポリト星人:あなたのその姿勢は好みのポーズではない・・・・・
ヒッポリト星人の目が光ると自分の意思では寸分も動かせなかった体が
勝手に動いていくのである。
両足は仁王立ちした状態に開き、あるはずのない突破口を必死に探し
壁につけていた両手はそのままに、顔は絶望に満ちたようにやや上を向く、
そんなポーズに変えられてしまった。
謎の声:・・・・いさん・・・・・まない・・・・・・
A:こ・・・・の声・・・・は・・・・・・
ヒッポリト星人:あぁ、これはあなたをおびき出す餌になってくれたメビウスの声ですよ
A:メビウス・・・の?
ヒッポリト星人:そうです。魂だけは健全なまま残していますから・・・・
メビウス:すま・・い・・・・・・にいさ・・・・・・・くのせい・・・・・・
A:メビ・・ウス・・・・すまな・・い・・・・・
ヒッポリト星人:これは泣けますねぇ・・・
助けに来た戦士も同じ運命にあい、お互いに謝りあう・・・・・
いつまでも見守りたいところですが、私も忙しい身・・・
残念がる仕草をして見せるヒッポリト星人の瞳が再び輝いた。
カプセルがうなり始めるとAの体に異変が生じ始めた。
Aのカラータイマーから光が漏れ出し、天井に吸収されだした。
全く動かない体とは対称的に、カラータイマーから漏れ出す光は勢いよく天井に上っていった。