人質(9)

 
鉄十字団の罠に落ち、体力を使い果たしたスパイダーマンは、

スパイダーブレスレットと自分自身を懸けたニンダーとの闘いで、

人質を助けるためとはいえ降参し、勝負に敗れてしまった。

「約束だ、スパイダーブレスレットをいただこうか!」

冷徹なまでのモンスター教授の言葉がスパイダーマンを貫いた。

 

「・・・・・」

(くそっ ブレスレットを渡したら、

 GP-7、マーベラー、スパイダーネット、スパイダーストリングス

 俺はスパイダーマンとしての全てを失ってしまう・・・・)

葛藤に苦しむスパイダーマンはただ立ちつくすだけだった。

両手をきつく握りしめ、

左手に嵌めたスパイダーブレスレットを霞む目で見つめるスパイダーマン。

 

「どうした? 正義のヒーロー、スパイダーマンともあろう者が約束を守らないのか?

 早くブレスレットを渡すのだよ。

 そして、鉄十字団の奴隷となるのだ!

 たった一人のニンダーすら倒せなかった君は、

 人質を助けるためには、ブレスレットを渡すしかないのだ!」

そう言いながら、ひとみが閉じこめられた水槽を指さすモンスター教授。

先程まで、水が満たされた水槽は溺れるひとみを容赦なく苦しめていたが、

スパイダーマンが鉄十字団の軍門に下ることを承諾したことにより、

今では水が引き始めていた。

 

己の力ではどうしようもないことを思い知らされ、

屈辱的な現実を突きつけられたスパイダーマンは、

自らの意志の力すら失われていくのを感じていた。

固く握りしめた拳からも力が抜けていく。

「ぅぅ・・・ くそっ」

(悔しいが、モンスター教授の言うとおりだ。

 俺には他にどうすることも出来ないんだ・・)

体力を消耗しスパイダーマンには、

朦朧とした意識の中、正常な思考もままならなかった。

ニンダーに負け、自ら屈服したという事実が、

敗北を受け入れ、最後に残った装備を明け渡すという敵の要求に従わなくてはならない

という思考のみを明確に意識させた。

右手をゆっくりとスパイダーブレスレットに重ねるスパイダーマン。

カチャリ

ブレスレットを緩める金属音が響いた。

 

左手に嵌めていた銀色に輝くブレスレット、

スパイダーパワーの全てとも言える正義のブレスレットが、

スパイダーマン本人によって外された。

全てを失った瞬間だった。

 

アマゾネスは、スパイダーマンの手からブレスレットを奪い取ると、

ニヤリと微笑みながらモンスター教授に恭しく差し出した。

「ワッハッハッ

 とうとうスパイダーマンの全てを奪い取ったぞ!!」

勝ち誇ったモンスター教授が邪悪な笑みと共に歓声を上げた。

 

湧き起こる怒りに再び両手の拳を握りしめ、体を戦慄かせるスパイダーマン。

(あの装備を使うことが出来るのは、スパイダー星人の血を引く俺だけだ。

 全てを奪われてしまったが、奴らには使うことが出来ないはず・・

 必ず取り返してやる!)

そう、自らに誓い、朦朧とする意識の中、闘志を奮い起こすスパイダーマンだった。

 

だが、ヒーローの胸の内の決意を嘲るように、モンスター教授が言い放った。

「それでは、鉄十字団の奴隷となった証拠を見せてもらおう」

(くそぉ・・・ 何をさせようと言うんだ・・)

全てを奪われたスパイダーマンは、力無くモンスター教授の顔を見つめるしかなかった。

 

敵の首領が言葉を続けた。

「自慰したまえ! ここにいる全員の見ている前でだ!」

信じられない要求を突きつけられたスパイダーマン。

屈辱的な言葉に唖然とする。

「なに!? そ、そんなことが出来るか!」

スパイダーマンのヒーローとしての自尊心がそう叫ばせた。

完全に消耗した肉体同様、意志すらも麻痺しつつあったが、

それでもなおモンスター教授からの屈辱的な指示に反発していた。

 

畳み掛けるようにアマゾネスが言う。

「お前はもう鉄十字団の奴隷なのよ。

 奴隷となった証として、我々全員の前で淫乱で情けないヒーローの姿を晒すのだ!

