Robin in an exam room  

(12)

二つの憎しみ

 

 バットマンの留守の間にゴードンから受けた依頼で単身高校生を助けるために

現場に向かったロビン。

ウェイン邸で二人の帰りをまるアルフレッドにも、

そしてジョーカーのアジトらしき場所を走査しているバットマンにも

今のロビンがおかれている状況など想像も出来なかった。

いや、誰1人としてロビンが田舎の高校生にオモチャにされ、

そして抵抗出来ないままオブジェとして置物にされているなんて想像出来なかっただろう。

 ジョーカーのアジトらしき場所は、不良の溜まり場で、ゴードンから頼まれた調査は

不発に終わり、ゴッサムの英雄は不良を吊し上げ地元警察に対してのメッセージを残し

ゴッサムシティに戻ってきた。

 ロビンの帰りが遅いこととユーティリティベルトの発信器が壊れたことを

アルフレッドから聞き大急ぎで問題のハイスクールに向かった。

 

バットマン ロビン・・・・無事だといいが・・・・・・・

 

 さすがに歴戦の勇者には鋭い勘が備わっているのか、

ロビンの身に何か起こっている、

しかも自分が急いでも取り返しの付かない自体に陥っている、

そんな気がしてしかたがなかった。

 戦いの時、走査の時にはこの上ない武器になる勘も、

この時ばかりは外れることばかりを祈っていた。

 

バットマン ここが・・・・問題の・・・・・・・・・・しかし、困ったな、

       手がかりが何もない

 

 ゴードンからの依頼で初めて訪れた時のロビンと同様に、

どこをどう探してよいのやら検討がつかず、取りあえず構内に入ったバットマン。

 中は静まり返り、人がいるのかすら怪しいほどに静かだった。

そもそも連絡の取れないロビンはこんな田舎のハイスクールにいるのかすらも

怪しく感じた。

非常灯すらない構内の暗闇もあり、ロビンに対する不安は加速度的に増していくばかり。

ピンポンパンポォォォォン 

 静寂を打ち壊し、構内のスピーカーからジョージの声で放送が流れた。

 

ジョージ バットマンに告ぐ、ロビンを帰して欲しければ体育館まで来るんだ。

 

バットマン 探す手間が省けた様だな、待っていろロビン!

 

 バットマンは放送で指示のあった体育館を目指し、天井の案内板を確認しながら急行した。

 一度外に出て、入口とは別なところからの侵入を試みるも、

敵に予想されているのか壁に「入口以外からの侵入はロビンを危険にさらすだけだ。」

と書かれていた。

 連戦錬磨のバットマンの先を読む敵に対して、ただの脅しではないと悟り、

素直に入口から体育館に足を踏み入れた。

自分の予想が外れるように祈っていたが、ここまで用意周到な相手ならば

ロビンが連絡の取れない事態に陥っている可能性も否定できない、

いや十分に高いと痛感した。

 そこでバットマンが目にしたのは衝撃の光景だった。

 ガラスケースに入れられたロビンだった。

いつもの戦闘用のラバースーツ、そしていつも隣でゴッサムを守っていた顔、姿。

しかし、目の前にいるロビンは助けを求めるでもなく、声を上げるわけでもなく、

かと言って目を見開いている様子から気絶している様でもなかった。

ガラスケースに入れられているからかもしれないが、本当に目の前にいるのはロビン本人なのか、

いやもしかしたら凄く上手く作ったロビンのマネキン、蝋人形ではないのかとさえ思った。

 

バットマン 貴様、ロビンに何をした!

 

ジョージ まずは自己紹介から、君のコマドリを剥製にした

     犯罪研究会開発担当ジョージとでも名乗っておこうか・・・・

 

バットマン 剥製だと!

 

ジョージ あぁでもね、大丈夫。まだ生きているから。

      生きたまま剥製にさせてもらったよ

 

バットマン 生きたまま?!なんてことを・・・・

       悪いが、うちのコマドリは返してもらう!

 

 パートナーの置かれた状況に普段は冷静なバットマンも拳を握り締め怒りに震えた。

 

ジョージ でもさぁ、僕と戦いたいのかもしれないけど、

      ロビン、どうなってもいいのかい?

 

バットマン くっ・・・・卑怯な・・・・・・どうしろと言うのだ?

 

ジョージ じゃあ、まずはこれ頭につけて・・・・

 

 ジョージはバットマンの足下に催眠装置を投げつけた。

 

バットマン ロビンを解放する気などないのだろうが・・・・・・

 

ジョージ じゃあ、ロビン、死んでもいい覚悟があるなら戦ってみればいいじゃない?

     でも、君のコマドリ、僕に触れることも出来なかったからコマドリがコウモリに

     変わっても同じだとは思うけどね。

     君もプライド砕かれてから僕のモルモットになりたいかい?

 

バットマン ・・・・・・ちっ・・・・つければいいんだな・・・・・・

 

 バットマンは渋々ヘッドセットを装着した。

バットマンがジョージに言われて装着したヘッドセットはヘアバンドの様に

頭半分で支える形で、目の前にライトが吊されているものだった。

 

ジョージ 素直が一番だよ、僕の作った装置とか薬品の実験体にしてあげるからさ、喜んでよ。

      これも一種の社会貢献さ

 

バットマン ロビンを解放しろ!言う通りにしたんだぞ!

 

ジョージ もう、それつけた段階でチェックメイトさ・・・・残念だったね。

      だから正義の味方は捕まえるのが簡単なのさ

 

 ジョージは言葉を言い終わる前にリモコンのスイッチを入れ、催眠装置を作動させた。

 自分が装着したものが催眠装置だと予想していたバットマンは瞬時に目を閉じ対応した。

が、しかし、ロビンを完膚無きまでに追いつめたジョージの発明は

そんな優しいものではなかった。

閉じられた瞼の上からも強烈に催眠効果を発揮し、ゴッサムの英雄さえも手駒に変えた。

この時点でロビン玉砕覚悟で戦っていたら、いや彼らがロビンの体も

目的としていたことを知っていたら結果は今とは違う物になったのかもしれない・・・・・・・

 

ジョージ 僕の後ろについて来るんだ。いいね?

 

バットマン ・・・・は、はい・・・・・ジョージ様・・・・・・

 

ジョージ 君らヒーローは捕まえるのが簡単で助かるよ・・・・本当に

 

 ジョージは二人の英雄を見て哀れむように言葉を吐きかけた。