スーパーマン編

 

第6話:実験体

 

 失踪した2人は敵のコレクションになっていた・・・・。

 その事実を掴み、2人を助けよう!そのためならば・・・

そう考えて敵の交換条件を飲んだスーパーマンだったが、

その思考さえも敵の予想通りだった。

 力を封じられ、超能力も使用不可能な状態へと追い詰められてしまった。

 2人を助けるどころか、自身も体の表面をブロンズでコーティングされてしまい、

わずかな希望さえも見つけられなかった。

 そんなモルモットに心の休まる暇はなかった・・・・。

 沈黙する2人のところからカプセルごと運ばれていくモルモット。

カラカラカラカラ

ジョージ:おはよう、スーパーマン・・・調子はどうだい?

スーパーマン:(良いわけがないだろう・・・)

ジョージ:今日もデータの提供、よろしく頼むよ

トロトロトロトロトロ

ジュル ジュル ジュル

 純粋に邪悪な笑顔を浮かべるジョージの言葉を合図にカプセルは再び動き始めた。

 天井から赤色のスライムがブロンズ像に降り注ぎ、オブジェを包み込んだ。

 深緑色の表面をどんどん赤色の液体が侵食し、ゆっくりとした動きではあるが、

確実に表面を赤く染め上げていった。

スーパーマン:・・・ぷはっ・・・はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・・

ジョージ:空気は美味しいかい?モルモット君

スーパーマン:ば、馬鹿にして・・・い、今に覚えていろっ!

ジョージ:あぁ、覚えておくとしようか

 表面を覆うそばからスライムはコーティングを溶かし、除去していった。

 体にこびりつくこともなく、床に流れ落ちるスライム・・・

しかし、昨日とは状況が違っていた。

 綺麗さっぱりと体にはこびり付かずに床に落ちていくスライム。

 しかし、排水溝は閉じられたまま流れ出すことはなかった。

 スーパーマンを完全に解放したころには足元にスライム溜めが出来上がっていた。

ドスッ!ドスッ!

ガンガン! ゴン!

スーパーマン:くそっ・・くそっ・・・・

ジョージ:・・・・・・・

スーパーマン:出せっ!ここから俺を出せっ!

 足首までが浸かってしまうほどの深さがあるスライム溜めにも気がつかず、

鼻息を荒くしてカプセルの内壁を殴るスーパーマン。

 異様な行動をするスーパーマンの瞳は赤く光り、闘牛の様に暴れ始めた。

スーパーマン:ふぅぅ・・ふぅぅ・・・くそっ・・・イライラする・・・・

ジョージ:よし、順調だな・・・

スーパーマン:順調?また、何かしたのか?この・・・くそっ!

