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トランクスの手から繰り出された緑の球体は一直線に悟空に向かって飛んできた。
速度はさほど速くはないが、威力のほどは計り知れない。
悟空は両腕をクロスして防御した。
アメミット:残念でした。その技はかわさないと駄目なんですよ。
直撃もガードも同じ結果です。
アメミットの言葉の通りだった。
悟空の腕に接触すると球体は急激に広がり悟空を包み込んだ。
アメミットの言葉どおり、決して受けてはいけなかったのだ。
トランクスの技を悟空が受けるのを待ち構えていた様に、
悟天が悟空の閉じ込められている球体の上に飛び乗り曲芸を始めた。
普通のサーカスで見るような玉乗りを始めたのだ。
ゴロゴロと悟空の閉じ込められた球を転がし移動し始めた悟天。
サイヤ人の力を封じられている悟空にはトランクスの作った球体から抜け出す術は
もちろんなかった。
観客のいないサーカスのステージを一周し終わると、次に悟天は手のひらを球体にあてた。
どういう手品なのか、それともアメミットによって得た力なのかわからない。
わかっているのは技をよけるスペースはどこにもないということだけだった。
球体はみるみるうちに怪しげな液体に満たされていった。
その液体の効果は直ぐに発揮された。
悟空ではなく、悟空の来ている胴着を瞬く間に溶かし、
悟空を生まれたままの姿に変えたのだった。
悟空が自分の姿に驚いていると、いつの間にか悟天と
トランクスがアメミットの後ろに戻り直立の姿勢を保っていた。
悟空がそれに気が着いたその瞬間、トランクスが投げつけた1本のナイフが球体を破った。
バシャァァァァァァァァァァァァ
球体に満たされていた液体は床に広がり、悟空は裸体をアメミットに晒す羽目になった。
アメミット:あなたには代わりの服を用意しています。
なじみがあるでしょ?
アメミットの合図で悟空が地面からいつのまにか発生した煙にまみれると、
体にフィットした群青色のボディスーツが着せられていた。
胴着になれている悟空には若干動きにくささえ感じるほどに体にフィットしたそのスーツ。
スーツから出ているのは足首から先、手首から先、顔のみ。
それ以外は窮屈を感じるほどに締め付けられている状態だった。
鍛え上げた筋肉も、そして胸板にある乳首、股間なども外から見て
どの様な状況にあるのかが簡単にわかるほどにくっきりしているのだ。
そう、それはベジータが好んで装着しているものだった。
しかし、気のせいか、ベジータが着ている時に比べると締め付けがきつい様な気がした。
そして、スーツを着せられて気が着いたことだがあった。
普段悟空と同じ胴着を着ている悟飯も同様にボディスーツを着さられた状態で
銅像に変えられていたのだった。
今、自分は悟飯やベジータと同じ道を着実に歩んでいる、その事実に悟空は息を飲んだ。
悟空:おめぇの目的はなんだ!!地球の征服か?
アメミット:征服?違いますよ、あなた達の様な素晴らしい方を
コレクションするために来ました。
あなたをコレクションしたらこの星ともおさらばです。
悟空:なら、なんで悟天やトランクスにあんなことをさせる!
おめぇ、強いんだろう?
ベジータや悟飯が勝てないくらいに
アメミット:えぇ強いですとも。あなたもすぐに殺せます。
しかし、だめなんです。
それじゃ・・・・もっと楽しんでからコレクションにしないとね。
悟空:き、貴様ぁぁぁぁ・・・・
アメミット:怒っても何してもあなたはもう逃げられないんです。
怒りに震える悟空はアメミットが手にしているガラス玉に気が着いていなかった。
アメミット:せっかくの魂に傷がつくと大変だ。大事にしないと
悟空:魂?
アメミット:一時的にここに保管します。大丈夫痛くもなんともないですから
アメミットの手にあるガラス玉が怪しく光ると悟空の胸元から
白いエネルギー体が抜け出しガラス玉に入っていった。
アメミット:ほら、なんともないでしょう?
悟空:お、おめぇ・・・何・・・した・・・・?
アメミット:あなたの魂をここに封じ込めました。
これからする処理で傷がつくとさっきのベジータさん達みたいに
お話できなくなりますよ
悟空:く・・・そ・・・・・
魂を抜かれた悟空は言わば生きた屍も同然。
意識もはっきりとし体の機能も特に問題はない。
ただ、魂とつながるもの、そう、悟空の心にある正義の心が今は失われている状態だった。
もとより頭で考えて戦うのタイプではない悟空だが、
魂が抜かれよりいっそう攻撃的にならざるを得ない状態に追い込まれたのだった。
アメミット:さぁどうしたのです?
私を倒さないと困るのでしょう?
悟空:わ、わかってる!!
正義の心で、というよりも闘牛の様にアメミットに向かい襲い掛かる悟空。
いつもの冷静な悟空ではなかった。
攻撃は簡単にアメミットにかわされ、何一つかすりもしない。
冷静さを欠いた悟空に更なる異変が生じた。
アメミットとの戦いは白熱するものでもなく、長時間続いたわけでもない。
しかし、悟空の体はまるで何時間も戦っていた様に汗でびしょぬれだったのだ。
息も上がり、筋肉を強調する様なボディスーツが余計にいやらしさを増していた。
鍛えた筋肉の胸板に、あご下ギリギリまでフィットしているスーツに、
太い太ももにと汗が流れ、輝いていた。
悟空:き、貴様ぁ・・・・何を・・・はぁはぁ・・・・した・・・・
アメミット:意外と気が着くのが早かったですね。
魂を抜かれたあなたの体は急速に体を維持するエネルギーを失っているんです。
悟空:な、何っ?!
アメミット:そう、早く私を倒さないとあなたの体は崩壊してしまうんです、ぼろぼろにね。
悟空:くそっ・・・はぁ・・・・そ、そう・・・言われる・・・と・・・息が・・・苦しい・・・・・
アメミット:さぁ・・どうします?素直にコレクションに加わりますか?
そうすれば苦しまずに済みますよ。
悟空:誰が・・・貴様・・・なん・・・かの・・コレクション・・・なんかに・・なるか・・・・・
息苦しさを残したまま、アメミットと対峙した。
しかし、動きにキレはなく、冷静さを失い闘争心の塊の様になっていた。体は動かない、
しかしそれを抑える冷静な思考はない。
悪循環にはめられているのだった。
平常心を保った悟空であれば、サイヤ人の力を封じられていても
格闘戦でアメミットに苦戦するなどありえないことだった。
しかし、ベジータも悟飯もそして悟空も例外ではなくまるで歯が立たない。
いや、歯が立たないのではなく一撃も当たるどころかかすりもしないのだ。
アメミットが楽しそうに攻撃をかわしている、その僅かな時間でさえも
自由に動けない悟空には長い長い時間に感じた。