愛しいエース  

 

2・2・1 欲

第2話

 

 十字架からエースを下ろすサトシ。

 しかし、その顔には優しさはどこにもなく、

邪悪な笑みで満たされていた。

 ヤプールの開発したスーツでエースと戦いたいと言い出すサトシに

渋々戦うことを承諾するエースだったが、

ヤプールのスーツは予想のはるか上をいく性能を見せ、

エースを瞬く間に窮地に追い込んでいく。

 ベロクロン、サボテンダー、ホタルンガ・・・どれもエースが苦戦した超獣ばかり・・・

そして、ついに目の前でサトシがあの姿に変身したのだった。

ファイヤーモンス(サトシ):どう?似合うでしょ?

エース:・・・んぐっ・・・・?!・・・・・な、何故?

ファイヤーモンス(サトシ):拘束解かないとエース、逃げ惑えないでしょ?

                 動けないエースを切っても面白くないもの

エース:・・・サトシ・・・・・すまない!

 あまりのサトシの豹変振りに、ついにエースも攻撃に打って出た。

 自慢のメタリウム光線を至近距離で放ったのだ・・・

当たっても介抱すれば問題ない・・・そう考えて。

ビュルルルルルルル

 そんなエースの思惑を嘲笑うようにサトシの持つ炎の剣は

焔を伴いながらメタリウム光線を打ち払ってみせたのだ。

 容易いことをするかのように・・防御が難しいことではないことを即座に見せ付け始めた。

 メタリウム光線を放った直後の硬直時間をサトシは見逃さなかった・・・・。

 炎を纏った剣がエースの腕を襲う!

エース:ぐっ・・くそっ・・・・み、右腕が・・・・

ファイヤーモンス(サトシ):ねぇエース・・・本当に僕が殺さないとでも思っているの?

エース:サトシ・・・どうしたんだ?サトシ

ファイヤーモンス(サトシ):君が言ったんだ、「好きにするといい」って


 炎の剣に切りつけられ、避けることも出来ずに右腕を切られてしまい、

光のエネルギーを漏らしながらダランと垂れるエースの右腕。

 右腕を左手で庇いながらサトシに話しかけるエース。

ファイヤーモンス(サトシ):ずっと・・・ずっとエースを苦しめたかった・・・・

エース:そ、そんな・・・・ヤプールの言った通りだなんて・・・

ファイヤーモンス(サトシ):でも、勝てばいいんだよ?エース

エース:・・?!・・・ぐわっ・・・・

 落胆するエースなどお構いなしに今度は右足に切りかかるサトシ。

 隙をつかれ歩行が困難になってしまったエース。

 右腕、右足・・・すでに炎の剣をかわすことは不可能に近かった・・・。

ビュルルルルルルルルル

エース:ど、どこだ・・・サトシ・・・どこなんだ・・・・!?・・・・・・・

ファイヤーモンス(サトシ):ここだよ・・・エース・・・・

エース:サ・・・トシ・・・・・そ、そんな・・・・・・・

バタンッ!

 炎の剣を回転させ、発生させた煙幕のせいでサトシを見失ったエース。

 どこにいるのかわからない、しかし自分は身動きが出来ない・・・

完全に狩られる側と狩る側の図式が成立していた。

 そして、エースがサトシに呼びかけた瞬間、

その声に応えるように真正面からエースのカラータイマーの直下を

炎の剣が貫いたのだ。

 カラータイマーと瞳を点滅させ仰向けで倒れてしまった・・・

あの時のように・・・・。