第4部

悪夢再来

第3話

 

 ロボットへの敗北、ピエロへの敗北・・・そしてエイリアンとの死闘・・・。
 
 そこからくる不安などを全て封じ込まれ、
 
敵の罠のど真ん中へと誘い込まれてしまったスーパーマン。
 
 敵のしかけた罠に気づくことも出来ずにカプセルに閉じ込められ、
 
体を冷凍されつつあるが、どうすることも出来ずに甘んじて冷凍ガスを受け続ける正義の超人。

 
スーパーマン:(・・・くそっ・・・生命維持が限界か・・・・)

 

ラリル:おやおや、素敵な氷像じゃないですか・・・・

 
 白いガスの晴れたカプセルの中には目を閉じ悔しさに歪むスーパーマンが
 
時間を止められ直立していた。
 
人質を助けることが出来ないことに対する自責の念に満たされた氷像は
 
まるでオブジェの様に部屋の真ん中に存在していた。
 
 このまま冷凍ガスを維持することなど彼らの力を持ってすれば簡単なことだっただろう・・
 
そう、この時点ですでに超人の命は敵の手の中に完全におさめられているのである。
 
 敵に誘われ、敵のアジトで、敵にされるがままに・・・
 
正義のヒーロー・スーパーマンはラリルに命の綱を握られてしまった。
 
 しかし、敵の攻め手はこれで終わりではなかった・・・・。
 
トロ・・・トロトロ・・・・
 
 綺麗なままのオブジェはいらないのか、カプセルは天井からヘドロを
 
正義の象徴へと垂らし始めた。
 
 少しずつ少しずつオブジェの氷を溶かしながら、体を汚し、ヘドロは体を包み込み始めた。
 
 端正な顔、鍛え上げられた肉体・・・ギリシャ彫刻の様な凍りついたスーパーマンがヘドロにより見るも無残な姿へと変えられて 
いったのだ。
 

ラリル:君の意識があるのはわかっています、そのままで聞いてください
 


スーパーマン:(くっ・・・今回もお見通しか・・・・)

 
ラリル:そのカプセル・・・見覚えにですか?

 
スーパーマン:(・・・ま、まさかっ・・・・)

 
ラリル:あのロボットからあなたを助けたのは私ですよ・・・・

 
スーパーマン:(くそっ・・・あの時既に・・・)

 
ラリル:殺すのも生かすのも私次第、あなたの命は私の手の中・・・

 
スーパーマン:くっ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・

 
ラリル:似合いますよ、ヘドロまみれのその姿・・

 
スーパーマン:私を・・捕らえたのだ・・・人質を・・・解放・・しろ・・・

 
ラリル:君への用事が全て済んだら解放しますよ

 
スーパーマン:私へ・・・の・・・用事?

 
ラリル:まぁ落ち着きなさい・・・人質の安否、確認したいでしょ?

 
スーパーマン:・・・?!・・・

 
 ラリルが示す先には巨大なモニターがあった。
 
 合図と共に人質達の監禁されている部屋の様子が示され、
 
同時にカプセルの天井から監禁部屋の音声も流された。

 
スーパーマン:よ、よかった・・・・無事で・・・・

 
ラリル:(よぉ〜く見るがいい・・・・)

 
 自分が助けたいと考える人質の姿、声に集中するスーパーマン。
 
ラリルがマッドスターと名乗り洗脳すると宣言した時とは逆に、進んで情報の獲得に努めていった。
 
 喉から手が出るほどに知りたい人質の安否情報にまさか自分を洗脳する
 
映像と音声が入っているとは想像もせず、積極的にその2つを体へと侵入させていった。
 
 彼が人質の姿を舐める様に見ている最中、見えるはずのないものが見えた・・・。
 
 ラリルの足元で四つんばいになり、首輪から伸びる鎖を引かれる自分の姿

 
スーパーマン:(な、なんだ!今のは・・・・)

 
(洗脳音声:ラリルが欲しいのは・・・スーパーマン)

 
スーパーマン:(お、俺が目的・・・・)

 
(洗脳音声:正義のヒーローは人々の盾にならなければならない・・・)

 
スーパーマン:(も、もちろんだ・・・・盾に・・・そう!盾になる!)

 
(洗脳音声:ここは工場の地下、暴れると薬品が誘爆する危険性がある)

 
スーパーマン:(くそっ・・一思いに破壊することは出来ないのか・・・・)

 
(洗脳音声:奴隷になればいいのさ・・・・)

 
スーパーマン:?!(ど、奴隷に!ラリルの?それは出来ない・・・)

 
ラリル:(今こそあなたの出番です、パラサイト、やりなさい)

 
パラサイト:(了解。洗脳のバックアップを行います。)
 

 パラサイトと呼ばれたもの、それはエイリアンの尾からスーパーマンの体内に潜入し、
 
脳に寄生した地獄の水先案内人であった。
 
 寄生した後、研究所のカプセルで回復する超人の体力を少しだけ奪い、
 
成長を遂げたラリルの秘密兵器だった。
 
 今のパラサイトはラリルの命令を十分に遂行できるまでに成長していた。
 
 スーパーマンの脳内に寄生している利点を最大限に活かし、都合の悪い思考は封印し、
 
もう一人のスーパーマンとして精神を揺さぶることが可能になった。