Robin in an exam room  

(13)

悪魔の実験室、再び

 

 行方知れずとなったロビンを探すために田舎のハイスクールに乗り込んだバットマン。

その目に映ったのは本当にロビン本人なのかどうかすらも疑いたくなるほどに

丁寧に敵の手で剥製にされてしまった哀れなロビンだった。

 ロビンの命を人質にされ、敵の要求を素直に飲まざるを得ないバットマン。

 逆にチャンスに変えようと催眠装置の作動に合わせて瞼を閉じるも、

その動作さえも予想済だったのかジョージの開発した催眠装置に捕まり、

再びあの悪魔の実験室へと連れ込まれたのだった。

 

バットマン ・・・・こ、ここは・・・・・・・・・?!

 

ジョージ 起きたかい?ここは僕の研究室さ

 

バットマン け、研究室?

 

ジョージ そう、ロビンを剥製にしている薬品や、

      君をあっさり捕まえた催眠装置を作るのに使う部屋さ

 

 気がつくとバットマンはユーティリティベルトを外され、マントも剥ぎ取られていた。

両腕を天井から伸びる鎖で繋がれて、両足も床に繋がる鎖で繋がれていた。

自分とロビン、アルフレッド以外が触ると電流が流れ

中身が出せないようになっているはずのユーティリティーベルトもあっさり解除され、

中の特殊な道具が全てジョージのオモチャになっていた。

 ブーツとグローブは既に外され、素顔を見られないためのフェイスマスクと

黒いビキニ、動きやすさを追求した薄手の灰色のスーツ、

このたった3つしか今のバットマンを守るものはなかった。

 グローブとブーツを装着して全身を防御することを計算に入れて薄い灰色のスーツは

手首、足首までを包み込んでいる。

自由にならない両手、両足をしっかりと縛り付ける鎖で両手足首が傷つかず、

まだ体へのダメージは負っていないが、如何なる体の動きも封じられ目の前には

敵がいる、この状況では一時しのぎにしかならなかった。

敵が本気ならすでに命を奪われていてもなんら不思議ではない状況であった。

 

 バットマンを守る薄いスーツは戦いの際に動きやすさを一番に考えているため、

極限まで薄くされておりバットマンの鍛え上げた筋肉隆々な体つきが

容易に見てとれる状態だった。

また股間部を守る黒いビキニはその目的があるかないかは別として

股間部を強調する様にさえ見えた。

薄いスーツで際だった体つき、ビキニによって強調された股間部、

拘束状態というのも手伝って嫌らしい雰囲気を醸し出していた。

そして、顔を見せないためのフェイスマスクがここに来て余計に嫌らしさを増していた。

 

ジョージ これから、僕の開発した特殊なテープの被検体になってもらうよ

 

バットマン 俺を捕まえたんだ、ロビンを解放しろ!

 

ジョージ 何を勘違いしてるの?

     君は僕の専用の被検体。

     ロビンは部室の置物、それだけだよ。

     君がいるからロビンはいらないわけじゃないんだ。

     それにむしろ君がいなくてもロビンだけでも僕らは満足なんだ。

     君は僕専用のモルモットさ

 

バットマン 最初から、俺もロビンも解放するつもりはなかったんだな・・・・・

 

ジョージ 捕まえておいて解放する人はいないんじゃない?

     解放しないから捕まえるんだからさ

 

バットマン ・・・・外道め・・・・・・

 

ジョージ 大丈夫、ご褒美にロビンが味わった苦痛、君にも味あわせてあげるから

 

 悪魔の笑みを浮かべ、ジョージは透明なテープを持ってきた。

ネルやクリスとは異なり、この時もやはりバットマンの体には興味はさほどない様子のジョージ。

淡々と作業に没頭し、透明なテープの先の方を器用に摘み、

バットマンの足下にしゃがみ込んだ。

 

バットマン そんな薄いテープでどうするつもりだ?

      俺が逃げられないようにぐるぐる巻きにでもするのかい、坊や

 

ジョージ 既に逃げられない相手なら、輪ゴムでも十分なんじゃない?

