Robin in an exam room  

(7)

鬼ごっこ

 

 分厚いゲルに体を包まれ、解放された首から上以外は何一つ動かすことが出来ないロビン。

 そして、これからジョージのお楽しみタイムとして始まる恐怖の鬼ごっこ。

 拉致されたロビンの心は目の前の高校生達によって恐怖に歪められていった。

 自分を今押し固めているゲルを開発したジョージの持ってきた新しい薬剤。

特殊なライトを照らされると即座にガラスのようになる液体。

これを塗られて鬼ごっこをすると告げられ、無事に逃げられるかどうかで頭がいっぱいだった。

 

ジョージ じゃあ、準備するから少し休んでて

 

ロビン ?!ど、どういうことだ?

 

 ロビンの問いには答えようとはせずに背後の机にヘッドセットの様なものをとり、

ロビンの頭に装着した。

 そして、無言のままヘッドセットのスイッチを入れると緑色の明かりが

ロビンの目の前で灯りロビンの視覚に強烈に訴えかけた。

 

ジョージ よし・・・・成功した。じゃあ始めるかぁ・・・・・・ふぅ

 

 ライトが灯るとロビンは時折まばたきをする以外の行動は一切せず、

まるでマネキンにでもなったかのように動かなくなった。

 ジョージは動かないことを確認しロビンにバケツの水を頭からかけゲルを溶かした。

 今までロビンがどうやっても一向に砕けなかった強固なゲルはバケツの水がかかるや否や

瞬く間に溶け出しサーカス時代のユニフォームを着たロビンがそこには立っていた。

 ゲルの束縛が解けたにも関わらず、倒れるわけでもなくそこに直立したままだった。

 催眠装置によって身動きも思考も止められたロビンの体を一瞬長め、

再び床に目を落としジョージは作業に戻った。

 バケツに用意した例の液体を手元に引き寄せ、中に入っているハケでロビンの体に

液体を丁寧に塗り広げ始めた。

 緑色の薄いスーツが包む立派な足を、しまった尻を、割れた腹筋を、

男のシンボルである陰部をも獣が獲物を食べる前に舌で

舐めるようにハケで丁寧に丁寧に嘗め回した。

ハケのなぞった部分は液体がキラキラと光沢を帯び、サーカス時代のコスチュームが

薄い素材だったこともありイヤらしさが増していた。

 しかし、そんなロビンの体には目もくれずハケで液体を塗る作業を懸命にこなし、

胸板を染め、両腕も余すところなく液体で包み、指先も綺麗に液体で汚していった。

 残すは端正な顔だけである。

 ジョージは慎重に最後の仕上げを終えネルが食した顔も頭部も液体で汚し終えた。

 

ジョージ ロビン!目を閉じて30秒後に目を覚ますんだ。いいな

 

ロビン はい、ジョージ様

 

 催眠状態のロビンへ命令をし、瞼が閉じられたのを確認するとヘッドセットを静かに外した。

 そして、部屋からゆっくりと出て行くジョージ。

 目前で敵が出て行く、この異常事態にもロビンは目を覚ますことはなく、

いいつけ通りに30秒静かに待っていた。

 ジョージが仕事を終えるまでの時間はロビンにとってはどのくらいの時間が

流れたように感じられたのだろうか。

それとも、彼はこのまま目が覚めないことを祈っていたのだろうか。

 30秒の時間が経ち、ロビンは目を覚ました。

 

ロビン ・・・・お、俺はいったい・・・・・・・・

 

ジョージ おはよう。鬼ごっこ開始だ、僕もライトで君を襲うからせいぜい気をつけてくれ

 

ロビン ?!そ、そうだった・・・直ぐに捕まえてやるから待っていろ!

 

 今までの屈辱を返さんとばかりに意気込むロビン。

 ジョージは移動していないのか、音一つしない静まりかえった部屋。

 ロビンは出来るだけ平静を保つように心がけジョージの気配を探った。

 しかし、無情にも無音で迫るライトばかりはロビンにも避けようがなかった。

 まだジョージの居場所について何も手がかりがないロビンに悪魔のライトは容赦がなかった。

 

ロビン し、しまった・・・・・

 

 どこからともなく進んできた赤いライトがロビンの胸板を照らすと瞬時に胸板から

腹部にかけてが硬化しだした。

 赤い悪魔の光線は全てをガラスには変えず、胸元だけを固め消えていった。

 ロビンは固まってしまった自らの胸に手を当て悔しそうに光線の発射地点に全神経を注いだ。

 赤い悪魔はどこまでもコマドリを苦しめた。

 ライトの発射されたであろう方向にジョージはいる!

そう考え歩みを進めるロビンだったが、犯罪研究会の頭脳である彼はそこまで甘くはなかった。

 胸元を固めた時に放たれた場所とは正反対の位置から今度は背中を赤いライトが襲った。

真夜中の森でフクロウが狩りをするようにロビンは相手の位置を掴めずに襲われるだけであった。

 

ロビン ?!何で後ろから・・・・ぐっ・・・・・・・

 

ジョージ ほらほら、気をつけないとだんだん動けなくなるよ

 

ロビン 貴様!いい気になるなよ!

 

 強がってはみるものの、2回のライトで胴回りを固められてしまったロビン。

 さすがに硬化した時の締め付けで苦しみの声をあげてしまった。

 胴回りが動かせなくなったために、体をねじる動きが出来ない。

まるでロボットの様なぎこちない動きでジョージを捜すロビン。

 ロビンは焦っていた。

 さっきのジョージの声がまるで自分のすぐそばから発せられた様に聞こえたからだ。声を頼りに探そうにもまるで見つからない。

 いつまた体の一部を固められるかもしれない、今度はもしかしたら全部かもしれない。

そんな恐怖に心はすでにジョージの手中にあた。

 そして、怯えるコマドリを赤い悪魔は容赦なく襲った。

 ジョージを追いつめる上で決してやられてはいけない足をやられてしまったのだ。

 

ロビン くっ・・・・あ、足を・・・・

 

 ロビンの利き足である右足を赤い光はガラスに変え、膝下から足先までを固めてしまったのだ。

辛うじて膝は無事だったので右足をひきずっての歩行は可能だったが、

五体満足な高校生をこの状態で追いつめるのは不可能に近かった。

しかも、相手がどこにいるかもわからず、完全に狩られる側であるロビンにとっては

徐々に詰められている状態が加速しただけだった。

 捕食者に狙われた小動物のようにロビンの心は震え、怯えていた。

 

ジョージ 僕の場所、まだわかってないんだねぇ。君にはがっかりだよ

 

ロビン くっ・・・・貴様、覚えていろ!見つけたらただじゃおかない・・・?!