ジュルルルルルルルル

シュウゥゥゥゥゥゥゥゥ

スーパーマン:このっ!・・・くそっ・・・・・・?!・・・

       わ、わたしは何を・・・・


ジョージ:僕の作った闘争心を煽る薬で闘牛の様に暴れていたんだ・・・

      実にいいデータだったよ、ありがとう

スーパーマン:そ、そんなことまで・・・・くっ・・・・

ジョージ:じゃあ、次にいこうか

スーパーマン:次は何を・・・?!・・・・

       ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・

 スライムが排水溝から吸い出され、カプセル内に充満したガスを排出した途端、

暴走した闘争心が正常に戻り暴れるのを止めたスーパーマン。

 いくら超人といえども、冷静さを欠いた戦いでは十分に力を発揮することは出来ない。

 そのための薬の実験を知らず知らずのうちにされ、

また1つ仲間を危機に晒す手伝いをしてしまったのだった。

 落胆するモルモットを笑顔で眺め、デバイスのボリュームを一気に絞るジョージ。

 天井、床、内壁から強力な光が発せられ、獲物を強烈に熱し始めた。

 床に残ったスライムも即座に気化してしまい、カプセル内の水分は全てなくなってしまった。

スーパーマン:うぅぅ・・・や、焼け死んでしまう・・・

        ぐわぁぁぁぁぁぁ

ジョージ:なるほど、この時点で皮膚に火傷が出来始めるのか・・・

     いいねぇ・・・・いいよ・・・・

スーパーマン:あぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・

ジョージ:おっと・・・危ない、危ない・・・・

シュゥゥゥゥゥゥン

 火傷の具合をコンピュータの画面で確認し、限界値を記録したところで

ボリュームを0にするジョージ。

 即座に光源は沈黙し、獲物を熱するのを止めた。

 カプセルの壁にもたれかかるモルモットは見るも無残な姿を晒していた。

 実験のために着せられている青いスーツはところどころ焦げて破れていた。

 スーツに守れられていない部分も火傷を負い、致命傷を負っていた。

サァァァァ

コポポポポポ・・・・

スーパーマン:・・・?!・・・あ、足が・・・足がぁぁぁぁ・・・

ジョージ:火傷したら冷まさないとだめなんだ・・知ってたかい?

スーパーマン:・・・ぐっ・・・うぅぅ・・・・・

 ピクピクと痙攣するスーパーマンを待つほど優しいカプセルではなかった。

 主の指示に従い床面から液体窒素を満たし始めた。

 ブーツにも守られていない素足が液体窒素に浸かり、足先の感覚が急速に失われていく。

 どんどん液体窒素の水位が上がり、もがくことも出来ずに体が冷凍されていくスーパーマン。

スーパーマン:・・・・も、もう・・・ダメだ・・・・・

ジョージ:嘘はいけない・・・心臓がちゃんと動いているじゃないか・・・・

スーパーマン:・・・・・・・・・・・・

シュワァァァァァァ・・・・・・・・スゥゥゥゥゥ・・・・

 獲物の体温を全て奪い終わり、発泡を止めた冷酷な液体。

 コンピュータの画面に映るモルモットの体は、低温を示す青色が外側から

どんどん範囲を広げ、ぎりぎり体温を保っているのは体の芯の部分だけだった。

 四肢は全て青く染まり、体の活動は沈黙してしまっていた。

 加速度的に体温を奪われ、本能的に行う生命維持の機能により

心臓のそばだけ体温を維持していた。
 
ジョージ:さすが超人・・・

     細菌の機能を使うことなく生き延びるとは・・・


スーパーマン:・・・・・・・・

ザァァァァァァァァ

 データを十分に取ったあと、液体窒素を排出するジョージ。

 ブロンズには包まれたが無傷だった昨日とは違い、

今日は体こそ自由だが重体・・・意識もなかった。

カタカタカタカタ・・・トンッ!

 機械のような速度でデバイスを操るジョージ。

 その操作に従いカプセルがスーパーマンを抱えたまま水平に倒れ、土台に固定された。

 カプセルの中に横たわるスーパーマンの姿は痛々しいものだった。

 ジョージの前までカプセルが移動すると、乱暴に破れたスーツを剥ぎ取り、

モルモットを全裸の状態にしてしまった。

 再びカプセルの蓋を閉じると、それを合図に緑色のスライムが注がれていき、

スーパーマンを封入していった。
 
シュワシュワシュワ・・・・

 緑色のスライムが傷口に触れた途端、傷口が発泡し、治療を始めていった。

 しかし、その治療も生易しいものではなく、

超人の体に備わる力を強制的に搾り出し治癒を行っていた。

 その力の強制搾取の刺激に体はビクン!ビクン!と痙攣していた。

ジョージ:明日までよく休んでくれ・・・・スーパーマン

スーパーマン:・・・・・・

 バットマンとロビンのいる小部屋に運ばれるスーパーマン。

 カプセルの中はスライムで隙間なく満たされていた。

バットマン:(・・・・・・スーパーマン・・・そ、そんな・・・・)

ロビン:(ぼ、僕のせいだ・・・・・・僕の・・・・・)


 今までの戦いでも見たことがないほどに傷だらけになったスーパーマンを見て、

より一層心の影を濃くした2人。
 
「もう助からない・・・誰も」

 そんな言葉が2人の脳裏をよぎった・・・。

 スーパーマンでさえも敵わない!

この事実は2人から希望を搾り取るのにこれ以上ないものだった。