第3話

 

 兄の復讐・・・そのためだけにタイガーマスクを工場跡地の特殊なリングへと誘ったタランチュラ。

 言いがかり!と言いつつも子供の命を守るためにその勝負を受けて立つタイガーマスク。

 どちらかが果てるまで・・・そのルールのもと審判も観客もいないデスマッチが始まった。
 
意気込んだはいいものの、やはり地の利は相手にあった。

 以前のデビルスパイダー戦でもそうだったのだが、蜘蛛の巣状のリングでは

意識して足に力を込めていないとまともに立っていることすら大変だった。

まして、走ることなど出来るわけもなかった。
 
タランチュラ:どうした、タイガー・・・・動きが悪いぞ!

タイガーマスク:くっ・・・・調子にのるな!・・・

タランチュラ:・・・口だけは達者だなっ!

タイガーマスク:・・・ぐっ・・・・?!・・し、しまった・・・・
 
 側面のロープを使ってロケットの様にタイガーマスク目掛けて飛んでくるタランチュラ。

 その俊敏な攻撃をよけられるわけもなく、腹部に強烈な頭突きを喰らってしまうタイガー。

その攻撃の反動でバランスを崩し、歩いていた網目に足を捕られてしまったのだ。

 瞬く間に両足をリングの外にだし、股間で体を支える状態に陥ったのだ。

 全体重がタイガーの股間にかけられることとなってしまった・・・。
 
タランチュラ:おいおい・・・学習能力はないのかよっ!・・えぇっ?

タイガーマスク:くそっ・・・ぬ、抜けない・・・
 
 前回のリングでは蜘蛛の巣を形成する糸の部分には細工はなかったはずだが、

今回は特殊なオイルが染み込んでいるらしく、体が滑ってしまい抜け出すことが

以前よりも数倍難しくなっているのだった。

 以前のリングでさえも抜け出すことが出来ずに苦戦したタイガーが、

今回の蜘蛛の巣を攻略できるわけもなく、ゴソゴソと蠢くだけ・・・

脱出できる気配がまるでない。

 その間にも獲物を弄ぶような力の込められていないローキックがタランチュラから浴びせられ、

防御はするものの確実にダメージが蓄積していった。
 
タランチュラ:・・あぁぁあっ・・・期待はずれだ・・・

タイガーマスク:な、何を・・・はぁ・・はぁ・・・
 
タランチュラ:もう、息上がってるんじゃないかっ!こんな奴に兄貴は負けたのかよっ・・・

        頭にくるぜ!
 
 タランチュラは大きく飛び上がり半球状の天井部分の糸を手繰り寄せ、

ねじりながらタイガーの首にひっかけた。

 あれだけもがいても抜け出せなかった両足が、首にかけられたロープに引き上げられ、

そのままスルスルと引き抜かれていく。
 
タイガーマスク:・・・ぐっ・・・くる・・・し・・い・・・・

タランチュラ:ふははははは・・・苦しめ・・苦しめ・・・
 
 自らの重さで天井までは届かず、中間部分に首を吊った状態にされてしまうタイガー。

両手で必死に首にかかる糸を外そうと試みるが、全く外れる気配がない。息はつまり、焦るタイガー。

このままでは確実に意識を失い、敗北してしまう・・・。

 しかし、そのまま敗北させるほど復讐の鬼は優しくはなかった。

 壁面のロープを発射台に、空中にぶら下がるタイガーに四方八方から攻撃を加え続けた。

 ガスッ!ドスッ!

 よけることも、防ぐことも出来ずにぼろ雑巾の様に空中で体中を滅多打ちにされていくタイガー。

 今の彼に出来るのは、哀れに空中でもがき苦しみ、そして攻撃の反動で空中を

ブラブラと揺れるだけであった。
 
タランチュラ:・・・?!・・・・なるほど・・・そこが弱点かっ・・・

タイガー:・・・げ、限界・・・だっ・・・・意識が・・・保て・・ない・・・
 
 絞められ続けた首が限界に達し、口からは涎がこぼれつつあった。

 タランチュラはタイガーの意外な弱点を発見し、空中殺法を中止した。

 力なくぶら下がるタイガーの両太ももをしっかりと掴み、タイガーの体重に自分の体重を加えて

吊られている首の戒めを解除した。

 苦しむ敵を哀れんで行ったのではない・・・

タイガーが味わう地獄がここから始まっただけだったのだ。

ボスッ!

 そのまま落下する二人。

両足を抱えられ力なく直立の姿勢のまま落下するタイガー、

そしてその人形の様なタイガーの足をかかえ、力なく開かれた両足の間に膝を入れた状態で

マットに着地するタランチュラ・・・・。

観客のいない試合会場には鈍い音が1回、響き渡っていた。
 
タイガーマスク:うぐっ・・・・

タランチュラ:くっくっくっ・・・なんて顔してるんだ?・・・

       やめろよっ、テンション上がるだろう?えぇ、おいっ!
 
 それはリングに足をとられた時に股間でぶら下がる状態のまま攻撃を受け続けた時だった。

全体重を支えていた股間に知らず知らずにダメージが溜まっていたのだ。

 その事実をタランチュラは見逃さなかった。

サンドバックを相手にする様に空中でタイガーをタコ殴りにしている際、

偶然股間付近を殴った瞬間、タイガーの体が他の攻撃の時よりもビクついたのに

リングの主は見逃さなかった。

 本当の蜘蛛の様に、股間を押さえ蜘蛛の巣リングを転がるタイガーに覆いかぶさり、

巣にかかった獲物を糸に絡める蜘蛛のごとくタイガーの首、両手首、両足をリングに絡め、

仰向けに大の字に拘束したタランチュラ。

 すぐさま球体の天井に届くかどうかという高さまで飛び上がり、

膝を突き出してタイガーに襲い掛かる。
 
タイガーマスク:は、外れない・・・?!・・・・や、やめろ・・・・
 
 ボスッ!
 
タイガーマスク:がぁぁああああああああ・・・・
 
 タイガーの弱点となってしまった股間に容赦なく膝を入れるタランチュラ。

 痛々しい鈍痛に悶えるタイガー。

 しかし、拘束されていた部分が衝撃で外れ空中に体を浮かべることになり、

またもや無防備に弱点を晒すことを余儀なくされてしまった獲物・・・。

 このリングの上ではタランチュラの独壇場なのである・・・・

タイガーマスクに勝機はあるのだろうか?