 もし、やらなければ人質の命は無いわ!」

「ブレスレットを渡せば人質は解放すると言ったはずだ!」

「人質の命は助けると言ったのだ。

 もし、言う通りにしなければ、人質を処刑する」

「卑怯だぞ!」

「お前が我々の奴隷になった証を見せさえすれば人質を解放するわ」

 

(く、くっそ〜)

反抗の気持ちが高まるものの、

ギブアップし鉄十字団の奴隷になると宣言したヒーローにできることは、

やり場のない怒りを内に秘め、ただ体を戦慄かせるだけだった。

たった今、全てを懸けて命の危険を救ったはずの佐久間ひとみを、

未だ人質として取られ、手も足も出せないスパイダーマンは、

屈辱に震える全身を抑えながら、無言で自らの股間に手をやった。

肉棒と陰嚢をピッチリと包む薄く青いコスチューム越しに、

竿を扱き、亀頭を擦り始めた。

 

薄暗い部屋の中、取り囲むモンスター教授やアマゾネス、ニンダー達の中心で、

スポットライトに照らされたスパイダーマンの赤と青のコスチュームは

普段の様に鮮やかに彩られていた。

ただいつもと違うのは、そのコスチュームに身を包んだ正義のヒーローが

鉄十字団達を蹴散らすのではなく、

敵の群れの中央で自らの股間を弄んでいることだった。

 

周囲を敵に囲まれたこの様な緊迫すべき状況下では、

勃起することなどあり得ないはずだった。

だが、意外にも簡単に股間は熱く充血し始め、

自分の体の異変にスパイダーマンは驚きを隠しきれなかった。

(何故だ? 体が・・反応してしまう・・・)

体力を使い果たした上に全てを奪われ、肉体的、精神的に

限界まで追いつめられたスパイダーマンに僅かに残存する生命力が、

種族保存本能を勃起という形で発現させているのだった。

 

今まで闘ってきた鉄十字団の首領、幹部のみならず、

下級の戦闘員であるニンダー達を前にして、

自ら肉棒を扱かされた挙げ句、勃起してしまった屈辱的な状況に驚くと共に、

あまりの恥辱に打ちのめされるスパイダーマンだった。

(くそ・・堪えるんだ・・・)

「ハッハッハッ

 口では嫌がっていながら、すぐに勃ったではないか?

 正義のスパイダーマンといえども所詮は単なる男。

 なんと淫乱なヒーローだ!」

甘んじて屈辱を受け入れたスパイダーマンに、モンスター教授が追い打ちをかける。

モンスター教授の言葉と共に、

部屋中のニンダー達の間からも押し殺したような嘲りの笑い声が漏れる。

 

大勢の敵が嘲笑いながら注目する中、

鉄十字団の言いなりになり、自らの股間を撫で扱きながらも、

必死にモンスター教授を睨みつけるスパイダーマン。

マスクの下、拓也の瞳には反抗の色が浮かんでいた。

(やつらの思い通りなどなってたまるか!)

股間へ集中していく血流を、意志の力で懸命に抑えようとする。

 

「見るがいい。この情けない姿を!」

モンスター教授の背後の巨大なモニター画面が9分割され、

分割されたそれぞれにスパイダーマンがニンダーと闘い、

苦しみ、敗れ、ギブアップする姿が映し出された。

鮮烈な記憶の中、苦い敗北が肉体の芯から込み上げてくる。

更に、モニターには、モンスター教授の指令で勃起した自らの肉棒を扱く様子、

屈辱的な姿が様々な角度から撮影された映像が投影された。

疲労し、恥辱で押しつぶされそうな意識に、大量のイメージが流れ込み、

僅かばかりの反抗の意志も打ち砕かれていく。

 

(うっ・・ くぅぅ・・・)

自らの屈辱的な映像を目にしたスパイダーマンは、

苦痛の記憶と恥辱に目を背けたくなる一方で、心にわき起こる劣情に戸惑っていた。

その異常な感情により、スパイダーマンの股間は一段と激しくいきり立ったのだ。

強制されて、己の股間を扱かされたことで勃起し始めていたとはいえ、

肉棒は未だ相応の大きさには至っていなかった。

ところが、モンスター教授に示された屈辱的な映像を目にしたとたんに、

その映像が焼き付いたように脳裏から離れず、常軌を逸した感覚がわき起こり、

股間の勃起に拍車がかかり、肉棒自体が蠢くのだった。

 

困惑しながらも、たちまち限界まで勃起してしまったスパイダーマン。

光沢のある青い股間には、コスチュームの上から肉棒が、

カリの括れまでもはっきりと分かるまでに最大勃起していた。

(な、なぜだ・・ 一体どうして・・・)

その疑問に答えは無かった。