第2部
狂星出現
第1話
地球を守ってきた無敵のヒーロー、スーパーマン。
幾多の敵から地球を、人を守ってきた彼は、苦戦こそしても負けることなど
一度もなかった・・・一度も・・・・。
いつも守られてきた人々も、そして彼自身もそんなことは誰一人予想していなかった。
彼に油断はなかった、負傷も病もなかった・・・そう、完全な敗北だったのだ。
記者として日々の業務をこなしながらも頭の中は敵のことで満たされていた。
いや、敵のことと言うよりは見えない敵への恐怖にも似た心配で頭が破裂しそうだった。
ジミー:・・ーク!・・・クラーク!!
クラーク:・・ん?!・・・なんだ?ジミー?
ジミー:どうしたの?ぼーっとして・・・
クラーク:いや、ちょっと考え事をな・・・
ジミー:そんなことより、ほら、時間だよ?
クラーク:時間?
ジミー:忘れたの?レックス社での記者会見に行く時間でしょ?
クラーク:そうだったな・・・すまない、ありがとう
ジミーに急かされ準備をするクラーク。その動作はいつもよりも鈍く、精悍さに欠いていた。
戦闘でのダメージもあるのだろうが、それよりも見えない敵のことで頭がいっぱいになり、
他のことには全く考えが及ばないのだ。
クラーク:(もしかしたらルーサーが・・・ちょうどいい・・・・何かわかるかも・・・・)
仕事に集中しよう、仕事に・・・頬をパシパシと叩いてジミーと共に宿敵のいる
レックス社に出向いた。
ちょうど、その頃・・・・・。
ロイス:すいませぇぇん?ご連絡いただいたロイスですが・・・・
廃工場に響くロイスの声。
レックス社の陰謀の情報を渡したいと秘密裏に連絡があり、
指定の場所に単身乗り込んできたロイス。
クラークやジミーにも相談する時間がなく、たった独りで指定の場所に来てしまったのだ。
しかし、その場所には誰もいない、何もない・・・・
ロイス:悪戯だったのかしら?・・・残念ね・・・・
ドスンっ
自分が騙されたと思い、帰ろうとした矢先、首筋から鈍いが音と共に意識が途絶えた。
謎の声:悪戯ではないよ、まぁ騙したことは事実だがね・・・・
ぐったりと動かないロイスを数人の男が運び始めた。何もなかった工場内部にも
次々と物が運ばれ、様子が一変し始めていた。
クラーク:相変わらず物騒なことを宣言していたなぁ・・・
ジミー:そうだねぇ、スーパーマンと同等の兵器だなんて・・・
何かのヒントを・・・そう期待して向かったルーサーの記者会見だったが、
いつもやっている物騒な兵器開発に関する会見だった。
今回の黒幕がルーサーである証拠は何一つなかった。
もしかしたらこの会見で頭を埋める心配が晴れるかもしれないと期待していただけに
少し残念な気持ちがあったのも事実だった。
それに、スーパーマンと同等の兵器という発言も常日頃からしている強気な発言と
なんら変わるところがないために怪しいとも思わなかったのである。
クラーク:ロイスがいたら憤慨しているところだな・・・
ジミー:無理に決まってるわ!ってね、ははははははは・・ってあれ?ロイスは?
クラーク:本当だ・・・どうしたんだろう?
ペリー・ホワイト:ちょうどよかった・・・
ジミー:編集長、ロイスはもう帰ったんですか?
ペリー・ホワイト:違うんだ・・・外出したまま戻らないんだ
クラーク:携帯は?
ペリー・ホワイト:応答がないんだ・・・・
クラーク:探しに行ってきます
ジミー:僕も・・・
クラーク:いや、ジミーは電話やメールで連絡をしてみてくれ
ジミー:わかった・・・気をつけてね、クラーク
ジミーや編集長と別れ、人の目を盗み、いつもの正義のコスチュームに身を包み
空中高く舞い上がった。