Robin in an exam room  

(8)

希望の扉 地獄の門

 

 敵の1人、ロビンをことごとく苦戦させる装置や薬品を作る担当のジョージと鬼ごっこをしている最中、

完全に追いつめられたロビンはあることに気がついた。

 運び込まれた部室への扉が開いているという事実に・・・・・。

 

ロビン (こ、これはチャンスだ・・・・・一度、あそこから逃げ出して体を元に・・・・)

 

 ロビンはあくまでジョージを探すふりをしながら少しずつ少しずつ扉に向かった。

 フクロウに襲われているネズミが森の出口を見つけた、

そんな気分でロビンは入口に少しずつ、少しずつ移動した。

 

ロビン (あと少し・・・・あと少し・・・・・・まだ奴にはばれていない・・・・・)

 

 ロビンが目の前の希望の扉にさしかかり、手を伸ばしたその瞬間!

 

ジョージ 本当に君には失望したよ!

 

ロビン 何?!

 

 扉に伸ばしたロビンの左手に赤いライトが横から当たり、指先からどんどん腕を硬化していった。

ライトから逃れようと手を下げるもライトは下がる腕を追いかけるように照らし続け、

腕を下げた状態で左肩までを全て固められてしまった。

 

ロビン あ、あぁ・・・・・う、腕が・・・・・

 

ジョージ 腕だけで済んだんだ、感謝してよね

 

ロビン ど、どういう・・・ことだ・・・・・

 

ジョージ 扉、不用心に開いているわけないじゃない・・・・・罠、あるでしょ、普通

 

ロビン ?!

 

ジョージ 君がそこを通ったら上から下からライトが照らされて一瞬で全身ガラス細工だよ

 

ロビン じゃ、じゃあ何故、止めたんだ・・・・・

 

ジョージ それじゃあさぁつまらないんだよ、僕が

 

ロビン どこまでも・・・俺をおもちゃにしやがって・・・・・・

 

ジョージ ほらほら、どうするの?もうろくに動けない、僕の場所もわからない、

     逃げられない。死んじゃうよ?

 

ロビン ま、まだわからないさ!

 

ジョージ じゃあ、もっと頑張ってよ・・・まぁ無理な注文かぁ・・・・・・

 

 ジョージはずっと実験したかった正義のヒーローが諦めたり逃避行動に出たことで

機嫌をそこねていた。

 一方で安易に逃げることを考えてしまったロビンは、その行動すらも予想済だった

事実に心が加速して浸食されていった。

 

スタンッ!

 

 ドアの前で立ちつくすロビンの背後で何かが飛び降りる音がした。

 

ロビン ?!

 

ジョージ もう飽きたよ、僕。君、終わりだ・・・・・・

 

 驚くロビンにスタスタと歩いて近づいてくるジョージ。

 手にしたライトを器用に照らしロビンの体を不動の置物に変えていく。

ロビンの目に映ったその姿はまるで悪魔の様だったに違いない。

 彼を追いつめた狩人はずっとロビンの頭上、天井に張り付いていたのだった。

そして、部屋中に設置した鏡を使いライトを反射させ獲物を襲っていた。

声を頼りにした時に近くにいるような気がしたロビンの感は正解だった。

しかし、この時点ではまだ高校生にそんな芸当が出来るわけはない、

そんな甘い考えがこの自体を招いた。

 歩きながら照らされるライトは正確にロビンの体を固めていく。

 右足の膝、左膝。さすがに知将だけあってまず身動きが出来ないように足を封じた。

 ガラス細工にされている状態では飛び込みではライトはよけられない。

体が砕けてしまう可能性があるからだ。

 次は自由なままの右腕に照準を定めた。

 その行為に気がついたロビンは必死に右腕を動かすが、左腕を固めた時とは逆に

右肩からライトを当てていった。

右肩、二の腕、肘、手首、指先。徐々に動く範囲を狭めていき、

溺れる者が助けを求める様に手が前に出た状態で右腕は動きを止めた。

 

ロビン ・・・う、うわぁぁぁぁ・・・・・く、来るな・・・・・・

 

ジョージ もう、終わりなんだよ、君は・・・・

     いや、違うなぁ、僕たちに捕まった時点でチェックメイトだったのさ。

 

 言葉に怒気が込められ、ライトを照らす動作は休むことはなかった。

 左足の膝下をライトで照らし、足先までを完全に固めた。

 両太ももを固め、そのまま股関節に上り詰めるかと思いきや、そのライトは股関節の少し手前で止まった。

 背後に回ると背中から下を完全に固めた。

 ロビンの体は股関節周辺、陰部、首から上だけを残し、他は完全に固まっていた。

ゲルの時とは違い、今度は体表が固まっているので生々しい蝋人形の様でさえあった。

 

ロビン ・・・・は、早く・・・・やるなら・・・やればいい!

 

ジョージ 君は選択権はないんだ、もう君は僕たちの決めたことに従うしかないんだ

 

 だいぶん怒りが納まってきたのか、言葉が穏やかになっていった。

 ライトで首を照らし、徐々に徐々にライトの焦点を高くしていき

ロビンの顎の当たりまでを固めていった。

 もう顔を動かすことすらできなくなった。

 

ジョージ 君はまだ殺さないよ、もらうものがあるからねぇ

 

ロビン も、もらうもの?

 

ジョージ 君から将来できるだろう正義のヒーローになる子供の元、そう種をもらうつもりさ

 

ロビン ?!

 

ジョージ どうせ、君、もう助からないんだ、僕が有効利用してあげるよ

 

ロビン 何をするつもりだ!

 

ジョージ 五月蠅いなぁ・・・・・

 

 驚きに声が大きくなったロビンに再び苛立ち、ライトでロビンの口を照らした。

 ライトが向けられる恐怖に反射的に目を閉じ、こわばり口を閉じたロビン。

 その閉じたところにライトが当てられ、閉じた状態で口の周りが固められ、言葉を発する事ができなくなってしまった。

 

ロビン んんっ・・・・ん!んん!

 

ジョージ あまり五月蠅いと、意識があるまま粉々にしちゃうよ・・・・・・

     液体、染みついてるの忘れたの?

 

ロビン ?!・・・・・・・・・・・

 

 無表情で放たれた凶悪な一言にロビンは絶句してしまった。