吹雪の中で(3)

 

エネルギーが残り少ないエースにはアンプルを立ち上がって取りに行くことは出来なかった。

地面を這って・・・

宿敵であるヤプールの見てる前を這って行かなければならなかった。

 

  他に何も、何もないのか・・・

 

必死に他の策を考えるが、この絶望的な状況を打破する策はなかった。

 

地球をヤプールから守ってきたヒーローは、宿敵の悪魔のささやきにのることを決意した。

 

  ズルッズルッ ズルッズルッ

 

次元空間にはエースが地面を這っている音が響いていた。

 

  まぁせいぜい頑張れよ、エース

  こんな素晴らしい光景が見られるとは思わなかったよ

  くっくっくっ

 

異次元空間にはいる幾人ものヤプールの前でエースは必死にアンプルに向かって地面を這っていた。

しかし、この間もプリズ魔によってエネルギーは奪われつつあり、

エースの体はどんどん自由を奪われていた。

エースの左足、右足、ふともも・・・

体の自由は次第にカラータイマーから遠い足下から奪われアンプルまで

もう少しのところで、完全に下半身の自由は奪われていた。

 

自由を奪われた下半身は色を失い、体に入る赤いラインも、

ウルトラ一族の特徴である銀色の体も全て灰色に変わり果てていた。

 

  ズルッズルッ ズルッ

 

体の自由を失いながらも何とかアンプルまで、エースは辿り着くことが出来た。

宿敵に惨めな姿をさらすという屈辱を味わいながら、必死にアンプルを手に入れた。

 

  よくやったよ、エース

  その不自由な体ではアンプルはかけられないだろ?

  私がかけてさしあげよう

 

エースの眼前のアンプルを拾い上げ、エースの足下にアンプルを振りかけた。

 

  しゅぅぅぅぅぅぅっ  

  うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ

 

エースの体にまとわりついたプリズ魔が溶けるはずだったアンプルの液体は

プリズ魔を溶かすことは無かった。

それどころか、プリズ魔の特徴を変化させる薬だったのか、

エースには全く解らなかったが、アンプルのかかったエースの足は煙をあげて溶け始めていた。

色を失ったエースの足はつま先から跡形もなく消し去られていた。

 

  これはこれは悪いことをした

  私は生まれつきの嘘つきでねぇ

  このアンプルはプリズ魔を活性化するものなんだよ

  君の体を分解してくれるんだ

 

エースは目の前に立つヤプールにすがった。

自分が分解され跡形もなく消される恐怖から宿敵にすがって命乞いをした。

 

  助けてくれ、頼む、助けて・・・

 

エースはプリズ魔に下半身を分解され、あっという間に体は

足の付け根から上しか残っていなかった。

命乞いをするエースにヤプールは微笑みながらもう一つのアンプルを出し、

カラータイマーに突き立てた。

 

  私は敵なんだよ、エース

  助けるはずもなかろう

  ご苦労だったね、ゆっくり休みたまえ、永遠にね

  くっくっくっ

 

カラータイマーに突き刺さったアンプルは徐々に中の薬液をエースの体に流していた。

エースの体はヤプールにすがったそのままで硬直し、下半身から、

そして、カラータイマーの中から分解された。

ヤプールの笑い声の響く中でエースは完全に分解されてしまった。