チェイン・リアクション(4) 

アサシン

 

 ・・・仇はとってやる。完全に頭に血が上ったテツは、地球署を出るとすぐ、情報屋、

マーロンの元へ向かった。

 酒場の裏口へ回りドアを開けて中へ入ると、鞄やらダンボールに埋もれながら、マー

ロンが何かを探している。

「すみません」

 テツが声をかけると、マーロンが振り返った。

「あんた、まだいたのか!? あれほど逃げろって言ったのに!」

 テツはうつむき、マーロンの元へ歩み寄った。

「知ってるよ。あんたの仲間、手ひどくやられたそうじゃありませんか」

「はい・・・。忠告に従ってあいつらを引き付けていれば・・・」

「で、仕返ししようってわけですか?」

「はい。居所を知りませんか?」

「・・・政府が某国への政治取引に使おうとしている金塊を積んだ船があと二時間後に

東京港を出港する。奴らはそれを狙ってる」

「金塊を?」

「ええ。手土産にでもするんでしょう。あんたとセットでね」

「ありがとうございます。・・・少ないですけど」

 テツはポケットからお金を出すと、マーロンに差し出した。だがマーロンは首を振り、

「受け取れません」

 と言ったのである。

「これがあんたの形見になっちゃ、寂しいじゃないですか」

「マーロンさん・・・」

「生きて、必ず帰ってきてください」

 テツはゆっくりとうなづいた。そして頭を下げて酒場を出て行くと、奥からフェルデ

ィナンドが顔を出した。

「言われたとおりにした。家族は無事だろうな?」

「ああもちろん。この先の路地にいる」

 テツがくる前に、先にフェルティナンドが乗り込んで、ほかの仲間達が彼の家族を人

質にとって、偽の情報を流すように脅迫したのである。

「ご苦労だったね」

 フェルディナンドはマーロンの肩を叩いて、酒場を出て行った。一人残されたマーロ

ンは椅子に腰掛け、頭を抱えたのだった・・・。


 デカブレイクに変身したテツは、港の倉庫を片っ端から調べていた。

「おかしいな・・・」

 マーロンが言っていた金塊も、それを積み込む船も見当たらないのである。おびき寄

せるための罠なのだから当然なのだが、ブレイクはまったく気づいていない。

 最後の倉庫のドアを開け中に入る。ここもやはり空っぽだった。

「情報が間違ってたのか・・・?」

 不審に思いながら外に出ると、背後から靴音が近づいてきた。振り返ると、コルテス、

ウージー、ドミニク、アンディが歩いてきたのである。

「止まれ!」

 ブレイクが怒鳴ると、四人はそれぞれ武器を構えた。

「よくも仲間を・・・」

「ウージー一人で片付けられる程度だったってことだろうが。おとなしく俺達について

くるんだ」

 コルテスが剣で肩を叩きながらそういうと、

「断る! お前らまとめてデリートしてやる!」

 とブレイクが怒鳴り、地面を蹴って突っ込んでいく。

 コルテスの剣を蹴り上げ、腹にパンチを食らわせ、ウージーとドミニクに回し蹴りを

見舞う。アンディのみぞおちに肘を入れ、大立ち回りが始まった。

 四人が予想していたよりもはるかにブレイクの攻撃力が高く、レッド達を重症に追い

やったウージーでさえたじたじとなっている。

「話が違うぞコルテス!」

「予想外なんていつものことだろうが!」

「何をゴチャゴチャ言ってんだ! 食らえ!」

 ブレイクがジャンプして、飛び蹴りとラリアットを二人に食らわせる。ウージーとコ

ルテスが吹っ飛ばされ、地面をごろごろと転がった。

 ブレスロットルのハンドルを引き起こし、

「超光速拳スーパーライトニングフィスト!」

 と叫びブレイクの左腕がアンディを捉えた。アンディの顔面に光速を超えるパンチを

食らわせると、ものすごい勢いで吹っ飛ばされた。

 その一瞬をついて、ウージーが肩から提げていた鎖をブレイクに投げつけた。だが体

を拘束するどころか逆に鎖を取られてしまい、海に投げ飛ばされてしまったのである。

 これじゃなんともしようがねぇな・・・・。コルテスは剣をしまうと、

「引き上げろ!」

 と叫んだ。コルテス達が一斉に逃げ出すと、ブレイクがそのあとを追う。

 四人が逃げ込んだ駐車場は三方を壁に囲まれ、完全に逃げ場を失ってしまったのであ

る。そこへブレイクが追いついた。

「仲間達の痛み、百倍にして返してやる!」

 ブレイクが身構えると、突然車が壁を突き破り、四人の盾になるように停まった。そ

れを見たウージーがため息をつき、

「遅いぜフェルディナンド」

 と言ったのである。フェルディナンドはゆっくりと車から降りると、アタッシュケー

スを開けてブレイクに見せた。

「これがなんだかわかるかな?」

「それは・・・!」

 アタッシュケースの中には、五つのブレスロットルとそっくりの機械が取り付けられ

た手袋が入っていたのである。

「こいつを待ってたぜ!」

 コルテスがフェルディナンドの肩を叩き、手袋をはめた。

「お前の技を丸まるコピーしたやつさ。こいつでお前を痛めつけてやるぜ!」

 五人が手袋をはめると、ハンドルを引き起こした。そして声をそろえ、

「電撃拳エレクトロフィスト!」

 と叫び、地面に手のひらをぶつけた。すさまじい光を放つ電流が、一直線にブレイク

に向けて走っていく。

「う・・・うわあああああああああああああああああああッ!」

 ブレイクの体が電流に包まれスーツが爆発する。ブレイクの姿は白煙にまぎれ見えな

くなってしまった・・・。