吹雪の中で(2)

 

それからしばらくの間ヤプールの声は聞こえることはなかった。

 

  (ヤプールは何故フブギララの命と引き替えに俺の体の自由を奪ったのに

   何もしてこないのだ?)

 

エースが動かない体で必死に考えている間も吹雪はやまずにエースを包んでいった。

しかし、戦いの最初から降っている吹雪は普通の元は違っていた。

地面に落ちた雪がエースの体に集まってきているようだった。

エースの足はおろか、地面についてしまった膝も雪がまとわりつき白く変えられていた。

  (なっ・・なんだ、この雪は・・)

エースが雪に疑問を持った瞬間、吹雪がもの凄い勢いでエースを襲った。

エースの体がその瞬間に完全に雪で覆われてしまった。

しかし、雪で覆われ白くなってしまったが徐々に雪は白から透明に変化しエースの体を

何かビニールが覆ったような形になった。

 

  雪がおかしいことに気がついたご褒美に苦しむ時間を減らしてあげたんだ、感謝してくれよ。

  この雪は察しの通り、普通の雪ではない。

  お前の先輩のウルトラマンが苦戦したプリズ魔の体と同じ組成をしている。

  この意味がわかるかな?

 

光が好物であるプリズ魔は光の使者であるウルトラ一族にとっては天敵である。

これと組成が同じ雪に全身を覆われているエースは意識あるまま棺桶にいれられたも同然であった。

エースを待っているのは徐々にエネルギーを吸われて死ぬを待つだけである。

 

  安心しろ、体の中までくまなくお前を吸収してくれるだろうよ

  エネルギーをたっぷり吸った雪を回収して我らがヤプールの繁栄に役だててやる、光栄に思え

 

ヤプールの声が響くと、エースは地面に現れた異次元の穴に沈み始め、

あっという間に異次元に運び去られた。

 

エースはヤプールの策略にはまり固められ、

泥沼に沈むように異次元にひきづりこまれてしまった。

 

  (いっ・・意識がっ・・・ くそ、俺は・・ここで・・・殺されるのかっ・・)

 

異次元空間で片膝をつき動かない体で必死に自分の死期が迫ってることを考えていると、ヤプールが現れた

 

  エースよ、ようこそ私たちの国へ

  歓迎したいところだが、君の寿命は既に短いものとなった

  しかし、我々もここで君をそのまま殺すほど優しくはないのだよ

 

エースに言い放つとエースの体に紫色の光線を浴びせかけた。

見た目には何も変化は無かった。

 

  (かっ体の感覚が戻ってきた・・・)

 

エースの体はフブギララの命をかけた技で中から凍りづけにされていたために動かなかったが、

ヤプールの放った怪しい光線によって体の中が解凍されたようだ。

 

  なっ何故 こんな真似を・・・

 

体が自由になったばかりでエースはバランスを保つことが出来ずにそのままでいた。

 

  ドサッ!

 

その姿勢のままで体の感覚が完全に戻るのを待っていたが、

エースは体からエネルギーが抜けていくのを感じ姿勢を保っていられなかった。

 

  エースよ 忘れたのではあるまいな  

  お前の体はプリズ魔に包まれているのだぞ

  エネルギーは時間が経つ毎に抜けていくのだ

 

エースを包む透明なガラスのような物はウルトラ一族の体を構成している光を糧にして

生きている生物である。

 

  さぁ どうする、エース

  エネルギーはそんなにないだろう?

  俺も動けないエースを殺してもつまらぬ

  ここにプリズ魔を溶かす薬がある、使うかね?

 

地面に俯せになりヤプールを仰ぎ見る形になったエースにヤプールは悪魔のささやきをした。

 

  くそっ たしかにこのままでは死んでしまう

  しかし、ヤプールが本当の事を言ってるとも限らない・・・

 

エースは次第に奪われつつある残り少ないエネルギーのもと、

必死にヤプールの言葉について考えていた。

 

  コロンッ コロンッ カタッ

 

ヤプールはプリズ魔を溶かす薬だとエースにいったアンプルを地面に放り投げた。

 

  使うか使わないかはお前次第だ。

  自分で取りに行くのだな くっくっくっ