第1部

試された正義

第2話

 

 平穏なオフィス街の静けさを破る爆音、そして人々の悲鳴。

 その声に駆けつけるスーパーマン。

 しかし、目の前に現れた未知の敵は人々の、そしてスーパーマンの予想の遥か上をいく強さを見せた。

 ようやく彼方に吹き飛ばすことに成功したものの、囚われの身となった最愛の人を

助けようと必死になるあまり、背後に迫った悪魔に気が付かないスーパーマン。

 これが誰も予想しなかった悪夢の始まりだった・・・。

・・・ガシャン・・・・ガシャン・・・・

 背後に迫るロボットの腹部がドアの様に開き、中から2本のアームが伸びて

盲目の超人に襲い掛かった。

背後を取ったロボットの機械の触手はスーパーマンの肘をそれぞれしっかりと固定した。

獲物の腕を曲げられない様にして空中に持ち上げ、間髪入れずに腹部にある空間の下方から

伸びる別なアームで両足を束ねて十字架に磔られたのと同じ状態に陥れた。

 

スーパーマン:な、何っ・・・くそっ・・・・動けない・・・・

 

 その姿のままロボットの開いた腹部に引き寄せられ始めた。

拘束された超人がいくら暴れようとも全くビクともしないアーム。

 ロイスを早く助けなければならない・・・

しかし、自分を捕まえるアームは全く壊れない・・・

ただただ焦りがつのるばかりだった。

 そんな焦るスーパーマンなど気にもせず、アームを引き寄せて獲物を腹部に閉じ込めてしまった。

 

スーパーマン:くそっ・・・何をするんだ・・・出せっ・・・・くそ・・・・

 

 暴れる捕獲対象物の話には耳もかさず開いた腹部の蓋を閉じ、捕獲、監禁を遂行した。

 対象物を監禁するとそれに応じて白かった機械人形の体がクリアになり外からも

捕獲されたヒーローの姿が確認できるようになっていた。

まるで、大衆に対して捕獲した獲物を見せたいがための行動の様に。

ガシャン・・・ガシャン・・・ガシャン・・・

 両腕、両足の自由を奪われ敵に捕獲されたスーパーマン。

それではまだ足りないと言わんばかりに頭部、首、胴体にも金属のベルトが嵌められた。

 

スーパーマン:・・・何をするつもりだ・・・?!・・・ぐっ・・・・ぅ・・・・・

 

 自分の拘束理由を考え出した刹那、拘束している金属のベルトから棘が突き出し

スーツを貫通して皮膚に棘が突き刺さった。

 鋼鉄の鎖の拘束など簡単に破ることの出来るスーパーマンさえも簡単に捕らえる

破壊不可能なアーム、幾多の攻撃でも傷もつかなかったスーツやブーツを簡単に破り、

超人の不可侵だったはずの皮膚にさえも突き刺さっている金属の棘が超人の頭を混乱させていた。

 

スーパーマン:グワァァァァァァァ・・・・

 

 拘束具から突き出した全ての棘から激しい電流がほとばしった。

 悶えようにも体が拘束されていて全く動くことが出来ず、叫び声だけがロボットの周囲に轟いた。

 しかし、無情にも与えられる電撃の威力はどんどん上昇していくばかり。

 

スーパーマン:グワァァァァァ・・・グッ・・・グワァァァァァ・・・・・

 

 周囲の野次馬に紛れ込んだ謎の男のダイヤルに従い、

超人に加えられる電撃は天井知らずに上昇を続けた。

 地球上のいかなる既存兵器でも不可能な出力での電撃に無敵をほこる

超人のスーツや皮膚が耐えかねて煙を上げ始めた。

 

スーパーマン:ぐっ・・・・がぁっ・・・・・・

 

 電撃の威力にとうとう叫び声さえも上がらなくなり、体に流れる電撃に痙攣しながらも

拘束具のせいで俯くことさえ出来ずにいる哀れな超人。 

 

謎の声:なるほど・・・・いいデータが取れました・・・・・

 

カチッ

 焼け焦げ始めるスーパーマンを見つめ邪悪な笑みを浮かべる男の押したボタンを合図に

あれほど頑丈だったロボットがガタガタと音を立てて壊れ始めた。

白く変色しヒビが入り、そして捕獲していた獲物を地面に投げ出した。

 

スーパーマン:・・・くっ・・・・・・・

 

 無敵の超人を完膚なきまでに倒したロボットは土人形が水をかぶった様に崩れ去った

・・・跡形もなく・・・

 

ジュゥゥゥゥゥ・・・・

 ロボットの崩壊に釘付けの野次馬に隠れてカプセルに液体をかける謎の男。

その液体によりカプセルは飴細工の様に溶けてしまった。

 その場所に残されたのは酸欠で意識を失った新聞記者と

ところどころ焼け焦げた正義のヒーローだった・・・・。