チェイン・リアクション(6) 

ドラッグ

 

「先輩!」

 ブレイクが絶叫する。

「クソ、ほどけない!」

 ブレイクの腕に食い込んだ鎖がジャラジャラと音を立てる。どうすればいい?

 どうすれば・・・。

 辺りを見回していると、壁際に赤色のレバーが見えた。配線を目で追うと、

自分たちを吊るすクレーンに繋がっていた。

 ブレイクは反動をつけてレバーを蹴り上げた。モーター音が響き、四人の

体が地面に降りる。レッド達は足に力が入らないのか、地面にへたりこんで

しまった。

 緩んだ鎖を解いてブレイクがレッドたちの鎖を解きにかかる。

「先輩、何があったんですか!?」

 ブレイクが問いかけても、ただ荒く息をつくばかりである。それどころか、

解いたとたんにレッドがブレイクに覆いかぶさったのだ。

「ワッ!」

 そのまま床に倒れたブレイクの両腕をレッドが押さえつけ、パンパンに膨

らんだ股間をブレイクの体にこすりつける。まるで見境をなくした発情期の

犬であった。とろんとした目で、ひたすらぐちょぐちょに汚れた股間をブレ

イクの体にこすりつける。

「ぁ・・・」

 レッドがかすれた声を上げて体を震わせた。スーツのシミがまた広がって

いく。ブレイクのスーツもレッドの精液に濡れてしまった。

 一体どうなってるんだ・・・。ブレイクはレッドの体を蹴り上げると、ブ

ルーに近寄った。

「二人とも同じだ・・・」

 バイザーがかけたところから覗くブルーの目も、レッドと同じように血走っ

ている。マスクの口元が割れたグリーンは、よだれをたらし放題だ。

 今は考えるときじゃない。早く解いて連れ出さないと・・・。鎖を解いて

やると、ブルーが仰向けに倒れてしまった。

 グリーンの鎖に取り掛かったときだ。外から五人の話し声が聞こえてきた

のである。まずい!

