Robin in an exam room  

(11)

最期の時

 

 部屋に1人取り残されたロビン。

 体はクリスの精子で包まれ、正義のヒーローの面影はどこにもなかった。

しかし、その目にはバットマンという希望が宿り、この状況であっても目は死んではいなかった。

 バットマンの帰宅、これはロビンにとって希望であった。

しかし、同時にバットマンを捕まえる時の疑似餌にされるロビンの身には同時に最終宣告でもあった。

バタン!

 部屋の天井の一部が開いた。

 

ザァァァァァァ!

 

 開いたかと思ったらそこから大量の水が流れ出て部屋を水で満たし始めた。

そして、部屋のライトは完全なピンク色に戻り、ロビンは動くことが出来るようになった。

 

ロビン くそっ・・・やっとバットマンが来るかもしれないっていうのに、

    溺れ死にか・・・・

 

 当たりの壁を叩き、突破口を探すも、用意周到な彼らにそんな落ち度があるわけもなく、

どんどん水嵩が増してくる。

 壁を一通り探し終える頃には水は腰当たりまで溜まっていた。

両足の緑色のコスチュームは水で濡れ、深緑色に変わっていた。

 天井からの水量はあまりに激しくそこから登り出ることは不可能だった。

 解決策の見つからないまま、とうとう首まで水が上り詰めた。

色鮮やかだった赤と緑のコマドリはどす黒く変色し、顔や髪の毛は白く汚され、

見る影もなかった。

 

ロビン ・・・・・1人で死ぬのか・・・・・・・・

    バットマン・・・・・・・・・・・・ごめんね・・・・・・

 

 今までのバットマンとの生活など思い返し、無情にも全身を沈めきる水に目を閉じた。

 ただの溺死をさせる装置だと、そう思ったロビンにとって再び予想外の出来事が起きた。

 部屋の水が回転を始めたのだ。

 まるで巨大な洗濯機に入れられたようにロビンの体は水の中を漂っていた。

 

ロビン (・・・・・い、息が・・・・・も、もたない・・・・・・・・)

 

 人並み外れた体力と身体能力を持つロビンをもってしても息が持たず

口から大量の空気を吐き出し力無く水に漂うことになった。

 

 敵に体も心も打ちのめされ、ぼろ雑巾の様に水を彷徨った。

 自分は死ぬ。

溺れ死にさせられる。

やっと解放される。

ロビンはそう思っていた。

 その心は恐らく、恐怖よりも今までの拷問から解放される喜びが大きかったのではないだろうか?

 しかし、ロビンは考えるほど彼らは優しくはなかった。

 

 クリスの次の目的:「バットマンを捕まえる」

その目的がある状態でロビンに安易な死など与えてくれはしなかった。

 

ネル ・・れで・・よし!・・・・ろそろ・・・きるね

 

ジョージ これな・・・・・・誰・・・・疑わ・い・・・・・

 

 戻るはずのない意識が戻り始め、三人の会話が聞こえてきた。

 

クリス これからの生活が毎日楽しいものになるな、みんな。

 

ロビン (なんで、俺、生きてるんだ?体が動かないのはなんでだ?)

 

ネル あっ、起きたんじゃない?

 

クリス おはよう、ロビン。

 

ジョージ 僕の作ったコンタクトレンズも良好に働いてるみたいだ

 

ロビン (どうなってるんだ?)

 

クリス 自分の姿、確認するといいよ

 

ネル はい、鏡

 

 ネルが持ってきた姿見を見てロビンは言葉を失った・・・・

 サーカス時代のコスチュームではなく、いつも悪と戦う時に装着しているラバースーツに

着替えさせられている。

しかし、あの装置によって勃起させられた竿は体にフィットしたラバースーツも

押し上げて膨らんでいる。

それよりもロビンが驚いたのは、実にリアルな蝋人形でも見ている様な錯覚に襲われるくらいに

自分が固められている事実である。

 髪も顔もいつものようにきちんと整っている。

鏡には映っていないが、ラバースーツの下、胴体もしっかりと固められているのだ。

 他にも体の異変はあった。

口の中に唾液を感じないのだ。

ずっとまばたきをしていないのに目が乾かない。

しかし、拍動は感じる。

 あまりの出来事に混乱しているとクリスが優しく語り始めた。

 

クリス 君はもう何も心配しなくていいんだ

 

ネル 僕たちと一緒にここにずっといればいいのさ

 

ジョージ 体の内も外も綺麗に固めた。もう死んだり老いたりもしない

 

クリス 体内に住まわせた最近が口の空洞から入り込む湿気から脳を活動させる分の

    栄養は与えてくれる。

    心臓も動く

 

ネル 寂しくないようにバットマンも捕まえるから待っててね

 

ロビン ?!

 

ジョージ 大丈夫、君から採った種を悪用したりはしないから

 

クリス これからもしばらくよろしく頼むよ、ロビン。

    さぁバットマンがこっちに向かっているらしいから、ジョージ、歓迎の準備だ。

    きっとジャスティスリーグの奴らも動き出すだろうから、

    僕とネルはそっちの準備をしよう。

    ジョージ、任せても大丈夫だね?

 

ジョージ あぁ、まかせてくれ、ただし約束は・・・

 

クリス あぁいいとも、奴はどう料理してもいい、君のものだ

 

ネル 行ってくるね、ロビン

 

ジョージ 今度はバットマンか・・・・・楽しくなってきたな

 

 いつものようにゴードン市警本部長から受けた依頼で、

いつものように敵を倒すために来たはずだった。

 ジョーカーに襲われた高校生を助けているはずだった。

 まさか、助けるはずの高校生に捕まり、体も心もオモチャにされて、

言葉通りの置物にされるなんて、バットマンを捕まえる餌にされるなんて・・・・

 悔しくても涙も流れない、バットマンに知らせたくても言葉も出ない、

バットマンが捕まる前に自害をしようとしても動かせる部分が何もない。

 こうしてゴッサムの英雄が1人、人知れず消えていった。