第5部

黒く終わる刻

第3話

 

 自分の血液全てを差し出す・・・

人質の命がかかっているとはいえ、さすがに躊躇したスーパーマンであったが、

脳内から直接説得され、囁かれた悪魔の声に抗うことは出来ず、

「全ては人質のため」という名目のもとに自ら血液を差し出すことにしてしまったのだ・・・。

 モニターがプツンっと消え、ルーサーとの回線は解除された。

 ラリルの合図で顔を覆うフェイスハガーは体を変形させ始めた。

口の中に対して体を膨張させ喉元まで空間を支配したのだ。

猿轡をされた様に喋ることが全く出来なくなってしまった。

 言葉を奪われている間にも、床から現れた拘束具により右腕から血液が抜かれ、

左腕から怪しげな液体が注がれていった。

スーパーマンが苦しむのもお構いなしに血液交換は高速で行われ、

瞬く間に全身の血液が交換されてしまった。


スーパーマン:(わ、私の・・・血液が・・・・)

ラリル:そうそう、忘れるところでした・・・

 椅子に拘束したロックを解除しながらスーパーマンに囁きかける主。

その言葉は穏やかな表情とは裏腹に驚愕の事実が述べられていた・・・。


ラリル:君に注ぎいれた体液、これは君の体の細胞に影響を与えるんだ

スーパーマン:げほっ・・・げほげほ・・え、えい・・・きょう?

ラリル:1つ目は・・・超人としての血液を二度と生成出来ないようにする

スーパーマン:・・・・・・そ、そんな・・・・

ラリル:君はもう二度と超能力は使えないのさ・・・

スーパーマン:・・・・・・・・

ラリル:2つ目は・・・人の性液を欲してしまう体に変えてしまうんだ

スーパーマン:私は・・・・正義の・・・・超人・・・・なのに・・・

ラリル:地下に降りてきた時点で君の運命は決まっていたのかもしれないな

スーパーマン:・・・・・

パラサイト:(何も困ることはない・・・)

スーパーマン:(チャンスが来ても・・・)

パラサイト:(君には仲間がいるだろう・・力強い・・・)

スーパーマン:(?!そ、そうか・・・)

パラサイト:(このまま奴隷として媚び続け、助けを待つんだ・・・そうすれば)

スーパーマン:(人質も・・私も・・・助かる・・・・)


 パラサイトの巧みな言葉に誘導され、自力での救出、脱出を完全に諦め、

奴隷として振舞うのが当然であるとする思考を固定したのだった。

 彼はすでにラリルの奴隷なのだ・・・正義のヒーローを自称する・・・・。


スーパーマン:(そ、それに、私は元々性欲は・・・だ、大丈夫さ)

ラリル:あとは・・これを飲んでいただきましょうかねぇ

スーパーマン:そ、それは・・・・

ラリル:見覚えがあるでしょう?・・・レッドクリプトナイトです・・・

スーパーマン:(これだけは飲めない・・・性欲が暴走してしまう・・・)

ラリル:さぁ・・・

スーパーマン:それだけは・・・出来ない・・・・

ラリル:奴隷のくせに生意気な口を利きますねぇ・・

スーパーマン:・・?!・・


 言葉遣いに怒り、レッドクリプトナイトをスーパーマンの頭に垂らし始めるラリル。

レッドクリプトナイトは頭を流れ、顔を伝い、鼻に及んだ。

幸か不幸か顔を包み込むフェイスハガーのおかげで液体を体に入れることはなかったにも関わらず、

鼻に及んだレッドクリプトナイトの蒸気を吸い込んだ途端、体に異変が生じた。


スーパーマン:・・んぁ・・んんっ・・・・

ラリル:ほら?どうしました?

スーパーマン:・・・んぁぁぁぁぁぁ・・・


 体の火照り、脈打つ股間、そして目の前にいるラリルの性液を欲してしまう症状に

床を転げながら苦しむスーパーマン。

ロイスを助けたときは体を改造されていなかったために液体を飲まされて

初めて性を支配されたが、今回は既に体を改造されているために

蒸気だけでも性は簡単に暴走してしまったのだ。


スーパーマン:お、お願い・・・んんっ・・・します・・

ラリル:何?聞こえないよ?

スーパーマン:そ、それ・・んぐっ・・んがぁ・・・だけは・・・勘弁・・・

ラリル:聞こえないんだよ、何だって?

スーパーマン:して・・・くだ・・・んあぁぁぁ・・・さい・・・・・

ラリル:・・・・仕方ない・・・・

スーパーマン:・・・んんっ・・・んぁぁ・・・・・

ラリル:飲みたくなったら言いなさい・・・ふふふ・・・


 レッドクリプトナイトを嗅がされてしまい、完全に屈服されてしまった正義の超人。

その効果はもちろん精神にも大きく影響していた。

 弱点を掌握され、自分はラリルという絶対的な力に屈服されていることを

認めてしまっているので


ラリル:ほら、行きますよ・・・

スーパーマン:ぐっ・・・は、はい・・・・・

 すっかり体を汚したヘドロも乾いてしまいこびりつくことで彼の体を惨めなものへと

貶めていた。

そこにレッドクリプトナイトが降り注ぎ、さらに体を汚し、惨めな姿へと変えていった。


悪党(人質):見たかよ?あれ

悪党(人質):俺らがお湯に浸かってるとは知らずに必死だったぜ

悪党(人質):本当におめでたいよな・・・ふはははははは・・・・


 血液を全て捧げ、超人であることを辞めたスーパーマンを嘲笑う悪党達。

 これ以上の皮肉があるだろうか?正義のヒーローが自分を犠牲にして

悪の手先を助けようとしているのである・・・それも、演技で苦しむ悪の手先を・・・。