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謎の声:・・・・・なるほど、先輩はこうやって攻め入ったんですね・・・・
ならば先輩の失敗を活かし我等が星に栄光を・・・・・・
くくくくく・・・・・
ウルトラマンから始まり、セブン、そしてウルトラマンジャックが
怪獣、宇宙獣、宇宙人から地球を守ってきた。
役目を負えたジャックに代わりヤプールの魔の手から地球を守るべく
ウルトラ兄弟5番目の弟・ウルトラマンAが地球に赴いていた。
数々の超獣を相手にピンチに陥りながらも地球を守ってきたAであったが、
一度だけ、ただ一度だけ、完全な敗北に終わったことがあった。
ヒッポリト星人という名の地獄星人が侵略してきた際、
罠にかかり自らの体がブロンズになったことがあったのだ。
そしてウルトラサインで助けを求め、現れたウルトラ兄弟達も同様に罠にかかり
兄弟5人全員哀れな姿でブロンズの置物として地球の夕日に晒されるという事件があった。
駆けつけたウルトラの父の必死の活躍により兄弟も、そして地球も九死に一生を得たのであった。
あれから何年が経っただろうか・・・・
地球は新しいウルトラマンが守護し、ウルトラマンAは別な任務で宇宙を守る日々を過ごしていた。
A:今日も特に異常は・・・・
ん?あれはメビウスからのウルトラサイン。・・・・・
SOS?・・急がなくては・・・
地球からさほど離れていない場所をパトロールしていたAの目に飛び込んできたのは、
助けを求めるウルトラサインだった。
新しい地球の守護者であるウルトラマンメビウスの身に危険が迫っている証拠であった。
Aが地球に向けて動き出すと、そのウルトラサインはすぐに消えうせてしまった。
まるで、A以外に見られる前に消えるようになっていたかの様に。
疑惑のウルトラサインが出てから、まもなくして地球に降り立ったAの目には想像もしていなかった
衝撃の光景が映っていた。
A:メビウス・・・・お前・・・・・・
目の前には苦しみに満ちた表情で、助けを求めるように右手を前に出した状態で
ブロンズ像にされたメビウスがいた。
そう、それはまるでいつぞやの、ウルトラ兄弟が全滅するきっかけになった
自らの姿を見ているかのような気分になった。
謎の声:やはり来ましたね、ウルトラマンA
A:そ、その声は・・・・ヒッポリト星人!!
ヒッポリト星人:覚えていてくれましたか・・・・
あなた達を再びコレクションしに来てあげましたよ。
A:同じ手にそう何度も何度もかかると思うな!いくぞ!
ヒッポリト星人:それはどうでしょう?
あなたも強くなったのでしょうけど、
私達が昔のままだと思わないでくださいね
勢いよくヒッポリト星人に向かうウルトラマンAに比べ、
ヒッポリト星人にはどこか余裕の様なものが漂っていた。
メビウスを簡単にブロンズ像に変え、まるで予想していたかの様にAが現れた・・・
予想通りに話が進んでいることから生じる余裕だったのかもしれない。
もしも、Aにもう少しだけ心にゆとりがあれば、この余裕を察知できたかもしれない・・・・
いや、察知出来てもすでに待ち構えている未来は変えられなかったのかもしれない。
そんな、ヒッポリト星人の余裕など気にしないAは肉弾戦に持ち込もうと接近し、
得意の打撃を放った。
打撃がヒッポリト星人にクリーンヒットするも、ヒッポリト星人はひるむどころか、
ダメージさえも与えられていない様だった。
逆に光り輝くヒッポリト星人の両手がAに触れた途端、
後方の岩山まで吹き飛ばされてしまった。
ドドォォォォォン ガラガラガラガラ
A:く、くそっ・・・どういうことだ・・・・・
また、幻影でも使っているのか?
ヒッポリト星人:もう、あなた達、光の国の住人相手に幻影など使う意味もない・・・・
私でなくとも予備軍の幼子でもあなたなら倒せますね、くくくく・・・・
謎の声:・・・・げてっ・・・いさん・・・・・・・に・・・て・・・・・・・
A:ん?誰だ?
ヒッポリト星人:ほぉ・・・・。
Aよ、心配しなくとも直にわかることだ。
それより、そのままで私を倒せますか?
A:・・・・くっ・・・ならば・・・・・・!
テェェェェェェェイ!!
大きく左に振りかぶりL字に合わせた腕から得意のメタリウム光線を放った。
色彩豊かな光線は真っ直ぐにヒッポリト星人めがけて飛んだ。
この間合いならばよけられない・・・いや、よけるつもりがないのか、
虹色に輝く必殺の光線はヒッポリト星人に直撃した・・・・・かに見えた。
A:(よしっ・・・これなら・・・・・?!)
メタリウム光線が直撃した後の爆煙が晴れ、そこにいるはずのないヒッポリト星人が平然と立っていた。
ヒッポリト星人:なんです?この技は・・・・
こんなもの、バリアを張る意味もない・・・・・
今日は調子が悪いんですか?A
A:な、何を・・・・
ヒッポリト星人:まぁ、どっちでも結果は同じ。
あなた達はもう終わりです。
さぁ・・・・覚悟なさい!
初めて交戦の意思を明らかにしたヒッポリト星人に対し、
いつでも応戦できるスタイルで構えるA。
しかし、Aの予想に反して光線も打撃もこなかった。
特徴的な長い口がAの体に向き、そこからとてつもない風が巻き起こったのだった。
ヒッポリト星人と体格はほぼ同じであるA、しかし、その細身の口から吹き出す風にまるで抗うことが出来なかった。
A:な、なんだこれは・・・・・・
ヒッポリト星人:おや?おかしいですね・・・
私の先輩も地球を襲った時に使用しているそうですが・・・・
Aほどの巨体を吹き飛ばす風が出せるとは到底思えない細い口から出る風に、
Aは成すすべなくジリジリと後退を余儀なくされていた。
そう、ジリジリと・・・・死刑囚がゆっくりゆっくり階段を登り、
絞死刑になる場所に向かう様に・・・・