第5部
黒く終わる刻
第8話
時が過ぎるごとに記憶を、知識を壊されていくスーパーマン。
まるで数式でも扱うように彼の記憶も知識も全てが彼の頭からデータディスクへと
転送されていく・・・。
その様子に喚起するラリルの横で動きを止めるスーパーマン。
彼の頭の中ではパソコンで示されるような機械的なものとは違うことが起こっていた。
スーパーマン:・・・・ん?こ、ここは・・・・デイリープラネット???
ロイス:スーパーマン!大丈夫?スーパーマン?
スーパーマン:あ・・・あぁ、ロ、ロイス・・・ぼ、僕は大丈夫・・・・
ロイス:どうしたの?ス・・・・パー・・・・・マン
スーパーマン:ロイス?
ロイス:・・・・・・
どことも知れない場所で意識を取り戻したスーパーマン。
彼にかけより話をしていたはずのロイスが、二言ほど言葉を交わしただけで
動きを止めてしまった、そう、まるでそれは現実の世界でスーパーマンがされているのと
同じ様な状態だった。
スーパーマン:ロ、ロイス・・・・!!
動きを止めたロイスを心配し、彼女を見つめ続けているスーパーマンの目の前で
最愛の人が霞の様に消えていった。
ラリルの操作によりまず最初に最愛の人の記憶、知りうる知識が全てハードディスクに
移動されてしまったのだ。
スーパーマン:・・・?!・・・・目の前に誰かがいたような・・・・・
気のせいだろうか?
ジミー:スーパーマンじゃないかっ!
スーパーマン:?!・・・ジ、ジミー!
ジミー:何をそんなに驚いてるのさ?変なスーパー・・・・・・・・・・
スーパーマン:ジ・・・・?!・・・ん?今、私はなんて話そうとしたのだろう?
「ジ」に続く言葉が思い出せない・・・・
それに、また人がいた気がするんだが・・・
ザワザワ ザワザワ
ロイスに続き、ジミーまで・・・・どこまでも正義の超人をオモチャにしたい飼い主様は
関係の強い二人をわざわざ出現させてデータを頭から吸い出したのだ。
そして、目の前にいたはずの誰とも知らぬ女性、男性が誰なのか?
そもそも、そこには人がいたのか?を考えているうちに周囲を人ごみに囲まれていた。
その人ごみにはホログラムでしか見たことがない両親、育ての親や高校の時の同級生・・・・
見知った顔ばかりが並んでいた。
スーパーマン!スーパーマン!スー・・・パー・・・・・マ・・・・ン・・・・・
そして、その見知った顔を確認した瞬間、何を確認したのがわからなくなっていった・・・
ロイスやジミーの時と同じように・・・・。
人ごみの歓声が消えていくのと同じ速度で人ごみが消えていった。
いつも通っているデイリープラネットでたった独りになったスーパーマン。
独りになったのではなく、独りだったことになったスーパーマン。
スーパーマン:ま、周りに人が・・・いた?のか・・・?
いや、いなかった・・・?わ、わからない・・・・・
周りに人がいた気がするものの、記憶には何も残っていない・・・
そんな状況に混乱しているうちに今度は周囲の建物が音もなく消え始めた。
デイリープラネットも、隣のビルも全てが霞と消えていった。
残ったのは真っ白な空間にただ独り・・・無言で頭を抱えるスーパーマンだけだった。
彼らの世界からスーパーマンが忽然と消えたように、
彼の頭の中からも彼らの世界が消えてしまったのだ・・・・忽然と・・・。
スーパーマン:こ、ここはどこだ?こ、ここは・・・・・・?!・・・・・
真っ白だった空間が歪み始め禍々しい空間を再現し始めた・・・
今、現実に正義の超人が置かれている状況を頭の中にも再現し始めたのだ。
重々しい地下室、汚れつくした床や天井、壁・・・
光はどこからも漏れないジメジメした暗闇の世界。
正義の象徴である赤いビキニとブーツ、マント、青いスーツ姿は
一瞬で奴隷姿にはや代わりし、汚れつくしたスーツやビキニ、フェイスハガーが
あちこちに装着され、手枷、足枷・・・そして壁のフックにつながれた鎖のかかった首輪・・・・
悪夢が全て再現されてしまったようだった。
スーパーマン:な、なんだこれ・・・・なんだこれは?!
ラリル:いつもどおりの姿じゃないか?
スーパーマン:ラリル・・・様・・?!・・・(な、何故・・・様などと・・・・・)
ラリル:思い出して見たまえよ・・・
スーパーマン:お、思い出す?・・・
ロイスやジミーはどれだけ頑張っても思い出すことも消えないようにすることも
出来なかったにも関わらず、植えつけられた偽りの過去は次々と思い出されていくのだった。
毎日毎日、永遠の時にも感じられるほどに続く恥辱、人以下の扱いを受け、
「監禁」ではなく「飼育」として扱われる状況。
ラリルの手下に奉仕し、汚物をかけられ、痛めつけられオモチャにされる。
逃げ出すチャンスなど微塵もなく希望はすでに絶えていた・・・・。
毎日与えられるゲテモノに腰を振り、ご機嫌をとりながらも食べ続ける姿。
思い出されるものはどれも目を背けたいものばかりだった、
が・・・・どれも疑う気すら起きないほどに自然な記憶として認識されていた。
スーパーマン:お、思い出した・・・私は・・・・飼っていただいているのだ・・・
ラリル・・様に・・・・
ラリル:そうだ・・・君は私のペットだ・・・
スーパーマン:ルーサー・・様に敗北宣言をし、ラリル・様に飼っていただいた・・・・
?!・・・ひ、人質は・・・・
ラリル:君がおりこうなので、まだ生きているよ・・・・今はね
スーパーマン:よ、よかった・・・・
(は、早く・・来てくれ、みんな・・・わ、私はもう・・・だめだ・・・)
ラリル:(くっくっくっ・・・・愉快だ・・・)