第5部
黒く終わる刻
第1話
ルーサーの部下であるラリルに仕組まれた戦闘を敵の望みどおりにこなし、
期待以上のデータを渡してしまった正義の超人。
ダメージを残したまま、体内には敵の送り込んだ寄生生物を宿し、
居もしない人質を助けるために罠に堕ちた超人・・・。
それは無敵という肩書きがあっけなく外された瞬間だった。
万全の準備をしたラリルに手も足も出せず体を汚され、自ら拘束具をつけ、
奴隷になるという宣言までもさせられた挙句、さらなる闇へと連行されてしまった・・・。
そう、もう戻ることの出来ない闇へと・・・。
スーパーマン:(チャンスは来るのだろうか・・・・)
パラサイト:(それは君の態度次第だろう・・・)
スーパーマン:(わ、私の?どういうことだ・・・)
体内に寄生したパラサイトがついに最終段階にまで成長を遂げ、
もう一人のスーパーマンとしての囁きかけを始めるにいたった。
意識の誘導を行う機能だけでも十分な脅威であるのに、
今のこの悪魔には自発的に意識を植え付けることさえ出来る段階に成長を遂げていた。
寄生されたが最期・・・というやつなのだろう・・・・。
スーパーマンが抱く全ての違和感を完全に封印し、脳内でスーパーマンが自分と
会話することは何も不思議なことはないと思わせるにいたっていた。
パラサイト:(ラリルに媚びて時間を稼がないことにはチャンスはないだろう)
スーパーマン:(それはそうだが・・・)
パラサイト:(ならば、答えは簡単じゃないか、奴隷として媚びるしかないんだよ)
スーパーマン:(・・・・奴隷・・・として・・・・・)
目を背けたい・・・その考えをパラサイトに読み取られ、
隙あらば奴隷になったことを意識づけられてしまう哀れな超人。
自由にならない歩幅のまま飼い主に従い惨めな姿で付き従う、
その姿は奴隷に他ならなかった。
今の彼の状態では、スーパーマンが奴隷になったのか
奴隷がスーパーマンの姿をしているのかの判断は誰にもつかなかっただろう・・・。
飼い主は目的地である部屋の前で立ち止まり連行した奴隷に向き直り邪悪な笑顔で問いかけた。
ラリル:さて、部屋に入る前に一つ聞こう・・・君は何者だね?
スーパーマン:せ・・んぐっ・・・正義のヒーロー・・・ス、スーパーマン
ラリル:ふはははは・・首輪して枷つけて、顔にそんな醜悪なものつけて・・・
スーパーマン:・・・・・・・
ラリル:正義とまだ名乗れるのか・・・まぁいい、時間はある・・たっぷりとね・・
スーパーマン:(ま、負けるものか!宣言はしたが、私は正義の超人なんだ!)
パラサイト:(そうだ!君は人質のためならば何でもする、正義のヒーローの鏡!)
彼は気が付いていなかった・・・
人質を助けたいという意思が人質を助けるためなら何でもするという
微妙な方向転換をされていることに。
気が付けるわけもなかった、自分の意思でそう思っていると誤認しているのだから・・・・
完全な意識操作のもとに・・・。
ラリル:さぁ・・入るんだ・・・君を改造しようじゃないか・・・
スーパーマン:んぐ・・か・・んんっ・・改造・・?!
ラリル:あぁ、そうさ、これを見てくれ
スーパーマン:?!んんっ・・・ま・・んぐっ・・・待てっ・・・
ラリルに誘導され見たモニターには監禁部屋に水が注がれ人質が水攻めにあっている
衝撃の映像だったのだ。
すでに水位は膝下に及び、密室で水が増えていく恐怖に人質はパニックになっていた。
人質:た、助けて・・・助けてくれ、スーパーマン
人質:し、死にたくない・・死にたくないよ・・・
スーパーマン:わ、私が・・・げほっ・・身代わりに・・・なる・・・から・・・
ラリル:人質を助けたいんですか?
スーパーマン:お、お願いだ・・・彼らを・・・・水を・・・止めて・・・くれ・・
ラリル:では、ここに座ってください・・
満面の笑みのラリルが指差した先には見覚えのある金属製の椅子があった。
しかし、その椅子がどういう椅子なのかは問題ではなかった・・・
ここにさえ座れば人質が助かる、その思いから自由にならない歩幅で
出来る限りの速さで椅子に座った。