The Flash編

 

第2話:喪失

 

ギィィィィィ バタン

クルクルクル ガシャン ガチン

 フラッシュが地下への入り口に足を踏み入れた途端、

入り口は閉ざされ退路を断たれてしまった。

フラッシュ:くっ・・・用意がいいこと・・・

 薄暗い地下への階段を降りながら一歩ごとに不安を募らせていく深紅のヒーロー。
 

フラッシュ:やけに・・暑いな・・・ふぅぅぅぅ・・・・

 壁に手をつきながら階段を降りるフラッシュ・・・

その体は嫌な脂汗が流れていた。

 激しい格闘でもした後の様に呼吸が乱れ、体が暑い・・・・集中力が散漫になっていく。

 そんな歩みもようやく終わり、階段を降りきったフラッシュは休むこともせずに

通路を進んでいく・・・3人を助けるために。
 

フラッシュ:目が・・ぼやける・・・・

       ど、どうしたんだ・・・・


 ヨタヨタと通路を壁づたいに進んでいくフラッシュの体は巧妙に追い詰められていた。

 壁に手をついていないと歩くことも出来ないほどに体は衰弱しきっていた。

 そして、体に蓄積した疲労から目も霞み、注意力も散漫になっていた。

 今の彼に目の前にある罠を回避できるわけもなかった。

フラッシュ:・・・?!・・あうっ・・・・?!・・・・

ネチャ・・・ヌラァァァァ・・・

・・・ネチャネチャ・・・ネバァァァァ・・・・

 ずっと同じ様に続いていると思われた壁が一部分だけ窪んでいたことに

フラッシュは気がつかなかった。

 何度も何ども自由にならない体を支えるために壁に手をついていた・・・

そして、また手をつこうとしたその瞬間、そこにあるはずの壁が窪んでおり手をつくことが出来ずに

体のバランスを大きく崩してしまった。

 仕掛けられた罠はこれだけではなかった。

 フラッシュがここでバランスを崩すことを計算にいれてあったのか、

フラッシュを以前に苦戦したものが用意されていた。

 故意に窪んだその空間にはフラッシュのための液溜めが用意されていた。

 フラッシュのために用意された液溜め・・・・

そう、生ゴムの液溜めが用意されていたのだ。

 大人の体を沈めきるのにちょうどいい深さの生ゴムプールがそこにはあった・・

そして、狙い通りに獲物がそこへと落ち込んだ。
 

フラッシュ:んはっ・・・こ、これ・・・ぷはっ・・・生ゴ・・・んんっ・・・・

 深紅の獲物は瞬く間に白く染められ、自力では逃げることが出来ない悪魔の罠にかかってしまった。

 以前、地面にまかれた生ゴムに足を捕られ、トリックスターに捕獲されるという

経験があったフラッシュだったが、今回はそれを上回る窮地だった。

 落ち込んだプールには深さがあり、フラッシュが力いっぱい頭を持ち上げないと

体は全て生ゴムの中に沈んでしまうほどだった。

フラッシュ:ま・・むぐっ・・・まず・・・・い・・・・・

 疲労感も手伝って生ゴムから逃げ出すことは不可能だった。

 顔を必死に持ち上げようとするが、顔中に張り付く生ゴムがプールの中へと押し戻し、

頭を覆う生ゴムが沈めきろうと強力に顔を引き込んでいく。

 うつ伏せに生ゴムへと落ち込んだ状態で両手も持ち上げようと試みるが、

完全に生ゴムの中に沈んでいるため、液体から腕を出すことさえ出来ないでいた。

 つま先と膝で足を支えているため、何とか踵やふくらはぎ、

お尻は液体に沈みきることはないものの、薄く広がった生ゴムに覆われ、

液体から抜け出すことは出来ずにいた。

 ゴニョゴニョと白い液溜めで蠢く深紅の獲物。

 しかし、次第に体を動かす気力もなくなり顔を持ち上げることしか出来なくなってしまった。

フラッシュ:ふぅぅ・・・ふぅぅ・・・

      (指も・・動かない・・・俺はここで・・終わりなのか・・・・)

 最後まで持ち上げていた顔もついに液体に沈みこみ、

足も左右に開いてしまい生ゴムの液溜めに体の全てを包み込まれてしまった。

謎の声:頑張ったね・・フラッシュ・・・ふふふふふ・・・

 意識がなくなったフラッシュを生ゴムから引きずり出し、連行する謎の影。

 3人の姿を目にすることなくフラッシュもまた敵に拉致されてしまった。