第5部
黒く終わる刻
第7話
意識の隅にかすかに残っていた正義のヒーローとしての心・・・
それすらも破壊しようと敵の魔の手が迫ってきた。
しかし、その魔の手を防ぐことも、逃げることも・・・何一つ選択権が残されていなかった。
されるがままに残り火の様な心を握りつぶされるのを受けることしか
今の彼には出来なかった・・・・。
スーパーマン:な、何を・・する・・・つもりだ・・・・んんっ・・・はぁぁ・・・・
ラリル:言ったでしょう?あなたの頭を破壊して従順な奴隷にしてあげるんですよ
スーパーマン:・・・・くっ・・・・
これから何をされるのかがわかったところでどうすることも出来ない。
どうにかしないといけないことがわかっても阻止することも逃げることも出来ない状態に
唇をかみ締め、体を襲う興奮と戦うスーパーマン。
そんな無駄な抵抗をし続ける奴隷の頭に容赦なくヘッドギアを被せるラリル。
その悪魔の機械は耳から上をスッポリと包み込み、顎の下をベルトがくぐり固定されてしまった。
包み込む相手が決まっていたかの様に頭を包む部分に隙間はなく、ピッタリと頭に張り付いた。
ラリル:さぁ・・・さようなら、正義のヒーロー、スーパーマン・・・・
スーパーマン:ま、待て・・頼・・・・・・・・・・・・・
ラリル:・・・ふははははははは・・・・・・
椅子の側で正義の超人という輝かしい歴史に幕を閉じるスーパーマンに挨拶をし、
機械を作動させてパソコンの元へと移動した。
機械が遠隔操作で作動するとスーパーマンの意識を完全に掌握し、正常に作動し始めた。
ヘッドギアの中でまぶたを閉じることなく、焦点は合わずに動きを止めた。
スーパーマン:・・・・・・・・・・・・
ラリル:さてさて、あなたのヒーローとしての人生も
いよいよ終わりを迎えるときが来ましたね・・・
ふふふふふ・・・・
何も反応しない人形と化した正義の超人の横でパソコンをいじるラリル。
その画面にはスーパーマンの記憶がデータとして表示されていた。
愛しいロイスへの思い、故郷クリプトンの知識、今までに戦ってきた様々な敵の
攻略法など、今までに正義のヒーロー・スーパーマンを形作ってきたものが表示されていた。
もちろん、今、自分を支配しているラリルのボスであるルーサーのことも含まれていた。
ラリル:さてさて、あの方との約束を守らないとね・・・・
ディスプレイ上に表示された知識や記憶を全てハードディスクに移動し始めた。
ラリルが行ったのはコピーではなく移動であるためハードディスクにデータが
移されるたびにスーパーマンの頭は空になっていった。
・・・45%・・・48%・・・57%・・・
カウントアップされていくデータの移動・・・記憶の消去・・・・。
ラリル:鋼の男と言われたあなたもこうなればただの操り人形ですねぇ・・・
鋼の男っていう単語もすでにわからなくなってはいますがね・・・ふっははははは・・・・
・・・75%・・・80%・・・87%・・・90%・・・
ビィィィィィィィ
エラーが生じました。2つのデータは現在使用中の可能性があります
残すところ10%の段階でパソコン上にエラーの文字が躍り出た。
ヘッドギアで思考を停止し、掌握したはずが、スーパーマンが使用しているために
移動が出来ないと装置は告げてきたのだ。
ラリル:そ、そんなわけは・・・・あぁ・・・なるほど・・・・そういうことでしたか・・・・
ここまで計画通りに超人を手中に収めてきたラリルはここで起きた予想外の展開に
慌ててパソコンに向き直った。
そこに残されていたデータは「人質」と「仲間」のデータだった。
今までに幾多の敵と戦い、その度に数えるのも馬鹿らしいほどの人質を助けてきたスーパーマン。
常に人質のことを一番に考え、自分を盾にしながら敵を倒してきたため、
奴隷となり体を改造された今でもその頭の中では一番に人質の救出を考え続けていた。
また、不屈の精神を持つスーパーマンであっても、体の自由を完全に封じられ、
体を好き放題改造されてしまっては人質を自分で救出する可能性はかなり低い・・・
それでも彼が希望を失わないでいられたのは地球を共に守っていた仲間・・・
ジャスティスリーグの存在があったからだった。
捏造された思考であってもそうでなくとも、このままラリルのご機嫌をとり、
時間さえ稼げば仲間が助けてくれると考えていた。
ラリル:・・・移動できないものは仕方がないですね・・・・
データの移動終了 第2ステップに移動
ラリルの手により移動されつくした記憶と知識をおさめたハードディスクは
どこぞへと送られていった。
空になったスーパーマンの頭に対して次なる操作が施され始めていた。
パソコン内に用意されていた代わりの記憶、都合のいい記憶がインストールされ始めていたのだ。
残り空き容量85%・・・80%・・・75%・・・
先ほどとは逆に記憶、知識がなくなり空白だった部分の残りの要領を表示し
カウントダウンを始めたのだ。
次に彼が目を覚ますとき、彼の頭はもう彼のものではないのかもしれない・・・・。