巨大な箱庭 

 

〜  7  〜

 

 睡眠よりも先に傷の手当て、体の洗浄を考えた。

もちろん、睡眠がしっかりとされているのならばその選択もいいのかもしれない。

この星でのサバイバルに疲れ果てていた。

今考えると、休憩ではなく「終わりたかった」のかもしれない。

 ほどなくして、進行方向に水の塊の群れを見つけた。

この星のものは何でも巨大になってるので目の前にある水の玉は

草や木から落ちた雫であると疑うことをしなかった。

疑う余裕がなかったのかもしれない。

湖ほどのものではないので魚に襲われる心配もない、

そう安心して数ある水の玉のうち一番近いものの中にダイブしたのだ。

 

ヌルッ ジャポン

 

 スーパーマンが飛び込んだ水の玉は、本来の水とは違い少々粘性がある気がした。

しかし、自らの体が先ほどまで生ゴムまみれのなかに居たのを考えると気になるものでもなかった。

それよりも、消化液や何か怪しげなものではない液体に身をゆだねる開放感に

心奪われてしまっていたのである。

 事実、液体に入ってから体に染み付いた白い溶液は綺麗に落ちていったのだ。

そこだけならば体の洗浄が出来たのでよかったのだが・・・・・

 

スーパーマン:・・・ん?

       ・・・・な、なんだ

       ・・・・・粘り気が

       ・・・・・出てきたような・・・・・

 

 体の洗浄も終え、水の玉から出ようと思った矢先、体を動かそうとした彼の体を水が邪魔をするのだ。

ダイブした時の数倍粘性があり、ゼラチンに封入でもされた様に体が思うように動かないのだ。

 しかし、今回は怪鳥の時のように甘くはなかった様だ・・・・

 

スーパーマン:・・・?!

       ・・・ま、マントが・・・・スーツまで・・・・・

 

 今度は泡を立てながらスーパーマンの着衣が溶けているのだ。

自慢の赤いマントもブーツもビキニも、そして体を覆う青いスーツも全て例外なく泡だって溶けている。

パニックになり体を動かそうにも粘性の高い液体のせいでまるで動かない。

 しかし、どういうわけか体は一切溶ける様子もなく、溶けるのは着衣のみであった。

しかし、地球のどんな物質でも切ることも溶かすことも、燃やすことさえ出来ない彼の着衣を

一瞬にして溶かす溶液は彼にとって十分な脅威であった。

 程なくして泡が止まり、スーパーマンは完全な裸体を晒すこととなる。

泡が止んで間もなくだった、彼が何に飛び込んだのかがわかる瞬間が来た。

 

スーパーマン:ま、まさか・・・この水は・・・・・・

 

 彼が湿地に落ちた雫だとばかり思い込んでいた水の玉はそんな素敵なものではなかった。

周りの草が動き出し本性を表したのだ。

草が彼の封入されている水玉に近づき枝分かれした草先で優しく包むと、

まるで手で水晶を持っている様に草の上に載せられて転がり落ちないように草が

水玉を包み込み出した。

そして周りの水玉も全て回収され草は一箇所に向かって動いていく。

その中心にあったのは巨大な茎を背中に生やした甲虫だったのだ。

地球で言う冬虫夏草がいた。

そして自らが飛び込んだ水玉は食虫植物の用意した粘液だったのだ。

この冬虫夏草は背中に食虫植物を生やした獰猛なものだった。

 

スーパーマン:な、なんてことだ・・・・・

 

 自分が置かれた状況に愕然とするスーパーマン。

地球でも食虫植物に一度捕まった後、その虫が逃げ出すことが出来るなんて話は聞いたことがない。

いや、この状況に限らず、この星に落とされてから一度して逃げ出せたことなどなかった。

 木の実をたくさんつけた木の様に水玉をぶら下げたこの虫は水玉を抱え込む草から、

粘液の中に捕らえた獲物のエネルギーを吸い取る様だ。

周りを見ると茎や他の草には何かの生き物の白骨がぶら下がっていたりする。

 彼の目に映った被害者の光景はすぐに自分の未来に置き換わった。

草が少し揺れたかと思うと、粘液が急激にスーパーマンの生体エネルギーを吸収し始めたのだ。

 

スーパーマン:・・・・こ、この・・・ままで・・・は・・・・・

       死・・・んで・・・しま・・・う・・・・・

 

 エネルギーをどんどん吸い取られ、何一つ動かせないところまで追い込まれてしまった。

指先どころか、瞼も動かすことが出来ない、

かろうじて生きているだけの肉の塊になりさがったのである。

 

グワァァァァァァァァァァァァァァ

 

 冬虫夏草の本体が一度唸ったかと思うと、スーパーマンの水玉を支える草がエネルギーの吸収を止めた。

どうやら、この虫は水玉の中にいるのが普通の生き物ではなく

超人であることに気がついてしまったのだ。

そして、通常ならば生きることさえも出来ないほどにエネルギーを吸収してまた罠を張るのだが、

今回はどうやら特別待遇でもてなしてくれる様だった。

 茎に生えるたくさんの草が彼の閉じ込められている水玉に集まり出したのだ。

まず、太く丈夫そうな茎がスーパーマンの背中を通り頭の後ろまで進んだ。

そしてその茎から何本か枝分かれした草がまずは両足を辛め取り出したのだ。

足の指先からするすると草が巻きつき、かかと、くるぶし、足首、すねを包んだ状態で

太い草の後ろに足を引っ張り込んだ。この時点で彼の両足は膝下までを草で包まれ両足を

茎の後ろで一まとめにくくられているのだ。

 足の次は腕の順番らしく、同じような処置が施された。

指先から手のひら、手首、二の腕まで来ると肩の手前までを草で包み込み

両腕を茎の後ろに引っ張り一まとめにした。

ちょうど腰の辺りでまとめられている。

両腕、両足は優しく草に包まれているが、決して拘束を破ることは出来ず、微動だにしない。

四肢を太い茎にくくられ、エネルギーが戻っても動くことは出来ないだろう状態にされてしまった。

 今度は蛇の様にクネクネ動く草がスーパーマンの股間に迫る。

無防備の股間にたどり着くと竿を丁寧に包み込み他の葉でビキニを穿かせた様に股間を覆っていく。

 