     そういうのは体が動かせる人が言う台詞だよ。

     それに、このテープ、後でその効果は体で味わうことになるだろうけど、

     君の動きを奪うのに十分な厚さなのさ。

     むしろ、君なんかじゃ破ることなんて出来ないんじゃない?

     スーパーマンじゃあるまいし・・・・・

     あまり厚いと巻き終わった後におじさんが見えないだろう?

 

 皮肉で言った言葉をそのまま返されバットマンは言葉を失った。

 

ジョージ 下半身、動くな!

 

バットマン そんな命令、誰が聞くんだ?

 

 馬鹿にした様にジョージに言い放つバットマン。

 そんなバットマンの嘲笑など相手にせずに、足の鎖の鍵を解くジョージ。

 動かせなかった両足を解放され、ジョージにきつい一発をかますチャンスだ!

そう思い力一杯蹴り上げようとしたバットマンに予想もしない事態が襲いかかった。

 

バットマン あ、足が動かない・・・・・・・

 

ジョージ 下半身動かすな!って命令したから、動くわけないじゃない。

     それに動く両足をなんで解放するのさ・・・・・

 

バットマン ど、どうして・・・・

 

ジョージ 君の脳みそはまだ催眠状態だっていうだけさ。簡単だろう?

 

 バットマンの足が動かない理由を簡単に説明し、

動かない両足を一つに束ねて薄いテープで両足首を縛り上げた。

 それだけでも十分な拘束力があるが、ジョージは手を止めることはなかった。

透明なテープを両足先を並べて丁寧に丁寧に包み込みだした。

指先、土踏まず、かかと、足首へとテープで巻いていく場所を少しずつづらし、

バットマンの体を丁寧にテープで巻いていった。

両足を束ねても隙間が出来てしまうが、その隙間もテープを滑り込ませ体に

密着するように丁寧に丁寧に巻いていった。

その様子はまるでミイラでも作る様にさえ見えた。

そして、いかつい鎖からは解放されたが、いかにも頼りなさ気なテープで

バットマンは体を拘束されていった。

 

 ジョージの言った通り、テープの強度はバットマンの予想の遙か上をいき、

体が自由な状態のバットマンであっても破れないものであった。

 

バットマン な、何をしている・・・やめるんだ!

 

ジョージ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

バットマン おい、聞いているのか?やめろ!

 

ジョージ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 バットマンのどんな呼びかけにも答えずに作業をもくもくと続けるジョージ。

ロビンにも与えた無言の恐怖をバットマンにも等しく与えていた。

歴戦の勇者の心に影を落とし始めた瞬間だった。

 その間にもテープの上限は上がり、脛、膝、太ももまでテープでしっかりと固められていた。

両足先と同じで足を合わせた時に出来る隙間もテープがしっかりと滑り込み、

密着していた。

透明なテープで巻かれているため、よほど注意して見ない限りは

バットマンが自分の意思で両足を揃えている様に見える有様であった。

 このまま体をどこまでも登っていくかと思われたテープによる拘束作業も太ももまで登り、

股関節にさしかかる当たり止まった。

 

ジョージ 右手、動かすな!

 

バットマン ?!おい、止めるんだ!

 

ジョージ もうちょっと待っていろ、

     そうしたらロビンが味わった苦痛をすぐに味合わせてやるから

 

 そう言うと再び沈黙を維持するジョージ。

いや、この作業がひとしきり終わるとロビンが味わったという苦痛が待っている、

そうわかった上で再びの沈黙はバットマンの心に落ちた影を確実に大きくしていた。

 命令に従い、解放されても全く動かないバットマンの右手。

両足に施したのと同じようにジョージはテープを巻き始めた。

 右手の小指から人差し指までをひとくくりにしてテープで固め、

指の付け根までを丁寧に丁寧に、凹凸に合わせてテープを滑り込ませてから

一度テープを切った。

次に親指を丁寧に包み込み、そのまま手のひらをテープで固め、

手首、腕、肘、二の腕、肩へとテープを伸ばし、

脇の当たりまで固めるとテープを切った。

このテープはバットマンを守る薄いスーツと同じ様な厚さなのか

鍛えられた体を圧迫することなく、テープで巻かれてもなおバットマンの剛体は健在だった。

 その作業を左側にも同様に沈黙を維持して行い、バットマンの両腕を完全に封印した。