 ブレイクはとっさに思いついてドアの脇に身を潜めた。

「本当にお前はわかんねぇや・・・」

 ウージーだ。

「なぁに、ボスに引き渡したあとであそこへ売り飛ばすつもりだよ。その

ために色々仕込むんじゃねぇか」

 といって、ドミニクがへらへら笑っている。

 部屋に入った瞬間、ブレイクのキックがドミニクの顔面に炸裂した。

「うお!?」

 ドミニクが後ろの四人もろとも後ろへひっくり返る。

「貴様ら!」

「なんなんだチクショウ!」

「・・・殺してやる!」

 ブレイクがドミニクに飛び掛った。絶叫しながらドミニクの顔を何度も

殴りつける。

 ブレイクの手を、誰かが握り締めた。

「離せ!」

 振り返ると、握っていたのはレッドだった。

「・・・元気なのはいいんだが、ちょいとやりすぎだぜ?」

 ドミニクが立ち上がる。

「離してください!」

「何言ったって聞こえやしねぇよ。俺が死んだらこいつらの餌がなくなるからな」

「何!?」

「俺が持ってるヘロインを打ってやったのさ。そいつのためならなんだってす

るように仕込んである。・・・離せ」

 ドミニクの命令に、レッドが従う。ドミニクは拳を固め、ブレイクの顔面に

叩き込んだ。

「あがあッ!」

 ブレイクが小屋の中へ吹っ飛ばされる。

「よくやった。ご褒美だ」

 ドミニクが注射器を出して、レッドの腕にヘロインを打ち込む。注射器を抜

くとレッドは跪いて、ドミニクの足にすがったのだ。

「先輩! 何のまねですか!?」

「おいおい、あの程度で高価なやつはやれないよ。そうだな、お前たち三人で

ブレイクを黙らせろ」

 レッドが頷いて立ち上がると、大股に歩み寄る。ブレイクの首をつかんで立

たせると、鳩尾にパンチを食らわせた。

「ごああああッ!」

 ブレイクが吹っ飛んで壁に背中を打ちつけ、ずるずるとへたり込んだ。立ち

上がろうとすると、ブルーのキックが下腹を襲う。

「ぐあああッ!」

 続けざまにグリーンのキックが横っ面に当たって、ブレイクが床に倒れた。

 そして、三人が倒れているブレイクの体中を蹴り始めたのだ。ブレイクの

悲鳴がアジトに響き渡る。

「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああッ!」

 レッドが壁を這う鉄パイプを引きちぎってきて、それでブレイクのマスク

を思い切り叩いた。バギンッ! と派手な音が響いて、マスクがぱっくりと

割れる。血まみれのテツの顔がさらけ出された。目には涙をため、腹を踏み

つけたれるたびに口から血を吐き散らす。

「それくらいにしておけ。商品に傷をつけすぎたら売れなくなる」

 ドミニクは注射器を持ってくると、ブレイクに見せた。ブレイクの顔が一

気に青ざめる。

「従順な商品は文句を言わない・・・」

 首筋に注射針があてがわれ、ゆっくりと針が刺さる。

「いい子になるんだ」

 ブレイクの体の中に、きついヘロインが流し込まれる。全身の力が抜けて

行き、やがて気を失った。


「ハッ・・・ハッ・・・」

 耳元に吹きかかる息で、気を取り戻した。痛みも何も感じない。くぐもっ

たような声、笑い声、体を揺さぶる何か。伝わる感覚が一歩遅れているのか、

ブレイクはなんだか妙な気分になった。

 ブレイクの口に、太い何かが突っ込まれる。しょっぱい味が口に広がり、

頬に熱い何かがほとばしる。

「見ろよ。完全にラリッてオープンサービスしてやがる!」

 ゆっくりと目を開けると、硬骨な表情を浮かべたレッドが、床に寝てい

る。揺さぶられているのではない。ブレイクが動いていた。

 スーツの股を切り裂かれ、秘所にレッドの肉棒を突っ込み、ブレイクが

体を上下させていたのだ。

 目を落とせば、レッドのスーツにたくさんの白い筋が走っている。ああ、

出しちゃったのか・・・。何も考える気が起きない。同じように股を切り

裂かれたブルーの肉棒をしゃぶりながら、ブレイクはぼんやりと体を動か

していた。

 股間が徐々に熱くなる。ブレイクは思わず声を上げた。

「あっ・・・あっあっ・・・うああ!」

 肉棒から精液が噴き出して、あちこちに飛び散る。それを見て興奮の絶

頂に達したのか、口の中でブルーが果てる。喉に突き刺さるような苦い精

液を飲み干し、うつろな表情で腰を動かし続ける。

 ブレイクの肉棒を、グリーンがなめ始めた。ピチャピチャ音を立てて、

まるであめでもしゃぶるように「美味しそうな」表情を浮かべる。

「うあっイくっ!」

 レッドが体を震わせ、ブレイクの体の中に精液を吐き出す。ブワっと

熱い体液が放たれ、ブレイクが思わずレッドの肉棒を締め付けた。する

とそれに刺激されたのか、またレッドが果てる。

 四人はただのオス犬に成り下がっていた。象徴のスーツはズタズタ。

秘所に肉棒を突っ込み、しゃぶりしゃぶられ、昔の面影など残っていない。

 ただ目の前にある快楽に溺れて身を任せるだけになっていた。

 ブレイクはレッドから離れると、床に寝そべった。グリーンが近寄り、

ぬらぬらと光る肉棒を突っ込んで腰を振り始める。グリーンがブレイク

に覆いかぶさると、今度はグリーンの秘所にブルーの、そしてブルーの

秘所にレッドの、といった具合に団子になって、四人が大声で喘ぐ。

 麻薬が薄れ始めると、四人はそのままの格好でぐったりとしてしまう。

「あぁ・・・」

 ビクビクと肉棒が脈打ち、精液を垂れ流し続ける。顔も髪の毛も精液

まみれになってしまったブレイクは、薄れる意識の中でドミニクに手を

伸ばした。

「ん?」

 それに気づいたドミニクが近寄る。

「薬・・・」

「あぁ、あとでくれてやる。そろそろ出発するから準備をしなくちゃな」

「いかな・・・薬・・・」

「わかってる。・・・ちょいときついの打っちゃったな。完全にイカレ

てやがる」

 舌打ちをして、ドミニクは椅子に座ると煙草に火をつけた。繋がった

ままぐったりしている四人を、満足げに見つめる。

 窓から西日が差し込み、薄暗かったアジトの中を茜色に染める。その

光の中に四人の姿が埋もれた。

「俺達の星へ連れて行ってやる。お前らならたくさん稼げるぞ・・・」

 ドミニクは煙草の煙をくゆらせながら、商売について考え始めた。