スーパーマン:・・・な・・・・にを

       ・・・・・する・・・・・つ・・・もり・・・・・・

 

 意識が途絶えそうな中、自分の体に起こることを目にし驚きを隠せないスーパーマン。

 そんなことはお構いなしに草はどんどん処置を続けていく。

首の後ろの草が茎から分かれた草で首をしっかり茎に固定した。

 そして同じように茎から生えた草で鼻と口を残し顔の上半分、頭部を包み込んでしまった。

ここだけを見ると緑色のアイマスクか目出し帽でも被っている様に見える。

 顔を覆った後は、脇の下からスルスルと草が伸び、彼の乳首部分を覆い出したのだ。

 スーパーマンを覆う葉や絡みつく草は密着しており、被さったと言うよりは包まれたと

表現する方がいいのかもしれない。

処置を施されている本人の感覚としては股間にはピッチピチのビキニを、

乳首には吸盤を、顔にはビニールを張られた様な感覚に襲われているに違いない。

 一連の処置が終わると、茎自体が動き出した。甲虫の背中から生える巨大な茎の側まで行くと、

その影が当たっている部分がめり込みだし、穴を作ったのだ。

そしてまるで墓穴に遺体を収めるように茎がそこにはまっていった。

茎が収まると蓋をする様に巨大な茎の繊維が再構成されだした。

そしてスーパーマンの体は茎に収められ顔だけを出すにいたったのである。

外から見ると顔だけを出している様に見え、体に色々な処置が施されているなどとは

誰も思わない状態だった。

しかし、その根本の幹に収められた体にはしっかりと拘束がなされたままである。

 完全に繊維が再構成されると、残されていた口を茎の繊維が覆ってしまった。

鼻だけは未処理のままなのでかろうじて呼吸は出来る。

しかし、エネルギーがないのであまり影響はないのだろうが、四肢は少しも動かす余裕がなく、

体を首と股間と乳首で固定されている。

そして、その固定された茎ごと穴に収められ顔だけが外に出ている。

しかし目も耳も口も塞がれ延命のために鼻が自由になっているのだった。

 甲虫が何故、彼をこんな状態にしたのかはすぐにわかった。

今までは包み込むだけで何もしなかった草が動き始めたのだ。

乳首に張り付いた草は適度な刺激と水気を与え続けた。

草が適度に湿っているので、生き物に嘗め回されている様な錯覚を覚えるほどの刺激だった。

 股間に張り付いた草も竿を優しく扱き始めた。

 

スーパーマン:・・・はぁ・・・はぁ・・・あぐっ・・・・がっ・・・・・・

 

 エネルギーがなく、口を塞がれているのでまともな喘ぎ声が上がらないが、

確実に体が快楽に満たされていった。

冷酷無比な甲虫はエネルギーの尽きた超人から種の採取を行ったのだ。

それも単調に、絶頂を迎えようとも関係なく単調に。

口を覆う繊維から体のエネルギーを全て性に回す様にしてしまう物質を絶えず注がれ、

体の回復はしないが種は随時吐き出す様に仕向けられてしまった。

 体を完全な種製造機械にされた時、どこからともなくテレパシーが聞こえてきた。

 

ダークサイド:・・・パーマン・・・・スーパーマン・・・

       聞こえるか?スーパーマン

 

スーパーマン:(ダー・・ク・・サイ・・・ド・・・・か・・・・・)

 

ダークサイド:哀れだな、スーパーマン。助けてやろうか?

        ふはははははははは

 

スーパーマン:(誰が・・・お前・・な・・・んかに・・・・・)

 

ダークサイド:そうか、残念だな。

       お前は一生死ぬこともなくそこで種を出し続けていればいい。

       お前はそのうち完全に体を同化され、死ぬことも、逃げることも出来ず、

       意識を残されたまま種を搾り取られるのだ、永遠に。

       そいつはその星で一番の生命力を持っている。

       蜘蛛の時の様な偶然は絶対に起こりえない。

 

スーパーマン:(・・・く・・・そっ・・・・・・)

 

ダークサイド:では、さらばだ・・・・

 

スーパーマン:(まっ・・・待て・・・・・・)

 

ダークサイド:何だね?スーパーマン

 

スーパーマン:(た、助けて・・・・くれ・・・・・)

 

ダークサイド:聞こえないよ、正義の味方、スーパーマン

 

スーパーマン:(助けて・・・・下さい・・・・ダークサイド・・・・様・・・・・)

 

ダークサイド:ふははははははははは・・・・

       ついに屈服しおったわ、この虫けらが・・・

       では望みをかなえてやろう

 

 ダークサイドの高笑いの後、冬中夏草に取り込まれていたスーパーマンの体が光だし、

一瞬にしてワープした。

この星に飛ばされる前に裁判所で起きたのと同じように・・・・。