内なる地獄

(12)

 

 笑うヒッポリト星人の声に合わせカプセルも霞の様に消え、城に転送された。

 ウルトラ兄弟も捕まり、レオも80も、そしてウルトラの父さえも餌食になった。

光の国、いや、地球を含めた宇宙の中で誰がこの様な結果を予想しただろうか?

宇宙の平和を守るウルトラ一族の、それも警備隊の新人隊員ならばいざ知らず、

歴戦の勇者達がこうも簡単にやられ、モルモットに貶められているとは・・・・

 助けに来たはずのタロウとウルトラの父も、

兄弟達と同じようにヒッポリト星人の城に招かれていた。

 教え子だったメビウスからのウルトラサインに駆けつけ、まんまと罠にはまったタロウは

ウルトラの父ともメビウスとも違う場所に転送されていた。

そこは、ウルトラ兄弟の三男であるセブンがいる場所であった。

 

タロウ:セブン兄さんまで・・・・・

 

セブン:ま・・・・まさか・・・・・

    タロウなのか・・・・・・

 

タロウ:な、何故・・・こ、声が?・・・

    ブロンズ像にされているのではないのですか?

 

セブン:こ、これは違うんだ・・・

    私は今・・・・

 

ヒッポリト星人:彼の体はすでに原型をとどめてはいませんよ

 

タロウ:ど、どういうことだ!

 

セブン:・・・・・・・・・

 

ヒッポリト星人:彼とそっくりなブロンズ像の入れ物にいれられているだけで、

        もう体は原型などとっくにとどめていないのです

 

タロウ:くそっ・・・・兄さんを元に戻せっ!

 

ヒッポリト星人:安心してください、あなたも同じ様にしてあげます、

        兄さんと同じにね

 

セブン:?!や、やめろ!

    俺だけで十分じゃないか・・・・・

    タロウ・・・は・・・・・・たす・・・け・・・・・・・・

 

タロウ:?どうしたんです?兄さん・・・・?

 

ヒッポリト星人:心配しなくても死にたいと願ったところで死ねないようになっています。

        あなたもそうなるんです、喜んでください

 

 あの悪魔の操作盤をいじい、タロウのカプセルもまた、

セブンをここまで追い詰めた様に動き始めた。

機械から発する音は目の前の光の国の戦士を再び餌食に出来る喜びを表現する様に

聞こえてきた。

そして、また、あの暗殺者がタロウの背後に忍び寄っていた。

 

タロウ:な、なんだこれは・・・・・・

    う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

 部屋にはタロウの悲鳴が木霊し、その横には同じようなポーズをとった

タロウのブロンズ像が置いてある・・・・

もちろんプロテクターだけは生身のままで。

 

セブン:・・・・も、もう・・・・・

    助からないのか・・・・・・・

 

 密かに期待をしていたタロウさえも捕まり、自分と同じ目にあっているのを目の当たりにし、

言葉のままにセブンの心は絶望に染まった。

自分の、いや自分達の未来は拷問ともとれる毎日に支配され、

そして目の前にいるのに殴ることさえ出来ない宿敵の繁栄に貢献してしまうのだ・・・・。

 

ヒッポリト星人:では、二人仲良くエネルギーを絞られていてください・・・

        私はまだ仕事がありますのでね・・・・

        くくく・・・・・

 

 永久に止むことのないエネルギーの搾取、そして絶頂と回復を繰り返し、

体は常に興奮状態のまま・・・・

自分達のエネルギーが最も嫌った悪に貢献している事実にうちひしがれることとなった

セブンとタロウ。

彼らの置かれた部屋から出ると、廊下にはペットであるジャックが立っていた。

 

ヒッポリト星人:待たせたねぇジャック。

        君の兄さんと弟にエネルギー搾取の装置をつけてきたんだ

 

ジャック:・・・・兄さん・・・?

     ・・・・・弟・・・・・?

 

ヒッポリト星人:セブンとタロウは死ぬことも逃げることも出来ずに

        永久にあの部屋でエネルギーを絞られ続けるのさ・・・・

 

ジャック:・・・・・・・・・・・

 

 ヒッポリト星人に施された精神操作により自分の兄弟達のことにもまるで反応できないジャック。

相変わらず後ろでに両手をまとめられ、足かせと首輪をつけ、

犬のように引かれて付き従うしかなかった。

 餌だと言われヒッポリトから出されるものに含まれた薬剤の効果で

精神を少しずつ破壊され、物言わぬ奴隷にまで落されたジャック。

そして、ヒッポリト星人の後について歩き、先ほどとは違う部屋に到達した。

 

ヒッポリト星人:お前は、ここで待っていなさい

 

ジャック:・・・・わかりました・・・・・・・